Vol.93No.4 日下賞受賞者紹介(4)  木村亮介さん

 学会表彰のひとつである「日下賞」は,今後の活躍が期待される若手の研究者・技術者に贈られる賞です.今回は2018(平成30)年度の受賞者で,海外勤務のためこれまでのYFE大会でのご紹介ができなかった日産自動車株式会社の木村亮介さんです.

 

 

 

 みなさんこんにちは.日産自動車の木村と申します.日下賞という光栄な賞をいただき,YFEだよりの執筆をさせていただくことになりました.
 私は2005年の入社以来,アルミ鋳造の技術開発,生産技術に関わっており,2017年から3年間,フランスに赴任しておりました.赴任中は,日本からの支援を受けながら現地担当エンジニアと,ヨーロッパ圏でのアルミ鋳造生産拡大業務に携わりました.初めての海外赴任で,働く環境や生活環境が大きく変化し,いろいろな新しい経験をし,幅広い文化に触れることで知見を広げ成長できたと思います.会社の期待にどこまで応えられたか分かりませんが,ヨーロッパ圏でもアルミ鋳造拡大,日本との連携強化に貢献できたと信じています.
 生活の中はもちろん,仕事をする上でも文化の違いを感じることは多々あり,初めはストレスに感じることもありました.会議の進め方でも日本とは大きく異なり,資料もなく,あってもグラフや図表は少なく文字ばかりのスライド(フランス語のみの場合も多い)で,ひたすら口頭論議を続け,結論は??となることばかりで,終わった後で同僚に説明してもらうと結論が出ていないことがほとんどでした.

 見習うべきと感じたのは,部長も課長も担当も対等に自分の意見を言い合っていたことと,白熱した論議のあとでも会議が終われば一緒にコーヒーを飲んで談笑したり,公私の切り分けがはっきりしていることでした.毎朝出社時にはチーム全員と握手し挨拶するのもいい習慣だと思いました.
 その他にも,国や会社が方針として決定したことを進めるスピードは非常に速いと感じました.コロナ感染拡大が確認されたときも,すぐにロックダウンされ,会社指示で技術員は全員有無を言わさず在宅勤務に切り替わりました.
 プライベートでは海外旅行も行ったことなかったですが,駐在中はヨーロッパの国々をいろいろ巡り,海外赴任をきっかけに世界が広がりました.
 生活の中でも,いろいろと気づきがあり,赴任後の役所での諸手続きや,税金の支払いなど慣れない作業をする際に,過去の赴任者が残してくれたマニュアルが非常に役に立ち,ノウハウの文書化,伝承の重要さを感じました.グローバルでのアルミ鋳造拡大においても,急速に発展しているデジタルIoTやセンシング拡大による現場ノウハウの基準化,標準作業化が,今後さらに重要な取り組みになってきます.
 また,価値を感じればお客様はお金を払ってくれるということも実感しました.海外での日本食材店や日本食レストランなどは,サービスもよくないし味も普通で,そのうえ値段が高くてもお客さんは入っていました.鋳造でも,さらなる採用拡大のため,鋳造のメリットを活かし付加価値を付けられるような開発に取り組んでいきたいと思います.

 環境の変化は新しいことにチャレンジする機会になります.コロナ禍で生活様式は変わりましたが,在宅勤務が大幅に拡大され通勤時間が削減されたり,学会や展示会などオンライン開催になり出張しなくても参加できるようになったり,よいところもあるので前向きにとらえピンチをチャンスに変えていきましょう.学会はオンラインでは質疑が盛り上がりに欠ける面はありますが.
 一日も早くコロナ禍が収まり,対面で楽しく飲食したり,旅行に行けるようになることを祈っております.それではみなさん,また鋳造工学会でお会いしましょう!

 

 

連絡先

所属:日産自動車株式会社
名前:木村 亮介
所在地:〒231-0053 神奈川県横浜市鶴見区大黒町6-1
E-Mail:ryosu-kimura(at)mail.nissan.co.jp
*(at)を@に変えて送信ください.