日本鋳造協会の技術部会がまとめた、「鋳鉄鋳物製造現場の Q&A」(図書)とその紹介HP(PDF)も参考になります。

日本鋳造協会編:鋳鉄鋳物製造現場の Q&A

https://foundry.jp/bukai/wp-content/uploads/2014/01/19c3d2b9c1523d50c5900e2a2bc2e5f1.pdf

一般社団法人日本鋳造協会では前身の旧社団法人日本鋳物工業会当時から長きにわたり、現場技術者の技術力の向上を目的に「鋳造技術研修会」を開催してまいりました。この研修会では、通常の研修会と異なり、現場からの様々な質問に対して講師が回答する時間を設けていました。そこでは、たいへん多くの質問が出され、各事業所や現場で同じような問題、課題を抱えながら、ひとりで悩み苦しんでいる現場の鋳造技術者の姿が見えていました。
このような経緯から、鋳造技術研修会で講師をされた故園 清見先生をはじめとして、多くの先生方から、「技術・技能」の正しい伝承として、この貴重な生の情報を鋳造に携わる方々に役立てていただくために「Q&A」集を編纂したいという声があがり、「Q&A 編集委員会」を新たに立ち上げ、約 3 年の歳月をかけてようやく刊行されるにいたったものです。
 
本書は、これまでに開催された現場技術者のための鋳造技術研修会において、知識と経験が豊富な講師の方々が、回答されてきた 800 問以上の「Q&A」の中から、厳選した約 500 問の設問に対して、鋳造現場での実務に充分に活用できる内容に再編集いたしました。
 
本書には、類似した質問がたくさんあり、それだけ鋳物造りの難しさがありますが、その回答も着眼点を変えて、できるだけ解りやすく丁寧に解説しています。微妙な言葉の表現を読み取っていただきたいと思います。
また、本書は、鋳鉄鋳物の全分野にわたる様々な疑問に対して、回答だけでなく、解説もしています。したがって、本書を熟読することは、皆様にとっても大変勉強になるものと信じます。
同じ鋳物製品を造るために 100 社 100 種の鋳造方案があると聞きます。つまり、自分の工場や自分の職場に合った答えがある筈です。本書によって、その答えを引き出していただければ幸いに思います。また、本書の回答をそのまま鵜呑みにすることなく、自分の製造現場に合うようにアレンジして活用し、応用していただきければ、さらなる発展が望めるものと思います。
 
平成 25 年 12 月
一般社団法人 日本鋳造協会
技術部会部会長 斎藤 勝広
 
 
―本書の使い方―
(1) 鋳鉄鋳造現場での疑問の解決
本書は、鋳鉄鋳造現場での作業において、生じた疑問に対して、専門の講師の先生方がご自分の経験と幅広い知識を駆使して回答されたものを取りまとめたものです。したがって、目次は、質問者が質問用紙に記載してきた内容を極力再現しています。場合によっては、質問者の補足説明もいれています。
目次の中から皆さんの疑問にあうものがあれば、その回答を熟読されて、参考にしてください。また、比較的同じ内容のものでも別の質問としてあえて取り上げたものもあります。同じような質問でも見方を変えた回答として参考にしてください。
 
 

この中で、不純物関係項目としては下記部分があります。

2.4 地金・原材料

2.4.1 主要材料 2.4.1 主要材料

Q133:スクラップ中の Zn、Mn、Mo 等の増加による鋳物品質への影響と対策
Q134:溶解原材料として鋼屑の配合割合を増やした場合に生じる不具合とその対策
Q135:ダライ粉を使用する上での諸問題

2.4.2 合金鉄 2.4.2 合金鉄 (FeSi、FeMn など)

Q136:高 Mn 鋼板スクラップの動向
Q137:製品に問題を生じない FCD500 の Mn 含有量の許容値は?
Q138:回収した FCD450 の戻り屑をそのまま再溶解すれば、また FCD450 になるのか?
Q139:Mn 低減方法(酸化鉄の使用方法)

2.4.3 地金 2.4.3 地金 (スクラップ) の汚染

Q140:スクラップ汚染の現状と FCD に及ぼす影響

2.4.4 その他 

Q141:溶解原材料の高騰による原価低減策
Q142:溶湯の酸化膜低減方法 (ドロス対策を含む)
Q143:原材料や副資材の高騰への対処方法(使用量削減)
Q144:油分の多い鋼屑あるいはダライ粉使用による炉体及び溶湯への影響
Q145:ファイヤライト 
 
 
 

<内容の紹介例>

Q037:球状化不良の原因と対策 :球状化不良の原因と対策
-回答-
黒鉛球状化阻害元素として、第 1 に考慮すべき元素は、「S」である。元湯中の S 含有量は少ない方が望ましく、球状化処理の前に脱硫処理を行うことが大切である。
これ以外に多くの黒鉛球状化阻害元素が明らかになっており、表 1 にその限界量を示している(1)。
また、堀江(2)は表 2 に示すように黒鉛球状化阻害元素の分類を行っている。
球状黒鉛鋳鉄の場合は、球状黒鉛が晶出する際に、冷却速度が速い、即ち薄肉鋳物には影響が少ないが、冷却速度が遅い、大物鋳物の場合に顕著に影響が現れることがある。例えば、TiやPbがそうである。これらの元素も極力元湯中に存在しない方が望ましい。
これまでは、自動車用鋼板屑は鉄系原材料として安心であったが、今日これらは高張力鋼となったために、添加元素として、有害な Ti を含有するようになってきた。また、防錆処理として Zn による表面処理が一般的になってきている。さらに、Al の切削屑が混入し、これが表面酸化しているものや Pb 系の塗料を塗布されている鋼板等も選別する必要に迫られている。
厚肉部に出やすいチャンキー黒鉛の形成を促進する元素として、Ce、Ca、Si、Ni 元素が、また、片状黒鉛がセル粒界に晶出するのを促進する元素として、Bi、Pb、Sb、As、Cd、Al、Sn、Cu 元素が挙げられる。