塗型の塗り方が作業者によって異なるようですが,大丈夫なのでしょうか?【フルモールド】

 フルモールド鋳造法において,塗型工程の管理は品質を左右する重要な管理項目になります.作業者によって塗り方が異なる場合は,厚みのバラつきが懸念されます.

厚みが薄い場合,「浸透型の物理的焼着きの発生」を招く恐れがあります.また,厚く塗りすぎると「残渣の発生を助長する」ことがあります.厚く塗った場合は塗型剤が自重に耐えられず,液ダレによって局所的に厚みが薄くなってしまったり,過度に厚い部分では乾燥収縮による「塗型層の乾燥割れ」を引き起こしたりします.そうすると厚く塗布しているつもりでも,焼着きの発生が増加する危険性があります.

塗型剤の厚みをコントロールするには,以下の3点を抑える必要があります.1点目は「チキソトロピー」という性質です.この性質は簡単に言うと攪拌によって粘度が低下し,攪拌をやめると粘度が高くなる現象です.このような性質を持っているので,塗布するときは緩く塗りやすく,塗布された後は垂れずに膜厚みを保つことが出来ます.2点目は「温度変化による粘性変化」です.一般的には温度が高くなるほど粘度が低下します.まれに逆の挙動を示す塗型剤もあるので注意が必要です.温度によって粘度が変化しますので,塗型層の厚みを一定にしたい場合は,温度管理も重要です.3点目は「腐敗による性能劣化」です.水性塗型剤の場合は,菌が増殖し腐敗することによって,性状の悪化,強度低下などが発生します.

大事なことは,塗型剤自体の性状を管理し,一定の厚みが確保できるように粘度管理,濃度管理やボーメ管理を行うことです.次に塗布方法を統一し,製品の塗型層が一定の厚みになるように管理することで品質の安定につながると思われます.

(『鋳造工学』89巻12号掲載)