Vol.89 No.3 YFE北陸支部の活動報告

YFE北陸支部は委員数が少ないことから,年間を通じた活動の多くは北陸支部本体との共同開催という形をとっている.今回は,昨年開催した工場見学会と技術講習会について報告します.

1.工場見学会

  • 開催日時:2016年10月21日(金)9:30~17:00
  • 見学先:日野自動車(株)新田工場
        (株)木村鋳造所FM工場及び群馬工場
  • 参加人数: 34名

概  要

 9:30に高崎駅集合で工場見学会が始まりました.一昨年3月に開業した北陸新幹線のお陰で,北陸から関東へのアクセスが格段に向上したため,これまで日帰りでの企画が難しかった群馬県の2社の工場見学の開催が実現しました.総勢34名のメンバーが高崎駅から貸切バスに乗り込み,最初の見学先である日野自動車(株)新田工場様に向かいました.

 日野自動車様到着後,井田主査様のご案内により,会社概要および近年力を入れておられる安全活動についてご説明を頂きました.安全活動では「危険源特定型 危険撲滅やり切り活動」の実施状況をお聞きし,絶対に仲間からケガを出さないという強い信念のもと,知識と意識を高める活動を展開されているとのことでした.

 鋳造工場の見学では,シリンダブロックおよびシリンダヘッドを生産している鋳造ラインを見学しました.今後の少子高齢化を見据え,年配者や女性が働き手となることを考えた現場つくりを目指しているとお聞きし,棚の高さや重量物の運搬方法など細かなところに配慮された現場となっていて,大変参考になりました.

 午後からは(株)木村鋳造所FM工場および群馬工場を木村名誉会長,吉村工場長の案内で見学させて頂きました.日本にフルモールド鋳造技術が入って間もない頃にその鋳造技術を導入され,その後,従来の模型鋳造をやめフルモールド鋳造法に特化し,NC化,IT化を積極的に進めてこられたとのこと.

 現在では非接触三次元デジタイザによるリバースエンジニアリングや人工砂を使用した三次元積層造形システムなど最先端の技術を活用して鋳物の品質と付加価値を高めておられました.また,工場運営においても,日々の5S活動や改善活動,体系的な教育システムなど人づくりにも非常に力を入れておられることが現場の随所に見ることが出来ました.

 2社の工場見学を終え,これからの鋳物工場は,匂いや粉塵,騒音などに配慮し,女性でも安心して働ける快適な職場を目指さなければいけないと心を新たにしました.

2.技術講習会

  • 開催日時:2016年11月22日(火)13:30~16:50
  • 場  所:石川県工業試験場 
  • 参加人数:47名

概  要

 西山北陸支部支部長の挨拶の後,技術講習会がスタートしました.第一部として清水一道氏(室蘭工業大学)から「鋳造技術者のための破損解析」と題して,構造物の構造設計・強度設計業務に必要とされる材料力学の基礎と,製品の破損破壊の種類と分類,破断面からの破損解析の手法について,実例を交えながら講演して頂きました.

 大学の講義では,2倍以上の時間をかけて教わる内容を,限られた時間に凝縮して説明頂き,非常にレベルの高い講演となりましたが,材料力学の基礎を理解しておけば,機能上問題となる巣とそうでない巣に分類することが出来るため,客先との限度基準の協議に活用できると教えられ,一同納得した次第です.

 第2部として,栗熊勉氏(栗熊技術事務所)から「電気炉溶解法とその不良対策について」と題して講演が行われ,鋳造不良の中で溶湯に起因する鋳造不良についての原因と対策について説明して頂きました.  

 鋳造不良は,溶湯・鋳型・方案・環境の4つ交互作用により発生すると考えられるため,溶解だけでは不良対策を十分にすることは出来ない.しかしながら,先ずは,溶湯の性状のばらつきを少なく,安定させる必要があり,それが出来て初めて不良対策の根本対策が可能になるとのこと.

 黒鉛が晶出し易い良い性状の溶湯を安定的に得るために,溶解炉,材料,黒鉛の生成・成長,溶湯処理や注湯方法などの「原理・原則」をしっかりと理解して,日々の地道な改善を積み重ねることが重要であるとご教示頂きました.

連絡先 

明石 隆史 〒924-0011 石川県白山市横江町1484  (株)明石合銅 076-276-5533  takafumi@akashigo.com