ご挨拶 松木一弘支部長 35-36期(2019-2022年度)
このたび、中国四国支部第35期の支部長としての指名を支部総会で受けた。昭和27年に設立の伝統ある当支部の重さを考えた時、私が貢献できるか否かは別として、一生懸命の努力を決意する。冒頭でのお願いとなるが、2021年の秋には当支部で第178回の全国講演大会が開催予定であるので、皆様方のご尽力を切に希望申し上げる。
目下、私は日本鋳造工学会および日本金属学会の本部理事としての任期中に在る。材料系の学協会が会員の減少を食い止めようとして努力している。日本金属学会の理事会席上、日本鋳造工学会(当学会)のみは会員数の維持が成されているところから、学ぶべきところを多く学ぶようにとの依頼である。金属学会で漸くにして開始された小学生から高校生の若年層を対象とした学会への参画、企業への魅力ある学会つくりなど、当学会では30年近く前より企画・立案・実行されてきた。このことは、産・学・官より組織された当学会の担当者が、将来向けた「ものづくり」の有り方や大切さを、惜しみなく形に現して下さって、常にフレンドリーな関係を維持しつつ、経験・知恵・人材・資金などを惜しみなく提供くださった結果である。
ところで、私が所属している研究室は、機械系の中でも材料分野を取り扱う「材質制御工学」である。教育に加え、研究力を強化した世界トップ100の研究大学となることを目標に掲げている。その取り組みの一つとして、学内外を越えた幅広い組織で立ち上げている、広島大学の研究センター「マルチマテリアル化を指向した革新的製造プロジェクト」がある。当該の材質制御工学研究室は中核となる材料創製パートを担っている。学内において,革新的ものづくりに関する世界をリードするような研究を行う歩みが始まって5年が経過し成果が出ている。我が国のものづくり産業に貢献するため、産官学連携の元に先端的製造加工技術を駆使した革新的製造プロジェクト研究を通じて,ハイレベルの研究発信,研究開発,人材育成を行う予定でもある。
材質制御工学研究室では高性能な機械構造材料、機能化やインテリジェント化までを兼ね備えた機械部材の最適成分設計やそれらの製造プロセスの開発を行っている。理論的背景に基づき正確・迅速に超多元系合金成分を提唱すると共に、製造プロセス因子を原理・原則から解明して組織構造と物理・機械的特性の相関を一般化して材質制御を行い、成分と構造の最適化を図っている。これらは、ものづくりの根幹を担う最重要分野であるため、大学単独のみならず各素材・自動車・電気・電子メーカー等との共同研究や日本鋳造工学会からの委託を受けた研究体制を構築している。
目下の大学教員の評価は論文数、教育実績、外部資金獲得額、博士後期課程学生数などによる。上述の研究拠点センターを通じて、目下、6名の博士後期課程留学生を受け入れており、内3名が製造プロセスとして鋳造法を適用している。手掛けている対象材料の高性能化や多機能化に、凝固・鋳造プロセスの最適化を図って材質制御を達成してきている。以上の試みの成果の一つとして、例えば海外ネットワークの構築と、優秀な海外からの留学生の勧誘のしくみの確立ができつつある。
大学の特色を生かした製造技術の高度化を、近くは中国四国支部の鋳造業に適用し、これまでの伝統有る鋳造産業をさらに理論的・原理的・実用的にバックアップしていきたい。
2019年4月就任
公益社団法人 日本鋳造工学会中国四国支部
支部長 松木一弘
※こしきより転載