電気と磁気は相互作用があるのでまとめて電磁気という。

導体に電流が流れると、磁界が発生する。代表的な形状の電流として、直線と円がある。
円の場合に一つの円と、円が連なるコイル、さらにコイルをコイル状に丸めたものがある。

それぞれにできる磁界の形と公式一覧です。

Electrical Information から、いろいろな導体の作る磁界 公式一覧図を引用でご紹介
https://detail-infomation.com/magnetic-field-strength-summary/

【磁界の強さのまとめ】

『直流導体』・『円形コイル』・『無限長ソレノイド』・『環状ソレノイド(トロイダル)』

 

様々な導体の磁界の強さのまとめ

 

解説

電流が流れると磁界が発生します。微小線要素に電流Iが流れるとき、そこからRだけ離れた場所にできる磁界dHを求めるにはビオ・サバ―ルの法則を使います。これを電線全てにわたって足し算(積分)することで磁界が求められます。

ビオ・サバ―ルの法則
 図は https://detail-infomation.com/biot-savart-law/ から引用

※図で、磁界のアイコンは、紙面の上から下の方向のベクトルを表します。

現実の電線は複雑形状ですが、特定の形状の場合には、その対称性などを利用して簡単に求めることが可能になります。電線が直線なら線の方向には同じなので、線に直角な方向要素だけで求めることができます。一つの円のコイルや、無限長のコイルの中心の磁束も計算で求めることができます。

直線の電線に電流が流れると、周囲に円周長さに反比例する大きさの磁界が発生(方向は 右ねじの法則)。閉じた線で囲まれた面を貫く電流と、その面の周囲を巡る磁界の線積分は同じ

(電磁場の計測結果であるファラデーの法則を数学的に表現したマックスウェル方程式と、ベクトル場の数学のストークスの定理より)。
ストークスの定理「ベクトル場では、閉曲線の周囲に沿ってベクトルを周回線積分したものが、閉曲線に囲まれる面でベクトルのrotを面積分したものに等しい」

※マックスウェルの方程式(静磁場 微分形) : rot H=I 

ストークスの定理を利用するため両辺を面積分すると、
 右辺=閉曲線Cで囲まれた面Sを貫く電流合計
 左辺=rot H の面積分(磁界Hの渦成分の面の積分)
   =閉曲線Cに沿って磁界Hを線積分したものと等しい

=>任意の閉曲線Cに沿った磁場の1周線積分は、閉曲線Cで囲まれる面Sを貫く電流の面積分と等しい。(rotHは、Hの回転成分。内部の隣り合う微小面積の周囲はお互いに消しあうので、面の周囲のみが残る)
※注:渦がないベクトル場の場合は周回積分はゼロ。地球で始点と終点が同じ場合は重力ベクトルの周回積分はゼロ。登山で同じ位置に戻るのと同じ。

東京工業大学武藤研究室 講義ノートより引用 http://www.th.phys.titech.ac.jp/~muto/lectures/Gelmg06/Gem_chap09.pdf

この結果、直線電流に直角な面で、線を中心とする半径rの円周上の磁場の大きさは同じなので、円周の長さxH=I となる。

 

 

1巻きのコイルの中心には、電流/コイル直径 の磁界が発生。棒磁石に似た磁界ができる。コイルの微小長さに流れる電流がコイル中心に作る磁界を、コイルの1周長さ分で積分すると公式が導かれます。

 

直線状の多巻きの無限長のコイルの内部には、一様に H=nI(n=単位長さ当たり巻き数x電流)の磁界が発生、コイルの外側には磁界がない。その解説はこちら
油圧の制御弁を動作させるソレノイドや、回路のインダクターとして利用。

 

環状ソレノイド(トロイダル)では、コイル内部を一周する磁界が発生し、大きさは H=NI/2πR(図参照)。コイルから漏れる磁束が少ない高性能インダクタとして利用されます。

※インダクタ(コイル)、抵抗、コンデンサは、電気回路の3大部品
  induct 英語:誘導する
  電流が誘導して発生する磁界は、その変化を妨げる方向の起電力が発生(ファラデーの法則)し、交流(高周波)成分を流れにくくする効果があります。

圧粉鉄心トロイダルコイル例(高性能インダクタ) (株)尾崎より引用
https://www.ozekinet.com/power_supply/nanocrystalline/toroidal_coil/

 

トロイダルコイルは、内部の磁界が一方方向に回り、投入されたプラスの陽子とマイナスの電子が反対方向に動き、一周すると出会うことから、プラズマを閉じ込める核融合にも利用可能とも言われています。

日本が開発中の核融合炉の記事をご紹介。

核融合実験炉イーターのトロイダル磁場コイル初号機完成披露式典を開催~世界最大級の超伝導コイルの完成により、核融合炉建設が大きく前進~

 

ポイント

  •  核融合実験炉イーター用の世界最大級の超伝導コイルが世界で初めて完成。
  •  ビゴITER機構長は、ITER中枢機器の記念すべき第一号機の完成に感謝し、製造技術を賞賛。
  •  極低温用特殊ステンレス製の大型・厚肉(約230mm)構造物の難溶接技術を確立し、高さ16.5m、幅9m、総重量300トンの巨大な超伝導コイルに対し1万分の1以下の高精度での製作を実現。

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫。以下「量研」という。)核融合エネルギー部門及び三菱重工業株式会社(取締役社長 泉澤清次。以下「三菱重工」という。)は、核融合実験炉イーター(以下「ITER」という。)のための世界最大規模の超伝導コイルであるトロイダル磁場コイル(以下「TFコイル」という。)を完成させました。
 世界初のITER用TFコイルの完成を記念し、三菱重工の二見工場においてITER機構のベルナール・ビゴ(Bernard Bigot)機構長や文部科学省の青山 周平大臣政務官、国会議員、関係経済団体の関係者、学識経験者の方々によるご列席、量研の平野 俊夫理事長ら、三菱重工の泉澤 清次社長、加藤 顕彦執行役員原子力事業部長らの出席による「完成披露式典」が開催されました。
 このTFコイルは建設中のITERにおける中枢機器の記念すべき第一号であり、この完成によって現地での核融合炉建設が大きく前進します。本TFコイルは、神戸港から南フランスに向けて積み出され、2025年のITERの運転開始に向け、同工場から順次5基のTFコイルを出荷する計画です。今回のTFコイル初号機の完成を弾みとして、世界の持続的発展のために非常に重要な技術開発に取り組むITER計画を、日本の産学官を挙げて、一層主導的に推進していきます。

ITERの模型

 

研究の背景

 ITER計画は、核融合エネルギー*の実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクトです。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極が参加しており、2025年の運転開始を目標に、ITERの建設をフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進めています。日本はTFコイルをはじめ、ITERにおける主要機器の開発・組立て等の重要な役割を担っており、量研はITER計画の日本国内機関として機器等の調達活動を推進しています。          

 ITERのTFコイルは、高さ約 16.5m、幅約 9m、重量約 300トンのD型の超伝導コイルであり、18基が真空容器を取り囲むように放射状に並び、高温かつ高密度のプラズマを閉じ込めるための最大12テスラの強力な磁場を発生させます。ITERでは、TFコイルを19基(予備1基を含む)製作し、そのうち9基(予備1基を含む)を日本、10基を欧州が分担して製作します。TFコイルの内側構造物は、全19基分を三菱重工の二見工場で製作。今回の初号機をはじめ5基分については、巻線部を三菱電機が製作し、外側構造物は韓国で製作して、二見工場で一体化することにより完成体にします。

ITER内部

 

解説記事 Wiki のトカマク型トロイダルプラズマ閉じ込め装置の解説

 

蛇足 高校物理で学ぶ磁場の導体棒

物理で電磁誘導では、よく出てくる問題が、導体棒。磁場に2本のレールがあり、レールの上に導体棒を乗せたらどうなるか?
磁場で動く電線にできる誘導電流・ローレンツ力・誘導起電力・ニュートン力学の総集編の問題となります。

日本の自衛隊が世界で初めて洋上実射試験に成功した「レールガン」は、導体棒の原理そのものでした!
  https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2022/pdf/disp_04.pdf
 火砲を変える電気の力  電流が飛ばす砲弾!は、この問題の実機版。

 図は 高校生から味わう理論物理入門/導体棒 https://manabitimes.jp/physics/243

回路に電流を流すと導体棒がどう動くか? と、電流がないときに導体棒を動かす力を求めよ? の2つの見方ができます。
導体棒に流れる電流は+からーへ(図の上から下へ)、磁界は紙面の上から下へ、それぞれのベクトル場の問題です。
導体棒に働く力と運動はニュートン力学の力と加速度の問題。
導体棒が動くと回路に囲まれた面積が増加し、中を貫く磁界(磁束)が増加し、誘導電圧が発生することに気が付くかどうかがカギになります。

紹介したこのサイトでは、下記の4つの問題の解説があります。
図のように下向き静磁場がある場所で、2本のレールに転がる導体棒を乗せて起電力Eで電流を流すと、ローレンツ力・誘導起電力・回路の電圧方程式(キルヒホッフの法則)・導体棒はどう動くかで、次に示すよう問題とその解の解説があります。

(1)導体棒の速さを  とした時,導体棒に生じる誘導起電力を求めよ。
(2)回路に流れる電流の方向を適当に定め,キルヒホッフの法則に従って回路方程式を表せ。
(3)導体棒の運動方程式を表せ。
(4)十分時間が経った時,導体棒の速度は一定となった。この時の導体棒の速度を求めよ。