銑鉄鋳物では、成分中の炭素(C)が黒鉛として析出することが重要な意味を持っています。
黒鉛を利用する身近なものに「鉛筆」があります。鉛筆についてのわかりやすい解説が X (旧Twitter)にありましたので引用でご紹介します。
黒鉛は、「鉛筆のすべる様な書き味は黒鉛によるもので黒鉛は潤滑剤に使われるくらいすべる素材」だと。
さらに、鉛筆の芯に使われる粘土は、鋳物砂への添加剤です。鉛筆と銑鉄鋳造には材料で意外な共通点がありました。
下町の鉛筆屋✏️杉谷龍一 @kitaboshi
東京下町の北星鉛筆(株)で鉛筆を作る鉛筆屋の社長が気ままに 仕事の事や日常の事をつぶやいています。
https://x.com/kitaboshi_/status/1856630601341931579
日本の鉛筆と海外の鉛筆何が違うの、そんなに品質に差が出る物なの?
鉛筆はイギリスで誕生しヨーロッパで400年以上の歴史のある筆記具です。日本にちゃんと伝わったのは明治維新以降でヨーロッパから学んだものを見よう見まねで産業を育てて来た歴史があります
戦前の鉛筆は品質も悪く不買運動が起きるほどでしたが鉛筆メーカーの技術の底上げをはかるためJISを定め日本全体の品質を上げました
海外の鉛筆と何が違うかと問われれば一番は品質の安定性でしょう。現在価格の安さから日本製の鉛筆でも中の芯が海外製と言うのはよくあります
弊社でも価格に合わせて海外産の芯と国産の芯を使い分けています
中国産の芯も最近では書き味も上がって来ていますが
混ぜムラなのか、焼く際の温度のムラなのか、材料のムラなのかは分かりませんがロット間のばらつきは日本の物と比べると大きいです
ヨーロッパと比べると日本の芯は全体的に濃くて柔らかい傾向にあります
同じ硬度表示の鉛筆を書き比べるとヨーロッパの鉛筆の方がだいたい2硬度くらい薄いです
なぜそうなったかは定かではありませんが、私の個人的な見解では日本は筆の文化が長く鉛筆を硬筆と呼び筆の様に使う事を教えました
その為全体的に濃いものが好まれていたのではないかと考えられます
当時HBとして販売されていた物もヨーロッパより平均して濃かった為JISを定める際の基準が濃くなったのではないかと思います
その為からかヨーロッパに比べて濃度の濃い鉛筆の品質の良さと充実度、硬度間の差がはっきりしているのが日本の鉛筆の特徴で、絵を描く方の中でも好みが分かれるのはその為かも知れません
JISを定める時にはすでに沢山の鉛筆メーカーがあって各社独自に好きな濃さで鉛筆を作っていました
JISの硬度の決まりはやや広めのHBの硬度(濃度)の範囲がありその中に入っていれば、メーカー毎に濃さが違っていてもHBですそしてそれより濃ければBさらに濃ければ2Bと上がっていきますので、メーカーによっても濃さの差はありますし、各メーカーのブランドによっても濃さは違いますので商品に特徴が現れ、好みが分かれる事につながっていると思います
現在北星鉛筆では芯の製造を行っていない為技術の面に関して言えるものは無いですが、基本的に鉛筆のすべる様な書き味は黒鉛によるもので黒鉛は潤滑剤に使われるくらいすべる素材です
ただそれだけでは固まらないので粘土を入れて固めます。粘土の量が多ければH・2Hとどんどん硬く薄くなりカリカリとした書き心地に、粘土の量が減れば濃く柔らかくなり滑らかな書き味になります
芯の滑らかさの違いは使う粘土の質によって変わって来ます。粘土の粒子が細かく均一であれば引っ掛かりが無い良い芯となり、そこに荒い物が混じると紙に引っかかったりざらつきの元となります
粘土の粒子の分別は一度水で溶き混ぜあわせると徐々に粘土の成分が沈澱しますが、荒い物が下に沈澱し沈殿物の上の層は細かく滑らかな物になり高級品となります
どの辺までの粘土を使うかで書き味が決まるのでどの様な材料を使っているかは全に社外秘で把握はしていません
そして混ぜ合わせる時間や回転数、芯の形に押し出す圧力、乾燥にかける温度と時間、焼き固める際の温度と時間、焼き上げの後に浸み込ませる油の種類やその際の温度に至るまで細かく決められていて、そこに各社のノウハウが詰まっています
北星鉛筆ではその様に出来上がった芯と鉛筆用にロウの入った液体で煮て圧力を掛け中までロウを含侵させたスラットと呼ばれる板を加工して鉛筆の形まで仕上げてお客さんに届けるのが仕事です
毎回0.01mm単位で変わるに変わる芯に対して適正な溝を彫ったり、接着剤の選定、その接着する為の適正な圧力も重要で、この圧力が強すぎるだけで芯が真ん中に来なくなります
木を削る為の刃物の研ぎかたやセッティング方法
これを誤ると楕円になってしまったり正六角形にならなかったり中心に芯の無い鉛筆、軸表面のざらついた鉛筆となり日本では売れない鉛筆となります
その後の塗装方法から回数もそこまできれいに塗る必要はないんじゃないかと思うほど丁寧に薄く回数を重ね伝統工芸品の様な光沢のある鉛筆に仕上げて行きます
色々な鉛筆を比べて見るといかに日本の鉛筆がきれいに仕上がっているかが分かって頂けると思います
それも日本の職人が良い物をお客さんに届けたいという気持ちとそれを求める国民性にあると思います
30年ほど前100円ショップが出来1本の鉛筆が40円の所に1ダースで100円の鉛筆が入って来て鉛筆業界は衝撃を受けましたが、日本のお客様が選んだのは日本の鉛筆でした、そのおかげでまだ鉛筆を作る仕事を続けていけています
アメリカに目を向けると鉛筆の一大産地であったはずが今は数軒の鉛筆メーカーしか無くなり、もしかしたらその当時の鉛筆の品質自体も日本とは差があったのかもしれませんが、ほとんど中国製に変わってしまいました
それも書けて消しゴムが付いていればお客さんが買ったからです
と言う日本も芯を作る芯メーカーは日本に1社、鉛筆の自社商品を持つメーカーも片手で足ります、全体を見て関連会社をすべて合わせても30数社になるまで鉛筆の需要は減っていますが、いま世界を見ても高品質な鉛筆を少ない数量から作れるのは日本だけです
私はその鉛筆作りの火を消さない為にも鉛筆の地位向上を常に考えています
最後まで読んで頂きありがとうございました✨
#もっと知ってね鉛筆の事
午後6:30 · 2024年11月13日