物理量を工学で扱うときに、流れはベクトルで扱い、その線積分・面積分や、特性を細かく見る偏微分とその合成である積分が使われます。
概念のイメージができると理解しやすくなり、使えるようになります。数式暗記が数学・物理じゃない!
基本はマックスウェル方程式です。いろいろありますが、ここでは電磁現象が場で起こるとする考え方を象徴する微分形で表現した関係式をご紹介。
式に出てくる div は、湧き出しがあるかどうかを調べる演算子です。通常の流体では密閉空間に入る量と出る量は同じなのでゼロとなります。電気の場合は、マイナスの電荷をもつ電子やプラスの電荷をもつ陽子が湧き出しになります。しかし磁気には磁気素子もそれによる湧き出しもなく、電気の動きが磁界を作るが定説になっています。
式に出てくる rot は、場が回転する渦を作っているときに値を持つ演算子です。回転をコマの回転軸方向ベクトルで表現します。
式は、電流や電束の変化するときその方向に直角の磁界が、磁界が変化するとき変化を妨げる方向に直角の電界が生まれることを意味しています。
電磁波は、相互に直角な電界と磁界が同時に相互に影響しあって同相の波として、光速度で伝播します。
それらが、すべてこの短く美しい4つの方程式から導かれるそうです。すごいですね。
http://www.maroon.dti.ne.jp/koten-kairo/works/transistor/Section2/momentum2.htmlから引用でご紹介
最初の第1式は、電束の湧き出しは電荷密度と同じ(電気素子の存在)で電気素子から球状に広がること、
第2式は磁束には湧き出しがない(磁素はなく電気の流れで生まれるもの)副次的な現象であることを意味。
第3式は、磁界の起磁力が電流と電束の時間微分(時間変化)で、電流の方向に直角な渦磁界を生む
第4式は磁束の時間微分(時間による変化)が磁束の方向に直角な渦電界を生む
なお、電流や電束変化電流(変位電流)などの起磁力で生まれた磁界が物質に作用すると、物質特有の原子スピンなどによる磁性関係の特性を呼び起こし物質により1倍から10万倍の磁力が生まれ起電力や電流に力を与える物理量になる磁束を生みます。その変換係数が透磁率μ。
絶縁体2枚の電位差で発生する+-の電気量で発生する電界が、間の物質に作用すると誘電率εにより分極を発生しー+が生まれることで物質内部の電界強度が下がります。磁界を生ずる能力や電流に生ずる力の検討に誘電物質の影響を受けないものとして電束が定義されました。
マックスウェル方程式と光速一定がアインシュタインの特殊相対性理論につながったと
マックスウェル方程式で、電磁気が場のエネルギーや運動量(進行方向)を持つことが導かれ、それに光速一定と、動かない観測者・電子(電流)とともに移動する観測者双方に成り立つ理論を考えてアインシュタインの相対性理論が導かれたのだと。
この問題は、電磁気(電気・電界・磁界)が存在する空間(x、y、z)と時間(t)が関係する4元系。
現代では、それらをさらに数学的にベクトルポテンシャル(電流が作る磁場のポテンシャル)・スカラーポテンシャルとしてまとめて一つの式で表現する考え方ができ、それを簡潔に表す記法ができて(アインシュタインの圧縮記法)、電磁場と電気と電流をまとめて表現できるようになったと。
新しい概念を学ぶには動画が一番 youtube 4本あるマクスウェル方程式を1本にまとめ、相対論的な表式にします. をご紹介
マクスウェル方程式を1本にまとめてみた https://www.youtube.com/watch?v=Yhyvd37Xmjk
電気炉がどうして外側が溶けないのか、を調べていったら、思いがけず現代物理学の最先端(?)を垣間見ることができました。
現代の物理学・工学は
ニュートンが見つけた 力学 F=mα から導かれる 重力以外では、「物が接触し同じ方向にだけ働く」力・加速度・質量・応力など、人類が生きる世界経験を反映した設計の基礎概念
ファラデーが緻密な実験を積み重ねて発見した「空間を通して相互に直角方向に働く」電磁気とその相互作用と、それを法則として定式化し電磁気が電磁波を作り、光と同じだと予言したマックスウェル
さらに光速一定とマックスウェル方程式から場のエネルギー E=mc^2 (質量とエネルギーの関係)を発見したアインシュタイン
それらを駆使してできた現代の電磁気利用の、光通信・ネットワーク・センサーや、核エネルギーなどの多彩な利用や、宇宙への適用拡大。
へとつながっていったのだと。現代の鋳造はそれらすべてを利用していた現場でした。
難解な物理学と数学はさておいて
電磁気学では、わずか4つしかないマクスウェル方程式と、それが力を生む1つのローレンツ力の式しかなく、それだけで基本理解ができてしまいます。さらにマクスウェル方程式は、4つのうちの3・4番目が重要なので、合計3つを使えれば役に立つ。
第3式は、 電流が渦磁界をつくる
第4式は、 磁界の変化が渦電界を作る
ローレンツ力は、電荷が磁界を動くと、動く方向x磁界のベクトルの外積の力を受ける(モーターの原理・右手系)
これらに使われている謎の式が、微分・偏微分rotとベクトルの積なので、その意味を知れば千人力!
概念 | 意味や利用方法 |
---|---|
ベクトル | 空間で大きさと方向をもつもの 水・油・空気など流体の流れ、重力や押す引くなどの力、電界、磁界などは、ベクトルで表すことができる |
ベクトルの内積 | ベクトルFとベクトルL の内積は、W=F・L 計算式=|F|x|L|x cosΘ(FとLの絶対値と角度cosの積、角度ΘはFとLの角度)。 力学的には斜面に働く力がその方向に動かしたときの仕事量や、面から流れ出る量を表す。 |
ベクトルの外積 | ベクトルUとベクトルVの外積は W=UxV 大きさはUとVが作る方形の面積で方向が右手系(親指U 人差し指V 中指W) 電磁気では、磁界を動く電荷が受ける力に使われる F=qv x B (電荷qが速度vで磁界Bを動くに受ける力F) 面積分では、微小面の面積と面の垂線方向を示す微小面積ベクトルとして利用する ※ ベクトルの外積の式1行で、 右手系や左手系が表現できる |
微分 | ある現象を細かく分け、分けたものの特徴を調べること。 数学では、xの関数f(x)をxの位置の微小増分dxの時に、f(x)がどれだけ増えるか(=グラフ上の傾き)をいう。 進む方向で増加・減少するかどうか、その大きさなどを調べることができる。 sinを微分するとcosに、cosを微分すると-sinになる(交流電流の基本)。 ※コイルは電流の流れを妨害するように磁界が電界を作るので、電流波形の位相は電源電圧より90度遅れる。 電磁気の基本のマクスウェル方程式は、4つの微分方程式で表現される。 |
偏微分 | 空間的(3次元)・面積的(布)などで、その位置での関数値を x軸・y軸・z軸に分解してdx、dy、dzでの増分を調べる。 |
偏微分:勾配 | gradient(grad)とも言います。その位置の傾きをx、y、z方向成分で表すベクトルになります。 以下の3つの図は 「具体例で学ぶ数学」https://mathwords.net/graddivrot からの引用です。 下記の例では、y=f(x)なら、x、y平面での線の傾きになり、山の高さをz=f(x、y)とすると、山の斜面の傾きになるので「勾配」そのものです。3次元では温度分布をt=f(x、y、z)とすると空間の温度勾配になります。 |
偏微分:発散 | divergence(div)とも言います。その位置の微小立体からの湧き出し量を示すスカラー量です。 流れ分析の基礎式で物質不滅(生まれも消えもしない)で通常はゼロになります。 |
偏微分:回転 | rotation(rot)とも言います。ベクトルVが渦を巻くときに、微小立体部分の回転の大きさと回転方向を指すベクトルです。 3次元空間(x、y、z)で、z軸を軸として反時計回りに回るコマを考えると、(x、y、z)=(1,0,0)では+y方向に動き、(0,1,0)ではーx方向に動き、z軸方向には動き成分もx方向やy方向の動きの変化もないのが渦の特徴。 そのため、第1項と第2項が共に0となり、第3項だけが残ります。 任意のコマの回転を考えた時に、座標軸の回転や移動で、コマの軸と移動後のz軸を合わせることができるので、この関係は全ての渦に共通な性質だとわかります。 電磁気学では、電流や、電界の変化が作る渦磁界や、磁界の変化が作る渦電界の定義に使います。 |
積分 | 細かく分けたものを集めて元の形にする。インテグラルの記号を使う。次元の数だけ並べて使う。1つなら1次元、2つなら面積、3つなら立体。y=f(x)では、x軸とf(x)との面積をx軸の特定の位置から位置まで計算する |
線積分 | 紐に沿って、力F(ベクトル)をかけながら進行方向にdl(微小長さと進む方向のベクトル)進むとき、F・dl(内積)を足すこと。 電磁気学では、磁界の閉曲線での線積分が線の内側の総電流と同じ(マクスウェルの第3法則の積分系)に使われる この性質を無限に長い電線に流れる電流に適用すると、電線を中心とする円周上の磁界の強さが電線からの距離に反比例することが導き出される。 |
面積分 | 面(布)の表面を微小正方形の面積に分け(ザルの目をイメージ)縦横を直交する微小ベクトル du dv とし、微小面積ベクトルをdS=du x dv(ベクトルの外積で面の面積を持ち面の外側に垂直なベクトル)とする。 布の表面を通り抜ける流れのベクトルV として V・dS(内積)をduとdv両方で足し算することで、面を通過する流体量や電荷量や磁界量になる。 特に、閉曲面(閉じた空間の外側壁全体)で行うことで、湧き出しがある・ないを表現できる。 電磁気学では、点電荷が周囲に作る電界がどの閉曲面でも面積分では一定になることから、点電荷を中心とする球面上の電界の強さが距離の2乗に反比例することが導き出される。 |
複素数表示 | 電気で交流の場合は、電流波形をsinで表すと その微分がcosになる(=sinの位相が90度ずれるのと同じ)。 マクスウェルの法則で電流・電界の微分が磁界に、磁界の微分が電界になることから、オイラーの公式で位相の変化を簡単に表現できる複素数の掛け算・割り算が使われる。 コンデンサー(コンダクタンス)やコイル(インダクタンス)が入る回路の説明が簡潔にできるため、交流で多用される。 オイラーの公式:ネイピア数 e と三角関数 sinθ・cosθ (弧度法)と複素数の間に成り立つ奇跡の美しい関係 |
複素数を物理(電磁気や電子工学)で使うことの利点
日経xtechの記事から抜粋引用紹介
https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20150525/419964/?P=2
交流は直流と異なり、インピーダンスという概念があります。直流の抵抗に相当するものだけでなく、抵抗と同じ単位(Ω)だけれども、周波数によって値が変化するコイルやコンデンサーのような“変な部品”が出てきます。この抵抗成分(周波数が変わってもΩの値は変わらない)とリアクタンス成分(周波数によってΩの値が変わる)をインピーダンスとして、1つの式(Z=R+jX)で表すと便利だから、複素表記を多用するのです。
オイラーの式の「eiθ」や「cosθ+i sinθ」は、単位円周上を回る振り子の位置を示したものと理解するのがコツです。この位置をxy座標で表すと、x座標はcosθ、y座標がsinθとなります(図2(a))。ただ、このようにxとyを分けて考えると、式での計算が難しくなってしまいます。
そこで、振り子の位置を「eiθ」とシンプルに示したのが、オイラーの式の指数関数表記(オイラー表記)です(図2(b))。3つの文字で重要なのはθだけです。単位円周上の振り子の位置は角度θで決まるからです。「θがeという記号の右上、iの右に乗っかっている」ことを意識するのがポイントです。
eとiについては、「単位円周上のポイントを表しているマーク」という程度に覚えていれば十分です。
――オイラー表記の利点は。
オイラー表記を用いると、直流の「オームの法則」を交流まで拡張しても計算は簡単になります。
交流では、ピーク電圧もピーク電流も先述の波動方程式で表現できます。電圧の実効値をVrms、位相をφVとすると、ピーク電圧VPは次のようになります。
VP=√2 Vrms sin(ωt-φV)
同様に、電流の実効値をIrms、位相をφIとすると、ピーク電流IPは次のようになります。
IP=√2 Irms sin(ωt-φI)
これらから、オームの法則によってインピーダンスZを計算してみます。上記のピーク電圧をピーク電流で割ります(図3)。ただし、このままだと三角関数の割り算をすることになり、計算が非常に難しい。ここでオイラー表記を使うと、計算がとても簡単になるのです。
数学では虚数表示に i を利用しますが、電磁気では 電流に i を使うので、間違えないようにするため複素数分を j で表現。
三角関数の部分は角度θで決まる振り子の位置を示したもので、eiθで表現することができます。ここでは、電圧や電流の三角関数がei(ωt-φV)やei(ωt-φI)を用いて表現できます。
このオイラー表記を使うと、インピーダンスZは図4のように計算できます。指数関数の割り算は、指数の部分を引き算すればいいですよね。三角関数の割り算に比べると非常に簡単です。
インピーダンスZは、周波数によらず一定の抵抗成分Rと、周波数によって変化するリアクタンス成分Xから成ります。Z=R+jXと表現できます。図4のインピーダンスZの計算結果を見ながら、もう一度、単位円周上の回転振り子と「eiθ(ejθ)」を思い浮かべましょう。すると、振り子の位置を横軸に投影したcos(φI-φV)に振幅を掛けたのが抵抗成分Rで、縦軸に投影したsin(φI-φV)に振幅を掛けたのがリアクタンス成分Xだと分かります。なお、計算上の円の半径はVrms/Irmsです。