銑鉄の鋳造では鉄を1500度で溶解するために、大電力の電気炉を利用。
電源周波数と同じ周波数を用いる低周波炉では、スターティングブロックや残湯溶解が必要。

スタートブロック不要で全量出湯できる中周波電気炉は、周波数を変換して撹拌力と加熱力のバランスのよい周波数(300-3000Hz)を利用する。

周波数を変換するため、コンバーターで交流の電力を直流に変換し、インバーターで目的周波数の交流電流を作り出す。この過程で高調波が発生する。

電磁気学でわかったこと

1.電流は磁界を発生
2.電流・電界が変化すると、変化を妨げる方向の磁界・電界が発生する
3.直流では電流を遮断するコンデンサ(絶縁一対平板)は、交流電流は流しやすく位相を進める
4.直流では安定磁界をつくるだけのコイルは、交流電流では電流変化を妨害する抵抗になる(位相を遅らせる)
5.交流から半導体で交流波形の片側だけを取り出し直流にするのがコンバーター
6.コンバーターで作った直流から目的周波数を切り出すインバーター
  ※インバーターやコンバーターは、頻繁なスイッチの都度(入り切り=電流の急激な変化)高調波を発生

上記の性質から発生した高調波は有害なので、高い周波数は流れやすい特性のコンデンサを利用し、発生した高調波を優先して流し込んで吸収させることなどが行われている(洪水のときの調整池ですね)。
ところが、コンデンサーは高い周波数を流しやすいために回路全体と共振し異常に高い交流電流を発生させることがあるというので、交流電流を抑制するコイル(リアクトル)付きのものを利用する・・・のだそうです。

 

高調波はノイズと異なり定常的に発生し、電源系統に悪影響を及ぼす。

以下に、解説例をご紹介
公益社団法人日本電気技術者協会 高調波対策の考え方・検討経緯・留意事項について
電気技術解説講座 (株)高岳製作所 監査役 松田高幸

https://jeea.or.jp/course/contents/08301/

高調波に関するトラブル発生時の調査や具体対策面で、全体的な動きや基本的な考え方について、実務面に主体を置き、高調波発生のメカニズム、対策の考え方、トラブル発生時の留意事項等について、今までの検討経緯や基本的な考え方を含めて簡潔に説明いたします。

① 不特定多数の高調波発生源が、電力系統全体に分布していること
  ——— 発生源を特定できないケースがほとんどである。
② 電力系統を介して、高調波電圧・電流が複雑に存在すること
  ——— 加害者と被害者の因果関係が不明確なケースが多い。
③ 長期に亘って技術面、経済面で協調のとれた公平な対策が必要なこと
  ——— このような対策案の策定は、実際問題として極めて難しい。
 以上を念頭に、質問に沿って回答します。

高調波の発生・伝播のメカニズムについて

① 高調波発生機器の事例

  • 第1図に、テレビ等に用いられている電気回路(全波整流コンデンサ平滑回路)の場合の高調波発生特性を示します。図からわかるように正弦波とは似つかわしい入力電流波形になっています。
  • 第2図に、上記のような波形の電流の高調波次数と電流の大きさを示します。
    このように、高調波発生機器の電流には多くの高調波次数成分が含まれます。
  • 高調波発生機器は、様々な種類があり、それぞれ高調波発生特性が異なるが、解析や対策等の検討では「テレビ等の汎用機器」によるものと「工場の整流装置等の特定需要家機器」によるものに分類することが多いようです。

② 伝播のメカニズム

  1. 電力系統の高調波は、第5調波が最も大きく、次いで第7の順になっています。
    ——
    高調波発生源の近傍では多くの高調波次数が存在するが、この内の第3調波は変圧器の3次巻線(デルタ回路)に還流したり、高次高調波は近傍のコンデンサ等に流れ込み、結果として22kV以上の特高系統では、第5調波が最も大きく、次いで第7の順になり、他の次数は少ない。
  2. 第3図に基本波と第5次がある場合を示します。
    ——
    この例では、基本波100%に対して第5調波10%です。実系統では、電圧の場合、第5調波は3~5%程度以内なのでもう少し綺麗になります。6kV配電系統では、第3調波等多くの次数が存在する場合があります。

 
 

高調波障害について

  1. 高調波障害の大半は、力率改善用コンデンサの直列リアクトルに関するものです。
    (この直列リアクトルに関するものが65%程度、コンデンサ本体に関するものが25%程度、その他、家電機器、保護装置、等で10%程度である。)
  2. 障害の内容は、直列リアクトルの場合、加熱や焼損によるものが多いようです。
    (消防等の出動をお願いすることもある。)
    (このような障害は散発的に発生することが多いが、配電系統の一部の地域一帯で障害が集中する場合もある。)
  3. 障害の件数は、ある電力会社でみると、一時期は年に数十件を越えていたが、最近では10~20件程度に減少しているようです。
    (この場合にも、監視・測定技術の進歩、解析技術の進歩から、全体としては円滑な対応が出来るようになってきている。)
 

高調波対策の考え方

① 検討の経緯

  • 高調波障害が今日のような形で発生(すなわち、不特定多数の高調波が、電力系統を伝播し、ある地域で増大して被害が発生)したのは、1970年代の後半以降です(それ以前は主にローカル的な問題として、発生源の近傍で稀に発生)。
  • 当初は、被害が発生した電力会社が個別に検討していたが、問題の難しさや多くの分野に関わりがあることから、全国レベルの検討へと発展しました。
  • 主な、検討委員会等は以下のとおりです。
    ・新時代に即応した電力流通技術問題研究委員会
      (昭和57年8月~約2年、事務局:エネ庁技術課、委員長:関根先生)
    ・系統高調波問題検討WG
      (昭和61年1月~約半年、事務局:電気事業連合会)
    ・電気利用基盤強化懇談会「高調波問題専門委員会」
      (昭和61年7月~約1年、事務局:エネ庁技術課、委員長:正田先生)
    ・電気協同研究会「高調波対策専門委員会」
      (昭和62年11月~約2年、事務局:中部電力、委員長:正田先生)
    ・日本電気協会「高調波専門委員会(汎用品と特定に分けて推進)」
      (平成4年~約3年、部会長:正田先生)
    ・高調波抑制対策ガイドライン(汎用品と特定に分けて通達)
      (平成6年10月3日、エネ庁公益事業部)
    ・高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-1995)
      (平成7年10月、日本電気協会、電気技術基準調査委員会)

② 対策の基本的な考え方

全体を見渡した場合の対策の基本的な考え方は以下の通りと考えます。

  • 現状の高調波のオーダーが、長期に亘り越えないように、皆で努力すること
    (特高系統:総合3%、配電系統:総合5%を高調波環境目標レベルとする)
  • 対策は、長期的にみて、技術・経済的に協調のとれた公平なものであること
    (汎用機器は、不特定多数であることから、生産段階で対策実施する。)
    (特定機器は、個別の要因が強いので、新設時等に個別検討・実施する。)
  • 影響を受ける機器の高調波耐量は、環境目標レベル以上とすること
    (例えば、配電系統の場合、高調波電圧5%を耐え得ること)
  • その他、諸々の対策は高調波を極力押さえる方向にすること
    (例えば、力率改善用コンデンサの場合、6%の直列リアクトルは電力系統に多く伝播している第5調波抑制に有効なので、耐量のあるものを設置していく。)
    (また、電力会社は、高調波発生源と影響を受ける側との接点に位置することから、トラブル調査や対策検討にあたって技術面で協力する。)

③ 具体例(ガイドラインの概要)

  • 高圧又は特別高圧の場合
    高圧以上のお客さまにおいて、その電気設備を使用することにより発生する高調波電流を抑制するための技術要件を示しています(新設、改修時に個別に実施)。

    ——
    現状から50%程度の抑制を目標にしている。
    ガイドラインに引き続き指針も制定され、「高調波流出電流計算書」を基に、電力会社窓口と相談する仕組みになっている(詳細は省略)。
  • 家電・汎用品
    300V以下、20A/相以下の電気、電子機器(家電・汎用品)を設計・製造するに際し必要となる「発生する高調波電流の抑制レベル」と「測定法」などを示しています(生産段階で実施)。

    ——
    現状から25%程度の抑制を目標にしている。
  • 第4図に、高調波抑制対策の考え方(抑制量検討の基礎資料)の一部を示します。

 

トラブル発生時の留意事項

 主な項目は、以下の通りです。

  1. 電圧や電流の波形に注意すること(特定の次数等)
  2. 電力系統的に見て、高調波が増大する条件になっていないか注意すること
    (高調波障害が発生するような場合、電力系統や需要家の静電容量の関係で、高調波電圧や電流が 局部的に増大するケースがある。)
  3. ケースによっては、長時間の測定と柔軟な判断が必要なこと
    (発生源と被害機器との因果関係が、複雑化していることから、ある時間帯は発生源になったり、他の時間帯は影響をうける側になったりする。このような場合、長時間の測定(1日オーダー)を行い、例えば第5調波電圧と電流の位相を見て 因果関係を見極めながら判断する必要がある。)
  4. 今までの高調波トラブル事例が多いに参考になる場合があること
    (結果的には、比較的単純なメカニズムになる事が多いが、実際問題としてなかなか思い浮かばない。トラブル事例を知っているかどうかがポイントになる。)
  5. 対策後の状況にも注意すること
    (他の要因が複雑に絡むことがあるので対策後の状況にも注意が必要。また、対策を行ったことで別の問題が発生することもある。さらに、年度展開によって新たなトラブルが発生することもある。長い目で見た的確な対策が必要になる。)
  6. このようにして、皆で協力し、長期に亘って見守っていく必要があると思います。

https://jeea.or.jp/course/contents/05103/

より、解説を部分引用します。全文は上記URLをご覧ください。

 

進相コンデンサに直列リアクトルを設置する目的は、高調波電流の電力系統への流出抑制と進相コンデンサ投入時の突入電流の抑制である。高調波第5次と7次調波を例に流出電流の計算例を示し、又、突入電流による影響について解説する。

直列リアクトルが付いていない進相コンデンサXc /nが接続されている系統に負荷設備による高調波が存在していると、電源側の誘導性リアクタンスnXl0とこの進相コンデンサとが並列に接続されていることになり、この両者の並列共振作用によって電源側への高調波流出電流が増加する現象が生ずる。

JIS規格(1998)の改正により、進相コンデンサは直列リアクトル付きのものを使用することになった。

 仮に需要設備の負荷に高調波発生機器がない場合であっても、直列リアクトルが設置されていない進相コンデンサは、配電系統の高調波を拡大する作用がある。よって高調波に対して進相コンデンサに直列リアクトルを挿入し、合成リアクタンスを誘導性にしている。

2. 進相コンデンサ投入時の突入電流の抑制

 電源に進相コンデンサを投入すると、一般に進相コンデンサの定格電流に対し、数十倍程度の大きい突入電流が流れる。この突入電流によって回路の変流器の二次側に異常電圧が発生し,レアーショートや火花放電などによる損傷を起こす場合がしばしばある。

 更にサージ電圧によって電圧継電器を誤動作させ、制御回路に悪影響を及ぼすことがある。このためには直列リアクトルを設置することによって突入電流を進相コンデンサの定格電流の約5倍程度に抑制することができる。