電流と磁界と力の簡潔な解説では、宮崎県立宮崎西高等学校の溝上俊彦先生の
F=km m1m2/r2の謎 ― 磁場 H から磁場 B への展開 ―
https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/kou/science/butsuri-jissen_arch/201311/data/file01.pdf
が、解りやすい。磁石ではモノポール(磁素)がないため本質的におかしいのだけど、高校段階の物理では電気の電気力線のイメージで作られた今では化石になった式で教えられているとして、それを電流や磁界の大きさが力で定義されていることを解説している。
磁界に置かれた磁界が受ける力には、意外なことがある。
磁界に置かれた棒磁石のN極・S極はそれぞれ磁界から力を受けるが、棒磁石全体としては両方の力は方向反対で同じ大きさなので棒磁石としては外力を受けない。
古来船乗りや登山者で磁石といえば磁気コンパスだった。磁針先端のN極・S極は地球の磁場から力を受けて回転し北を示すけれど、コンパス全体としては磁場からの外力は受けないのだ。
それを示す例題が、溝上先生のPDFに記載されている。
これは、少し難しい問題が発生することを示唆している。磁石に鉄粉が飛んで行って付着する現象が説明できなくなるのだ。鉄粉が磁界により磁化するとミニ磁針になるので、吸い付ける磁石側に反対磁極、遠い側に同じ磁極が表れ鉄粉全体としては力を受けないことになる。
この問題を考えると、磁極近辺では磁界は一様ではなく、磁極に近いほど磁界が急激に大きくなるため、磁界に近い方の引き付け合う力が遠い方の力よりはるかに大きくなることが答えになりそうだ。
磁石が遠方にある間は鉄粉は力を受けないが、極近距離になると磁石にくっついて離れなくなる。棒磁石を縦に並べると、N極とS極がくっつきあって鎖のようになる現象も同様に理解できる。
下敷きの上の鉄粉が、裏側に置かれた磁石の磁界の分布きを表現するのも同じ理屈で説明できそうだ。近所の鉄粉同士はミニ磁針となって隣り合う鉄粉同士がミニ磁針としてくっつきあうことで、磁界の方向を指し示すようになるのだろう。
コイルと磁界
コイルに電流を流すと、コイルの内部には右ねじの法則により磁界が発生しコイルが棒磁石のようになる。
図は、東京都中央区立銀座中学校のHP掲載の https://www.chuo-tky.ed.jp/~ginza-jh/_resources/content/10001/20200428-135558.pdf から引用
棒磁石としての利用は、通電で動作させるスイッチや、油圧機器のスプールを動作させるソレノイドが代表的。ソレノイドバルブでは通電で棒磁石となって、引き離すばね力を超える力が固定磁石との間に発生するとスプールが動く。
ソレノイドの原理
ソレノイドの分かりやすい解説掲載の天竜丸澤株式会社のHPから引用でご紹介します。
技術情報 >ソレノイドの原理
原理① 磁界の発生
銅線を巻いた円筒形のコイルに電流を流すと磁界が発生します。
※上の図とは、コイルの巻き方が逆なので磁界ができる方向が逆になっています。
原理② 磁力の発生
磁性材料に銅線を巻いたコイルに電流を流すと、磁化された電磁石となります。
※磁性材料に磁界が通ると、原子の電子の回転方向の向きがそろって、それによってランダムに発生し消しあっていた磁界が同じ方向を向くようになり1000倍から万倍などの大きな磁界(磁束)が発生します(=透磁率という)。
原理③ 磁気回路を形成し鉄芯を可動させる
磁性材料で磁気回路を形成し、固定鉄芯と可動鉄芯を設けることにより、磁気回路に電流を流すと可動鉄芯が固定鉄芯へ吸引します。
電流を遮断すると吸引力は消滅し、戻しバネなどの負荷により復帰します。
これが直線作動(リニア)のソレノイドの作動原理となります。
磁界の中のコイルに働く力
ではモーターなど、回転機械では磁界の中に置かれたコイルにはどのような力が働くのだろうか?
電気基礎のHP http://windowstip.web.fc2.com/EtcTips/denkikiso1-3.pdf より、引用でご紹介
分かりやすい解説図の 株式会社坂本製作所様のHPからご紹介
https://sakamoto-seisaku.com/motor-mechanism/
直流モーターの原理
世界で初めて実用的なモーターを開発したのはフランク・スプレイグさんで、これは直流モーターでした。
直流モーターの原理は単純でフレミング左手の法則で説明出来ます。
しかし原理は単純でも整流子やブラシが必要になり、三相誘導電動機に比べて機械的構造は複雑になります。
上図を見て下さい。
図のように磁界の方向と電流の方向が決まっていますので、あとはフレミング左手の法則をあてはめてみると回転方向が決まります。
回転を始めてコイルが1/4回転した時(ブラシと直角の時)にブラシは整流子(コミュテーター)から外れてしまい電流の流れない状態になります。ここを慣性で通り過ぎ1/2回転した時には前回と同じ方向の電流が流れ、磁界の方向は変わっていないので同じ回転方向で回り続ける事が出来るのです。
ポイント:
1.図ではコイルの中心軸は外部磁界に対して直角です。
この場合はコイルの右側の電線と左側の電線は磁界に直角なのでローレンツ力が発生し、左右は反対方向になり距離を掛けたものが回転トルクになります。しかし、電線の向きが外部磁界の方向と平行な部分ではローレンツ力は発生しません。
2.コイルが90度回転すると、コイルの中心軸方向と外部の磁界の方向が一致します。上下の電線に働くローレンツ力は1と同様ですが、同じ位置で上下方向の反発力(あるいは引き合う力)だけで距離がゼロになるのでトルクは発生せず外部に働く力はなくなります。