第85巻シリーズ「こんなところにも使われている鋳物」
Vol. 85 No. 1「高強度高靱性鋳鉄製軽量サスペンション部品」
平成24年度Caastings of the Year賞受賞作
日立金属㈱
Vol. 85 No. 2「シリコン鋳造による高純度錫のテーブルウェア」
平成24年度Castings of the Year賞受賞作
Vol. 85 No. 3「ワインカップ」
このワインカップの素材は,亜鉛合金ダイカストZDC2(Zn-4%Al)で造られています.表紙写真左の銀色をした2個はロジウムめっきで,右の2個は純金めっきが施されています.
製造したのは株式会社エーケーダイカスト工業所で,今から45年ほど前になります.
耐食性の格段に優れためっきがされているため,半世紀近く経過した今日でも製造当時の輝きが保たれています.
Vol. 85 No. 4「砲丸(素材提供:㈲辻谷工業)」
表紙の砲丸は鋳鉄製.辻谷工業では,加工前約10kgの塊から汎用旋盤の削り出し加工だけで国際規格の7.26kgの砲丸を作り出します.
重心を正確に中心に合わせる同社のその技術は世界一といわれ,オリンピックではアトランタ・シドニー・アテネの3大会連続で全メダリストが辻谷工業製の砲丸を選んで使用しました.
Vol. 85 No. 5「ピアノフレーム(素材提供:㈱カワイキャスティング)」
1台のピアノに張られている鋼鉄製の弦の数は約230本.これらの弦が強い力で張られ.ハンマーで打たれることで美しい音色を奏でます.
これらの弦全体の張力は20トンにもなり,その張力による「ねじれ」や「ゆがみ」を防いでいるのがこの鋳鉄製のフレームです.ピアノの美しい音を長く保つために欠くことができないピアノの要です.
Vol. 85 No. 6「名刺入れ」
この名刺入れの素材は,亜鉛合金ダイカストZDC2(Zn-4%Al)です.底板及び天板の肉厚が0.25mmで,外面は塗装し、内面は鋳肌のままです.
蝶番(ちょうつがい)の部分も鋳放しで作り,はめ込んでいます.
中央部の2本の凸部は平面の歪みを吸収するために塑性加工(ゴムプレス)で成形しました.製造したのは山梨県にある株式会社プログレスです.
Vol. 85 No. 7「シェルモールド法により製造したアルミニウム青銅鋳物」
アルミニウム青銅鋳物は,耐食性と強度を兼ね備えている材料であるため,電気鉄道における電車線金具の曲線引金具,ハンガイヤー,ドッロパ金具等の各所に使われています.
写真の破線◯部は電車線設備に使用されているアルミニウム青銅鋳物製金具のイメージを示します.
Vol. 85 No. 8「手動氷削機」
レトロなデザインの鋳鉄製の業務用手動氷削機.高さは約70cmで重さは25kgあります.
一説では電動よりも手動氷削機の方が氷の舌触りがやわらかくなるとか.撮影に協力いただいた浅草かっぱ橋の厨房用品専門店ではさまざまな氷削機を扱っていますが,この手動タイプも今でもよく売れているとのことです.
(撮影協力:㈱高橋総本店,池永鉄工㈱)
Vol. 85 No. 9「手押しポンプ」
昔懐かしい,愛嬌あるフォルムの手押しポンプ.昭和30年頃まではどこの家庭にも見られたものですが,水道の普及とともに次第に姿を消していき,街中ではほとんど見かけなくなりました.
しかし東日本大震災を境に,動力を使わない手押しポンプが再び見直され,新たに設置する場所が増えているとのことです.
(撮影:東京都江戸川区)
Vol. 85 No. 10「鋳鉄製丸型ポスト」
現役で活躍している鋳鉄製の赤い丸型ポストです.元々郵便ポストは黒かったようですが,明治34年(1901年)に鉄製の丸型ポストが使われ始めた時に,目立つように赤く塗られたのが始まりのようです.
最近では,箱型ポストがほとんどで,丸型ポストはあまり見かけなくなりましたが,まだまだ現役で活躍している丸型ポストもありますので,探してみてはいかがでしょうか.
表紙の写真は,東京都の上野公園内にある下町風俗資料館前のポストです.
Vol. 85 No. 11「聖火台」
どこかで見たことがある……と思う人も多いのではないでしょうか.そう,かの有名なオリンピックの陸上競技場の聖火台と瓜二つです.
実はこれ,まぎれもなく川口市の鋳物師,鈴木万之助・文吾親子の手になるもの.代々木にある聖火台の“レプリカ”とされていますが,実は代々木の聖火台よりも先に鋳造されたものだとか.今は川口市内の公園でひっそりと,しかし堂々とした雄姿を見せています.
国立競技場にあるものはなかなか近くで見ることができませんが,ここなら間近でじっくり拝むことができます.川口へ行ったら一度訪れてみてはいかがでしょうか.
(撮影:川口市青木町公園内)
Vol. 85 No. 12「ベーゴマ」
昔懐かしい鋳鉄製のベーゴマです.子供のころにこれで遊んだ人もいらっしゃるのではないでしょうか?
鋳鉄の現在のような形のベーゴマは明治の末から大正時代かけて作られるようになったようです.その後,東京の下町の子供たちの間ではやり,戦後は子供たちの遊びの中心でしたが,時代の流れにより作っている工場も減りました.
ベーゴマは,生型を用いて,54個取りで鋳造されています.型を合わせる時に,コマの芯を合わせるのが難しく,熟練が必要だそうです.
(協力:㈱日三鋳造所,㈲河村鋳造所)