第185回全国講演大会にて2025年度各賞の受賞式があり、中国四国支部からは5件の表彰を受けました
2025年5月23日(金)~26(月)間に、大同大学にて第185回全国講演大会が開催されました。その中で、5/24(土)定時社員総会終了後に2025年度各賞の表彰があり、中国四国支部からは以下4件の表彰を受けました。おめでとうございます。
【クボタ賞】 (株)ツチヨシ産業 黒川 豊 君
「生型砂の機能向上のためのオーリチックスの制御/管理技術、SEM/EDSによる鋳造欠陥対策技術の確立」
1980年頃、生型は繰り返し鋳造すると特性が変化し、適切に管理しないと制御が出来なくなるとされていた。このために、生型は難しく、理論が無いとされていた。黒川は、この問題の根本は、オーリチックス生成にあると考え、オーリチックスを論理的に研究し、生成機構や制御法を明らかにした。
オーリチックス生成により、生型に保水性、クッション性、アンカー効果の機能を付与して、生型砂は初めて鋳造で使用出来るようになる。オーリチックスは1960 年頃に発見されていたが、詳細なる研究がなかった。黒川の研究成果の一例の紹介として、オーリチックスには、「オーリチックス粒子」、「層状オーリチックス」、「発泡状オーリチックス」、「ガラス化オーリチックス」の4 種類あることを見出し、それぞれの特性を明らかにするとともに、生型砂におけるそれぞれの役割と制御法を明らかにした。
【技術賞】マツダ(株) 笠原 芳樹 君、佐々木 大地 君、重里 政考 君
「高精度ダイカストによる機械加工レス成型の実現」
シリンダブロックには、気筒配列方向に貫通する「メインオイルギャラリ」と呼ばれる潤滑オイル分配用の穴がある。この穴は、対面する2 つのスライド型に設置される鋳抜きピンで成形するが、最大で1.0mm 以上曲った穴が成形される。
従来、突合せ部に隙間を設けることで曲りを軽減し、アルミの壁と残存する曲りを加工で仕上げる工程としていた。そこで、鋳造工程のみで貫通した穴を曲りなく成形することを目指し、加工レスの実現に向けて取り組んだ。
鋳抜きピン曲りのメカニズム解明に向け、ダイカスト工程における鋳抜きピンの挙動を実測した。まず、鋳抜きピンと金型勘合部にひずみゲージを貼り、射出時のひずみを分析した結果、溶湯衝突により鋳抜きピンが振動して曲がったまま凝固する現象を捉えた。 次に、鋳抜きピン内部に熱電対を設置し、凝固中の鋳抜きピン温度も分析した結果、溶湯熱の影響で軸方向に熱膨張し、座屈変形する現象を捉えた。
以上の対策として、鋳抜きピンの振動を抑制するために「軸荷重」を加えて突合せながら、「熱膨張量」を吸収し、且つ金型内に収める小型の「2 重バネ構造」を考案した。2 つのバネのうち、初めはバネβ 単独で変位させることで荷重を立ち上げ、バネβ がバネα の初期荷重に達すると、直列合成された緩やかな荷重特性となり縮み量が多くなる。これにより座屈荷重以下で熱膨張量を吸収できる。
以上の構造を6 気筒シリンダブロックの金型に織込み鋳造した結果、メインオイルギャラリ穴曲り0.05mm 以下を達成し、加工レス化を実現した。今回、鋳抜きピン曲りを抑制する金型設計技術を確立したことで、製品設計の段階から製品機能と生産性を両立する鋳抜きピン形状の提案ができるようになった。新規部品にも応用できる根幹技術である。
【日下賞】 (株)宇部スチール 宮本 諭卓 君
「球状黒鉛鋳鉄の膨張収縮挙動を考慮した鋳造CAE による引巣予測法の研究」
球状黒鉛鋳鉄の引巣予測法において、凝固時の膨張収縮挙動を考慮することで、引け巣の予測精度向上に取り組み、大型鋳造品などへの実機適用事例などを全国講演大会にて報告した。このうち、「凝固時の体積変化を考慮したCAE による厚肉球状黒鉛鋳鉄の引け巣予測」、「凝固時の体積変化を考慮した厚肉球状黒鉛鋳鉄実体モデルの引け巣発生位置予測」、「凝固時の膨張収縮を考慮した球状黒鉛鋳鉄鋳物の引け巣予測に及ぼすモジュラスの影響」は、学会誌への投稿により広く普及している。
現在は、㈱宇部スチールの社員として、大型鋳造品製造および製鋼製造の技術管理・開発による工場全体のコントロールを行っており、技術の中核を担う人材として活躍している。さらに、若手鋳造技術者として中国四国支部のYFE 活動へ積極的に参加して、研究発表を行い、支部の活性化に貢献している。
【網谷賞】 ヨシワ工業(株)鋳造部六日市鋳造課六日市造型係 中子搬送サークル
「中子搬送ラインにおけるコールドボックス中子割れ不良の低減」