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次世代電池「ナトリウムイオン電池(SIB)」とは?リチウムイオン電地との違いも紹介

2026.3.9

スマホやワイヤレスイヤホン、ノートパソコンなどのガジェットから電気自動車(EV)まで、二次電池(充電可能な電池)は私たちの生活に欠かせない重要なアイテムです。二次電池の需要が急増する中、主力ともいえるリチウムイオン電池に代わる新勢力として「ナトリウムイオン電池(SIB)」が脚光を浴びています。塩の主成分として有名なナトリウムを使った電池が、今なぜ注目されているのでしょうか。
本記事ではナトリウムイオン電池のメリットを詳しく解説します。現在の主流でもあるリチウムイオン電池と比較して、その性能や安全性はどれほど信頼できるのかということに加え、2026年の時点で中国メーカーを中心に量産化が加速し、EVや電力貯蔵システムで実用化され始めている最新の普及状況も網羅します。

ナトリウムイオン電池(SIB)とは?脱炭素社会で注目されている理由

ナトリウムイオン電池

ナトリウムイオン電池(SIB:Sodium-ion Battery)は、名前の通りナトリウムを原料とする充電式電池です。プラス極とマイナス極の間をナトリウムイオンが行き来することで、電気を供給したり充電したりすることが可能になります。

一方で、現在、スマホやEV車で使用されている電池はほとんどがリチウムイオン電池です。しかしリチウムイオン電池の原料であるリチウムはどこでも採れるものではありません。オーストラリアやチリなど一部の地域だけに偏っており、供給には特定の国や地域に強く依存せざるを得ない状況です。

また、近年はリチウム需要の多さから生産が追い付かず、さらにリサイクル率(回収・再資源化)も5〜10%以下とまだまだ低いため、安定的な供給を現実のものとするには課題を抱えているのが現状です。

その点、ナトリウムイオン電池に使われるナトリウムは、私たちの身近にある「塩」の主成分です。塩は広大な海から豊富に入手できるだけでなく、かつて海だった地層からも採掘できるので、多くの国が無尽蔵・安価で手入れられます。

しかも、ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池は原料こそ違いますが基本的な構造は類似していて、これまで使用していた電池の製造設備が流用できます。このため、低コストで製造できるナトリウムイオン電池がリチウムイオン電池に続く脱炭素電池の新しい切り札として注目されているのです。

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ナトリウムイオン電池の特徴とメリット 安全性、充電速度は?

ナトリウムイオン電池

資源が豊富かつ低コストで製造できることだけがナトリウムイオン電池のメリットではありません。電池としての性能もすぐれています。まず、日常で使用する際の重要な要素となる充電速度は、リチウムイオン電池と同程度あるいはそれ以上も可能で、充電時に熱くなりにくいことから急速充電に向いているとされています。

また、耐用年数の目安となるサイクル寿命(電池残量が100%から0%になって充電を繰り返す回数)も技術開発に伴って年々向上し、リチウムイオン電池に匹敵する長寿命のものも登場しています。

そして、何より優れているのが使用温度範囲です。リチウムイオン電池が作動するのは0℃〜40℃程度、最適温度は15℃〜25℃で、非常に低温・高温な場所では発火や劣化の危険があります。しかし、ナトリウムイオン電池の作動範囲は−40℃〜80℃と、極端な環境の中でも高いパフォーマンスが期待できます。

加えて原材料のナトリウムは熱暴走を起こしにくいうえに安全性が高いこともメリットです。リチウムイオン電池の誤った処理などによる発火事故が問題となっていますが、ナトリウムイオン電池の場合は輸送時や利用時の発火リスクをほぼゼロにできると考えられています。もし、将来的にナトリウムイオン電池を全固体化できれば、安全性はさらにアップするでしょう。さらに、ナトリウムは毒性が低いので、リサイクルする場合にも有毒ガスが発生したりせず、環境への負荷を抑えられるのも大きなメリットです。

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宇宙や深海での使用も?ナトリウムイオン電池の開発状況

ナトリウムイオン電池

このようなメリットの多いナトリウムイオン電池にもデメリットがあります。ナトリウムイオンの体積はリチウムイオンの約2倍なので、ナトリウムイオン電池が蓄えられるエネルギー量は同サイズのリチウムイオン電池に比べ、単純計算で半分ということになります。このことからもわかるように、ナトリウムイオン電池は大きく、重くなりがちです。その結果として主な用途は、工場や商業施設や病院のような場所に設置する定置用蓄電池や、一部のEV車に限られています。

また、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池と構造は同じでもイオンの種類が違うので、使う電極の素材は変えなければなりません。このため、電極素材を新しく研究し、開発する必要があります。

現在、ナトリウムイオン電池の開発で先頭に立っているのは中国です。量産が本格化したのは2023年頃から。ある中国企業が開発したナトリウムイオン電池を搭載したEV車は過酷な環境下のテストでも安全性が確認され、2026年半ばまでに販売が開始される予定です。

一方、日本でもある企業が大学との共同研究で、電極の素材として酸化鉄の一種が使えることを発見し、低コストでの量産が実現に近づきました。また、別の日本企業は全固体ナトリウムイオン電池の開発に成功し、2024年からサンプルの出荷を開始しています。

宇宙や深海などのような、電池が必要となる過酷な環境は、ますます増えていくでしょう。世界中がナトリウムイオン電池の今後に注目しています。

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ナトリウムイオン電池で持続可能なエネルギー活用がより可能に

ナトリウムイオン電池は特定の資源に依存することなくエネルギーを貯蔵し、脱炭素化していくための非常に重要な電池技術となるでしょう。もっとも、リチウムイオン電池が消えてしまうことはなさそうです。状況によってさまざまなタイプのものを使い分けることが可能な電池には、持続可能なエネルギー活用へのさらなる貢献が期待されています。

 

参考:周期律表  LiもNaも周期律表の左端にあり、電子を失いやすく(=酸化しやすく)
 電気化学の電極電位は、 Li ー3.0V、 Na ー2.7Vで、強いマイナス電位で化学電池では、負極となる。

 

NaとLiの電池の安全性比較

ナトリウムイオン電池(NIB)がリチウムイオン電池(LIB)に比べて安全性が高いと言われる理由は、主に**「熱暴走の起きにくさ」「輸送時の安定性」**にあります。

ご質問の「電解質が違うのか」という点については、実は材料の性質は似ていますが、その化学的な安定性と物理的な挙動が決定的な差を生んでいます。

詳しく解説します。


1. 熱暴走(発火)のリスクが低い理由

電池が発火する最大の原因は、内部短絡などによって温度が急上昇し、歯止めが効かなくなる「熱暴走」です。

  • 熱安定性の高い正極材料: ナトリウムイオン電池で使用される正極材(プルシアンブルー類似体や層状酸化物など)は、リチウムイオン電池の材料(コバルト酸リチウムなど)に比べて、高温になっても酸素を放出しにくい性質があります。火災を助長する酸素が出にくいため、激しい燃焼に至るリスクが低いです。

  • 電解質の燃えにくさ: 電解質にはリチウムイオン電池と同様に有機溶媒が使われることが多いですが、ナトリウムイオン電池ではより燃えにくい(引火点の高い)溶媒を選択しやすいという特徴があります。


2. 「完全放電」状態で輸送・保管ができる

これが実用上の安全面で最大のメリットと言えます。

    • リチウムイオン電池の弱点: 負極の集電体に「銅箔」を使っています。電圧をゼロ(0V)まで下げると銅が溶け出してしまうため、常に一定の電気を残しておく必要があり、輸送中も常に「エネルギーを持った危険物」となります。

    • ナトリウムイオン電池の強み: 負極に「アルミ箔」を使用できます(リチウムはアルミと合金化してしまいますが、ナトリウムは反応しないため)。アルミは0Vになっても溶けないため、電気を完全に空にした状態で出荷・輸送が可能です。エネルギーがゼロであれば、衝撃を受けても発火しようがありません。


3. 内部短絡時の反応が緩やか

万が一、釘が刺さるなどのトラブルで内部短絡が起きた際も、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池に比べて自己放電のエネルギー密度が低いため、温度上昇のスピードが緩やかになる傾向があります。

 

まとめ

特徴 リチウムイオン電池 (LIB) ナトリウムイオン電池 (NIB)
主な発火要因 高温時の陽極からの酸素放出・熱暴走 比較的安定
輸送時の状態 一定の充電が必要(危険) 完全放電(0V)が可能(安全)
負極集電体 銅箔(高価・重い) アルミ箔(安価・軽い・0V耐性)
熱暴走の閾値 比較的低い温度で発生 より高い温度まで耐えられる