地球を回る衛星は秒速8kmレベル、デブリが衛星に衝突の防護策を検討するために電磁力利用のEML(Electromagnetic Launcher)が使われていると。(※衛星は重力大きい低軌道ほど高速、文末参照)
EMLは、レールガンとも言われる。
種子島伝来の鉄砲は火薬の爆発力を利用。現代の戦車の徹甲弾は秒速2km程度。これでは不足してるためEMLの出番。

レールガンの原理は、ローレンツ力 F = i x B (力=電流x磁束)で弾を加速。
電気炉で溶解した金属が炉の真ん中に湧き上がる対流も、コイルで発生の磁界と炉壁の湯の誘導電流で起こるローレンツ力が原因。

日本の宇宙開発研究では、EML利用で 秒速8km程度が実現と。

以下にTDKのサイトから、関連記事を一部引用でご紹介。
じしゃく忍法帳 https://www.tdk.com/ja/tech-mag/ninja/083

じしゃく忍法帳

第83回「磁気で加速する飛翔体」の巻

 

磁界方向と垂直に置かれた導体に電流を流すと導体には力(ローレンツ力)が働きます。これは電磁誘導の逆の現象で、左手の親指、人差し指、中指をそれぞれ直交するように伸ばしたとき、人差し指を磁界の方向、中指を電流の方向とすると、親指の向きが力の働く方向となります。有名なフレミングの左手の法則です。

 このフレミングの左手の法則により、強力な磁界と大電流が得られれば、導体を高速に加速して発射する装置がつくれます。これを電磁飛翔体加速装置といい、英語の頭文字をとってEML(Electromagnetic Launcher)と呼ばれます。

身近な材料で簡単に実験することができます。図1のように2本の銅棒をレール状に据えて、その下に磁石を敷き並べます。レールの上に短い銅棒を渡し、レールに乾電池から電流を流すと、レール上に渡した銅棒はスルスルと移動していきます。

図1

日本の宇宙科学研究所(ISAS)のEMLは世界でもトップクラスで、現在のところ飛翔体の発射速度は秒速7.8kmにまで達しています(秒速10km以上の超高速の実現に向けた研究も進行中)。スペースデブリから宇宙機器を守る研究だけでなく、高速飛翔体の衝撃圧からエレクトロセラミックスを焼結させる実験など、新工法・新材料の研究開発などにも広く利用されています。
 

 

図2 レールガンとも呼ばれるEMLの基本構造

パルス電流で多段ロケット式に加速

 EMLは2本の導体に可動式の飛翔体をはさみこんだ構造となっています(図2)。永久磁石の磁界では不十分なので、導体に大電流(数100万A)を流したとき導体周囲に発生する強い磁界が利用されます。装置に加わる反動力を抑えるため、パルス電流で多段で加速。

以下省略

 

Twitter(現 X )より引用紹介

防衛装備庁 レールガン試験実施 

https://twitter.com/atla_kouhou_jp/status/1714204056087126105

防衛装備庁発表資料 PDF より引用紹介

 

 

蛇足 高校物理で学ぶ磁場の導体棒

物理で電磁誘導では、よく出てくる問題が、導体棒。磁場に2本のレールがあり、レールの上に導体棒を乗せたらどうなるか?
磁場で動く電線にできる誘導電流・ローレンツ力・誘導起電力・ニュートン力学の総集編の問題となります。

 図は 高校生から味わう理論物理入門/導体棒 https://manabitimes.jp/physics/243

回路に電流を流すと導体棒がどう動くか? と、電流がないときに導体棒を動かす力を求めよ? の2つの見方ができます。
導体棒に流れる電流は+からーへ(図の上から下へ)、磁界は紙面の上から下へ、それぞれのベクトル場の問題です。
導体棒に働く力と運動はニュートン力学の力と加速度の問題。
導体棒が動くと回路に囲まれた面積が増加し、中を貫く磁界(磁束)が増加し、誘導電圧が発生することに気が付くかどうかがカギになります。

紹介したこのサイトでは、下記の4つの問題の解説があります。
図のように下向き静磁場がある場所で、2本のレールに転がる導体棒を乗せて起電力Eで電流を流すと、ローレンツ力・誘導起電力・回路の電圧方程式(キルヒホッフの法則)・導体棒はどう動くかで、次に示すよう問題とその解の解説があります。

(1)導体棒の速さを  とした時,導体棒に生じる誘導起電力を求めよ。
(2)回路に流れる電流の方向を適当に定め,キルヒホッフの法則に従って回路方程式を表せ。
(3)導体棒の運動方程式を表せ。
(4)十分時間が経った時,導体棒の速度は一定となった。この時の導体棒の速度を求めよ。

JAXAから記事をご紹介

人工衛星はどのくらいの速さで地球の周りをまわっているのでしょうか

 

低い軌道では約8km/s。軌道が高くなるほど遅くなります。

地表近くの低い軌道をまわっている人工衛星の速さは、ほぼ8km/s(2万8800km/h)です。これを「第1宇宙速度」と呼んでいます。これは、ジャンボジェット機の約30倍の速さです。地球1周は4万kmなので、1時間半弱で、ひとまわりしてしまう速さです。

 地球から離れるほど地球が引く力(これは重力と呼ばれたり、万有引力と呼ばれたりします)は弱くなります。そのため、必要な速さは小さくなるのです。

 「必要な速さが小さくなる」と言って、人工衛星の打ち上げが簡単になると思ったら大間違いで、高く打ち上げるのに、エネルギーはよけいに必要となります。

 ところで、右の図のように、地表から約3万6000kmの軌道高度では、地球を一周するのにかかる時間が地球の自転周期と一致します。これが「静止衛星」の正体です。本当に静止しているわけではなく、赤道上を東向きに自転と同じ速度で飛行しているのです。
軌道高度(km) 速度(km/s) 周期
0 7.93 1時間24分
400 7.67 1時間33分
1,000 7.35 1時間45
35,786 3.08 23時間56分
静止衛星は、放送衛星や気象衛星として活躍していますが、必ず赤道上空にあります。衛星放送用のパラボラアンテナをすべて南に向けている理由もわかるでしょうか。日本上空で「静止」するのは、不可能だからです。

※静止衛星の高さ(地球一周が24時間)
 地球の直径:約1万2700㎞(半径では6350㎞)なので、地表から約3.6万Kmは、地球の中心からだと4.2万Kmで半径の約7倍弱の高さ、衛星から見える地球の角度は16.7度(tanθ=2/7)とかなり小さい。まさに宇宙から眺める地球です。