2024年8月25日NHKのプロジェクトXで、東京スカイツリー建設秘話を紹介していた。再放送だったが、その内容がものつくり人にとって示唆に富む内容なので、紹介する。
大企業である元請け大林組と、協力した多数のとび職などの建設系中小企業と建設構造物製造の企業群、そして設計上の最も重要な構造物である耐震性のための五重塔と同じ機能を持つ「3000トンの極厚ハイテン鋼板製円筒心柱(しんばしら)」の製造を中小企業の職人社長が一人で保有する大型ベンディングマシンの極限に挑戦して製作したと。
また、大手とび職会社と小規模とび職会社との共同作業でのレベル差での微妙な対立と解消のための花見呑み会の開催などの企画と効果も、日本の組織間の協力構築の参考になります。
建設中に発生した東日本大震災で作業中の緊張・中断・途中階への緊急避難と、更なる地震での塔の崩壊防止作業途中の作業完成必要との提案を受け最上階へ上がるリスクある緊急アクションの提案とみんなの賛同と実行など、金目的ではない心意気で成り立っている日本ものつくり現場の精神こそこの番組の真骨頂!
事業概要紹介記事その一
https://www.shinkeiken.com/inno/2012a/2012-8-8.html
2012年8月8日(水)
株式会社大林組 東京本店 建築事業部 生産技術部長 田辺 潔氏 |
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『ハイテクと伝統の融合 東京スカイツリーの建設』 ご案内の通り、「東京スカイツリー」は数々の困難を技術とマネジメントで突破して完成されました。先ず、600m超という高さは日本の建築現場が経験したことのない未踏の領域でした。しかも、東京タワーの場合、底面の一辺が333mの高さに対して約95m、この比率をスカイツリーに当てはめると、高さ634mに対して181mが必要です。しかし、スカイツリーの建設用地は一辺が60m、円でも直径は60mしかとれない。そこで出した答えが正三角形。
これだと一辺が約68mとれます。しかも、三点で立つ構造は、鼎のように狭い場所で安定して立つのに優れています。そこへ構造的に最も無理が少なく、かつ強度が得られる日本伝統の「そり」と「むくり」を併せ持つ形状が採用されました。「そり」とは日本で独自に発達した日本刀などに見られる湾曲形状。「むくり」は奈良時代の法隆寺などに見られる、柔らかくふくらんだ円弧のことです。更に大きな特徴は、日本古来の「五重塔」に見られる「心柱」と呼ばれる構造による制振です。これに634mのタワーを支える大林組の独自開発による最新技術「ナックル・ウオール」、「リフトアップ法」、鋼管を主としたトラス構造と直接溶接による「分岐継手法」などの最新技術が総動員されました。
そして、「東京スカイツリー」は完成までに約4年に及ぶ設計期間と3年8ヵ月に亘る建設期間を費やし、延べ約58万5千人が関わりました。 最新の事例を通して、日本の今後の技術の可能性の一端を考え合って参りたいと願っています。 皆様方の積極的なご参加を願ってやみません。 |
日本製造業が技術と設備を持つ中小下請け企業に支えられてる側面を記録する映像でもあります。
NHKでは、茨城県支局サイトに放送内容紹介の下記記事があったので、一部を引用紹介します。
https://www.nhk.or.jp/mito/lreport/article/000/98/
映像は、NHKに依頼すれば入手できそう(有料?)、また再放送も期待できそう。
世界一の自立式電波塔 東京スカイツリー
昭和33年に建設された東京タワーも昭和史に残る難工事として知られていますが、今回ご紹介する「東京スカイツリー」建設はその約2倍。
634mの高さに挑む一大プロジェクトでした。
建設に関わったのは、のべ58万人。
技術革新が進んだ現代においても、最後は人の手で1つ1つくみ上げられていました。
前代未聞の建築物を、東京タワーの4分の1の激狭地にわずか3年半で建設するという難工事です。
この難題をクリアしたのが、大林組の「頭脳」と呼ばれている田辺潔さんです。
田辺さん
デザインを一目見れば、どれだけ大変な工事になるかすぐに想像することができました。だから、関わらないようにしていました。
田辺さんは、3万7千パーツの鉄骨を立体パズルのようにくみ上げていくプランを考案。
500ピースのパズルですら途中で投げ出してしまう私にとっては、3万7千の超巨大パズルを空中で作り上げる作業を想像することすら困難です。
その難工事が、結果的に、わずか2センチの誤差で作り上げられた事は奇跡に近いといいます。
田辺さん
これだけ大掛かりな工事だと、普通はどこかで誰かがミスをしてしまったり、集中力が切れたりしてしまいます。しかし、東京スカイツリーの工事は関わった58万人が、常に最高の仕事をし、高い集中力で仕事に取り組んだ結果だと思います。
重圧と向き合った現場
前例の無い未知の工事。
現場は大きな重圧と戦っていました。
スカイツリーの3本の足を、それぞれ別の会社が担当。
北側が抜群のチームワークを誇る「鈴木組」、東は精鋭集団の「松村組・西中建設」、西は橋の建設を得意とする「宮地建設工業」。
実はこうして、1つの現場で複数の会社が合同で仕事をするのは、非常に珍しいことなのだそうです。
他社のスピードについていけず遅れをとり、苦労していたという宮地建設工業の半田智也さん。
半田さん
違う3社が同じ現場を担当するという狙いは最初から分かっていましたが、田辺さんが無茶な注文をするから大変でしたね(笑)
田辺さん
3社に依頼することで切磋琢磨してもらうという狙いもありましたが、それ以上に、それぞれの得意分野を活かして作業してもらわないと完成できないと思っていました。
現場で鉄骨の組み上げを担当していた3社のうちの1社、
西中建設のとび職人・森川哲治さん。
担当する現場は、雷鳴と稲光が真横から襲いかかり、風速10メートルを超える突風が吹きすさぶ、前人未到の高所。ボルトを1本でも落とせば、下で作業する者のヘルメットを貫通する。そんな、一瞬も気を緩められない現場での作業は、「カリスマ鳶」と呼ばれる森川さんですら、悪夢にうなされるほどだったそうです。
森川さん
気持ちを切り替えるため、仕事の話を家庭ですることは無かったのですが、妻が「夜、うなされてるよ」と教えてくれました。相当緊張していたのだと思います。
あの日、タワーの上で!
当初、互いにライバル視していて会話も少なかった3社。しかし、「お花見」での飲み二ケーションがきっかけで、次第に協力体制を構築していきます。
タワーの高さは600mを超え、完成まであと一歩という時でした。
3月11日午後2時46分。東日本大震災が発生。
最上部でゲイン塔を固定する作業をしていた半田さん。
左右に5m揺れるタワーの上で死を覚悟したといいます。しかし、揺れが収まった直後、半田さんは作業を続行。
半田さん
ゲイン塔を固定しなければ、余震で部品が落下したり倒壊する可能性があると思いました。
最後は人がつくる!
言われてみれば当然のことではあるのですが、パソコンやAIに情報を入力するだけでは、東京スカイツリーは完成しません。
人々の地道な作業の積み重ねが生んだ奇跡のタワー。
それが、東京スカイツリーなのだと改めて感じます。
新プロジェクトX~挑戦者たち~初回放送で、「東京スカイツリー」の見え方が変わった!
そう思っていただけるのではないでしょうか?
1本1本の鉄骨、柱、その構造やデザインに、さまざまな人の知恵や工夫、汗や涙が染み込んでいます。
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私たちの身近にあって当然のものも、それを発案し、カタチにするために奮闘した人たちがいます。
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