研究発表概要

発表1:「混練及び乾燥を考慮した生型砂の活性粘土分測定法」

〇黄 子争、枝根 和也、黒川 豊(㈱ツチヨシ産業)

 JIS Z 2451-2019制定により,ベントナイトのメチレンブルー(MB)吸着量試験が標準化された。生型砂の活性粘土分は、生型砂とベントナイトのMB吸着量を測定し,ベントナイトを検量線として算出するが、これのJIS規格はないことから、現場が混乱している。そこで、JIS Z 2451を参考にし、混練や乾燥の要因を加味して検討し、以下の知見が得た。

1 検量線のMB吸着量は、JIS Z 2451同様に未乾燥とし水分補正する方法を、活性粘土分試験に応用した方が良い。

2 生型砂は混練により、MB吸着量が増加する。この影響を補正するには、ベントナイトを生型砂とし、混練した後に検量線とする方法が良い。

3 生型砂の乾燥/未乾燥については、未乾燥のものを用いる方法が良い。

 

発表2:「AZ91Dマグネシウム合金の接着性に及ぼす表面処理の影響」

○日野 実(広島工業大学)

 部材の軽量化を実現するため、マグネシウム合金とプラスチックを接合したマルチマテリアルの作製を試みた。

 AZ91Dマグネシウム合金の接着性に及ぼす各種表面処理の影響を検討した結果、リン酸塩陽極酸化皮膜に後処理を適用することで接合強度を向上させることができた。また、後処理による表面形態の制御も接着性に重要な因子であることを明らかにした。さらにレーザによって微細孔を形成させることでアンカー効果に基づき、接着強度を向上させることができた。その際、リン酸塩陽極酸化皮膜はレーザ光の反射を抑制し、加工性の向上に寄与した。

 

 

 

発表3:「形状記憶能を有するCo-Ni-Al系合金へのCr Mn Fe のマイクロアロイング効果」

〇藤重 遥、結城 健太、JAIHARN Thaenkai、崔 龍範、松木 一弘(広島大学)

 Co-Ni-Al系合金は373K以上の高温での形状回復能持ち、応用範囲拡大が期待されており、幅広い組成範囲において熱弾性マルテンサイト変態するβ相と母相γ相の2相組織よりなる。

 本研究ではβ相とγ相の2相組織の固溶強化度合いおよびそれらの量比を観点として、形状記憶合金が実用に耐えうるための形状回復をはじめとする機能特性と延性などの機械特性を両立する合金を設計する。合金設計に際し、DV-Xαクラスター法に基づいてd軌道エネルギー順位と結合次数を求めて用いて組成最適化を行った。また、合金溶製と材質制御には浮揚溶解・凝固法を用いた。

 

 

発表4:「低温用鋳鋼の衝撃特性に及ぼす熱処理の影響」

〇楊 培、熊 江凌、森 太輔、崔 龍範、松木 一弘(広島大学)、坂本 卓(㈱前川製作所)

 近年、低温工業の発展に伴って、鉄鋼材料は液化ガス用タンクや圧縮機など低温環境での使用が増えている。多くの鉄鋼材料は、低温ほど伸び、絞り、衝撃値が低下していく。鋼の低温特性を向上させるために、組織の調整、結晶粒の微細化を目的として熱処理が行われる。

 本研究は熱処理条件を調査して、熱処理方法ごとにが異なる試料を作り、組織観察と低温衝撃試験などにより、低温用鋳鋼の衝撃特性に及ぼす熱処理の影響を調べ、低温環境における鋳鋼組織を最適化することを試みた。

 

 

発表5:「ダイカスト向け積層金型の拡散接合に関する研究」

〇藤本 直也,寺山 朗,府山 伸行,筒本 隆博(広島県立総合技術研究所),山崎 拓哉(㈱積層金型)

 積層金型は,従来の製造方法では難しい複雑な形状の水路を作製し,冷却性能を向上することで成形時間の短縮が実現できる金型である。過去に株式会社積層金型と広島県立総合技術研究所が共同で実施してきた,アルミダイカスト及びプラスチック成形における積層金型の導入事例を紹介する。

 拡散接合は積層金型を作製するために必須な技術である。母材を加熱・加圧することによって接合界面の原子を拡散させ,溶融させることなく接合する。拡散接合の強度向上を目的に,表面粗さや酸処理・村上試薬処理といった様々な表面処理を研究してきた。各処理で期待される効果と接合強度の変化について考察する。

 

発表6:「急冷した溶湯試料中におけるフリー窒素の分析方法」

○糸藤 春喜(㈱I2C技研)

 鉄及び鋼−窒素定量方法JIS G 1228-1997にて『窒化ケイ素Si₃N₄を含む試料の窒素分析には,適用できない』との規定は,急冷白銑試料には当て嵌まらないことと,分析値の意義について発表する.