公益社団法人日本鋳造工学会|Japan Foundry Engineering Society

ご挨拶

ご挨拶

私はこの度,平成30・31年度 公益社団法人日本鋳造工学会会長という大役を仰せつかりました.伝統ある日本鋳造工学会の重責を担うことになり,身に余ることとは思いますが,粉骨砕身,日本鋳造工学会の健全な発展の為,努力いたす決意です.私自身,鋳物に関する研究開発や技術開発から離れて10数年たつなかで,学会や産業界のお役にたてるかどうか非常に不安ではありますが,副会長・理事の皆様,ならびに事務局の助けをいただきながら,皆様とともに本学会を盛り上げていこうと考えています.

木口前会長は平成28年5月に実施されましたWFC世界鋳造会議名古屋大会を指揮し,大盛会のうちに無事務めあげられました.また日本鋳造協会との合同プロジェクトとして鋳造カレッジを立ち上げて10年,多くの鋳造技師が誕生し,同時に鋳造工学会への入会も促進され,わずかずつではありますが会員も増加するなど,工学会の発展に寄与していただきました.また新たに西山賞の創設で中堅研究者の活性化を図ることや,高校生を対象とした鋳物体験教室の全国展開を図るなど,人材の育成・活性化にも尽力されました.これらを引き継いで,さらに日本鋳造工学会を一層盛り立てていくのは並大抵のことではないと覚悟しております.

 日本鋳造工学会をめぐる環境は決して楽観視できるものではありません.会員数の減少は先に述べた鋳造カレッジの卒業生を会員に勧誘することで何とか防げていますが,詳細を見てみると学生会員が激減しております.これは鋳造に関わる講座数が減少し,鋳造工学を目指す学生が減少しているためか,はたまた少子高齢化により学生の絶対数が減少しているためかどうか分かりませんが,将来に向けての大きな心配事ではあります.

 日本鋳造工学会は平成23年4月に公益社団法人として登記されました.これによって税制面での優遇措置は受けるのですが,学術及び科学技術の振興を目的とするような公益目的事業を行うことを主とする必要があります.ところがこの公益事業は一方で収支相償という枠がはめられております.平たく言うと「儲けてはならない」ということになります.しかし,学会運営の為には一般管理費等がかかりますし,それらは年々増加することが予想されます.当面は良くてもいずれは会費の増額か,サービスの低下がおこってもおかしくない事態に追い込まれることでしょう.これらの事は我々だけでなく多くの公益法人格をもつ学会が直面している問題でもあります.しかし,どのような事態となろうとも若手技術者の育成や確保は,学会のみならず産業界にとっても非常に重要なことではあります.如何に知恵を出して鋳造工学を目指す若者たちを支援し,ひいては産業界を活性化させる人づくりをしていくかが一つの課題と考えています.

 先に述べましたように平成28年に名古屋で世界鋳造会議(WFC)が開催されました.日本を含め35か国の鋳造技術者が集まり,活発な議論がなされ,大盛況のうちに終わりました.あらためて日本の力を世界に示したところです.このWFCの母体となっているのがWFO(World Foundry Organization)となりますが,WFO加盟国で世界の鋳物生産量の90%を占めるといわれています.我々の大先輩達は初期からこのWFOにおいて主導的な立場をとられ,世界の鋳造技術の主導的役割を果たされてきました.今でも中国・韓国・台湾などから技術交流の誘いが絶えません.これら先輩たちの足跡を踏襲して鋳物技術全般にわたり日本が世界の主導的役割を継続していていきたいと考えています.その為の研究者への効果的な支援をどうするかを考えることも一つの課題であります.

 我が国の鋳造産業をみると,鉄・非鉄に限らず生産量はリーマンショック前の水準にまで到達していません.一つはユーザ産業,例えば自動車産業などの生産の海外シフト,そしてその部品調達の現地化が推進されたためであろうと分析されています.さらに将来を考えるとモータ駆動系への変換によって鋳物離れも進むのではないかと危惧されています.これらに代わる,新製品の開発が待たれるところであります.私の経験でいうと画期的な新製品は様々な知識・感性を持った人との出会いの中でうまれることが多いと思います.学会と産業界がタッグを組んで日の丸印の新製品開発ができるような場と機会を作っていきたいと考えています.

 鋳造産業のみならず,我が国の多くの産業は生産性が低い,つまり一人当たりの生み出す付加価値が低いといわれております.世界の鋳造産業でみると,鋳造施設数は減っているにもかかわらず生産量は増えております.これは鋳造業界の企業統合が進んだためと,効率化が進んだためと分析されています.一方我が国では生産量はここ数年横ばいですが,鋳造工場数は10%以上減少しています.これだけ見ると効率化が進んだように見えますが,従業員数の方はほぼ横ばいであることから,生産性が上がっているとはいえません.もちろん,日本のモノづくりは,丁寧で品質の高いものを目指しているというのも,良きにつけ悪しきにつけ一因かもわかりませんが,主因はひとえに生産活動の中のIT化が遅れている為との指摘もあります.これはセキュリティの問題もありますし,投資対効果が見えにくいという側面もあったかと思います.充分確認され安全な個所にしか部分的にIT化していなかったというのが実情ではないかと推察されます.海外では少々技術漏洩の危険性があっても平気で安いツールを使って技術情報のやり取りをしていますし,IoTやAIを駆使して生産性の向上を果たしています.工学会も産業界と共にいかにしてITで生産性向上につなぐことが出来るかの検討も課題のひとつとして出てきました. 

以上のような諸課題に対応するためには,平成26年に策定された第2期長期ビジョンを照査改訂し,第3期長期ビジョンを計画する中で一歩一歩解決していきたいと考えております.その為に,公益法人会計を整備し,簡便にすることで,支出にメリハリをつけ,より戦略的な予算を組めるようにすることが必要と考えています.その中で,最初に取り組みたいのは,工学会所属の会員の年代別力量調査です.つまり鋳造産業を構成する各種の技術を各自がどのレベルまで保有しているかを調査することで,我々の技術力の分布を把握し,また将来どの分野が手薄になるかを知り,いまから手を打つ分野を特定し,強化していく中で若手の育成,研究者の支援,そして産業界のサポートの一助になればと考えております.皆様のご協力をお願いします.

 

公益社団法人 日本鋳造工学会
会長  鳥越  猛

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