材料は、いろいろな原因で破壊します。
破壊は、材料に働く応力がその強度を超えた時に発生します。
材料に欠陥があると、そこに応力集中が発生して破壊することもあります。食べ物の包装に切れ目を入れておくと、そこで容易に袋を破れるのはこの利用です。欠陥が破壊につながる典型例です。
鋳物は、鉄なので高い強度がありますが、それでも壊れることがあります。なのでどんな時に壊れるのか?を知ることは、設計でも利用中でも素材メーカーとしても科学的に理解することは大切です。
材料に外力が働くときに、材料内部でどのような力(引張応力・せん断応力)が発生するのかは、まずイメージを持つことが大切。材料はかかった力に比例して伸び縮みする。
外から圧縮する力が働く時のイメージ図がこれです。
上下に圧縮する力が働くと上下に縮み、材料内部は水平方向に逃げようとする。
その結果上下方向には圧縮応力、45度方向には摩擦力、外力と直角の水平方向には引張応力が発生。
引っ張った場合は、逆になり上下方向に引張応力が発生(引張試験)しますが、水平方向に縮んで45度方向に摩擦力が発生し、水平方向には圧縮力が働きます。
イメージには、両手の親指と親指、人差し指と人差し指の先を合わせて、ひし形を作り、上下に圧縮させたり伸ばしたりするとわかりやすい。(大学では材料力学の鵜戸口教授が教室でよく実演し、なるほどと納得したものでした。)。
一方、曲げる力の場合は、材料の一方が伸び反対側が縮みます。指を曲げたり伸ばしたりするのと同じで、骨はそのままで両側の筋肉が伸び・縮みします。その状況が図に示されていますが、指の骨に相当する内側は歪みが小さいので応力も小さくなります。これが竹が強い理屈なのですね。竹は、内部には大きな空洞(鋳物では欠陥?)がありますが、外側で強度を受け持つので内部の空洞は無関係。強い強度があり、中国ではビルなどの足場材料に利用。(図は建築学生が学ぶ構造力学から引用)
これは、建築の柱など構造部材にH型鋼・鋼管・角型鋼管など中空材料が使われるのと同じです。曲げに耐える力は、材料の外側が担っているのです。
装置や機械の破壊の調査によると鋳物が壊れる真の原因が鋳物欠陥なのは、概ね2-3割程度で多くは設計不良・貰い破壊(外部で発生した破壊が鋳物欠陥まで破壊)なのだと(北海道大学名誉教授野口先生)。
鋳物製品不良のかなりを外観不良が占めていますが、機能・構造強度上問題ではないならば不良率は大きく変わる可能性があります。
ESGやカーボンニュートラルには不良率は大きな影響があるので、不良内容をしっかり判別でき不良減少できれば大きな効果がありそうですね。鋳物という素晴らしい素材の利用と製造法には、いろいろと知らなければいけないことがあるようです。