素形材生産を行う鋳造では、成分を予定通りのものであることを確認する必要があります。
そのために、製造現場で即座に成分分析できることが必要で、そのために物理機器分析が用いられています。

現在、製造現場で実用されているもの
 金属:発行分光分析装置 計測面を研磨しセットすると数秒で測定ができます。
 液体:ICP発行分析装置

その原理は、物質の元素が原子構造に基づき、固有の光(電磁波)を放出することを利用し、プラズマなどの高エネルギーを照射し、物質が発する光を分光させ波長ごとの強度を測定。

精度の維持管理のためには、成分が判明している標準サンプルを使用した定期的キャリブレーションや、機器の設備維持管理が必要です。

金属組織などの研究室レベルでは、電子顕微鏡の応用の蛍光X線装置や、EPMAなど元素分布などを含めたより詳細な分析を行う方法もあります。

島津製作所のHPからその原理を引用解説します。

発光分光分析装置の原理(金属用)

  • 発光分光分析とは、試料中の対象元素を放電プラズマによって蒸発気化励起し、得られる元素固有の輝線スペクトル(原子スペクトル)の波長を定性し、発光強度から定量を行う方法です。
発光分光分析装置PDA-8000
  • 分光器PDA発光分光分析装置

解説 
 紹介した図では、右上にあるのが溶湯少量を鉄鋳型に注湯して水冷急速凝固でチル化させた試料の平面部を研磨して金属面とし、装置に装着し、下からプラズマを照射し発生した放電プラズマが分光器に入射し(黄色い線)、それが回析格子で反射し分光し、高電子増幅管で受けてそれぞれを計測しています。

 

発光分析とは,金属試料に電気的エネルギーを与えることにより,蒸発・気化した原子が励起されます。 この場合「電気的エネルギーを与える」とは,試料と向かい合った電極との間で放電を発生させることです。

スペクトル線

発光分光分析装置PDA-8000

これらの励起された原子やイオンは放電のプラズマの中で,図のような元素固有の輝線スペクトルを発します。 このように,1つの元素からでも多数の輝線スペクトルが得られます。

つまり,放電によって発生する光は,試料中に含まれる各元素の輝線スペクトルの集合だと言えます。この光を回折格子で分光することで,目的の元素の輝線スペクトルを取り出すことができます。 輝線スペクトルの強さは試料中のその元素の含有率によって決まるので,分光して取り出した元素ごとの輝線スペクトルの有無と強さを検出器(光電子増倍管)にて測定することで,それらの元素の定性・定量分析を行うことができます。

広い意味では励起放電(光源)としてICP(Inductively coupled plasma 誘導結合プラズマ)を用いるICP発光分光分析も含みますが,単に発光分光分析(発光分析)あるいは光電測光式発光分光分析という場合は,励起放電としてスパーク放電・直流アーク放電・グロー放電などを用いる発光分光分析を指します。
島津の発光分光分析装置は,アルゴンガス雰囲気でスパーク放電を行い,スパークパルスからの発光を統計的に処理して,測定の再現性(精度)を向上させる方式(PDA測光式:Pulse Distribution Analysis)を採っています。発光分光分析装置は,固体金属試料の元素組成を短時間で測定できることから,製鉄やアルミニウム冶金プロセスの管理用として無くてはならないものになっています。

 


 

下記は、大阪府立産業技術総合研究所 資料から部分引用したものです。
 https://www.orist.jp/content/files/technicalsheet/1007.PDF

発光分光分析法とは?

原子に何らかの方法でエネルギーを与えると、殻外電子があるエネルギー準位からそれより高い準位に上がります。これを励起といいます。この励起状態から再び下のエネルギー準位に戻る際、スペクトル線(波長λの光)を放射します。これを発光といいます。以上を模式的に表したものを図 1 に示します。この発光スペクトルは原子に固有の波長を示すことから、この光を分光器で選別して計測することによって、試料の構成元素の種類と量を知ることができます。

定量分析については、あらかじめ含有量既知の標準試料によるスペクトル線の強度を求めておき、これと未知試料のスペクトル線強度を比較することによって含有量が求められます。

スパーク放電発光分光分析法

この分析法は、分析試料を電極の一端としてスパーク放電を起こさせ、それで得られる発光スペクトルを解析することによって定量分析を行う方法です。当所には外観を図 2に示す(株)島津製作所製の発光分析装置OES-5014を設置しています。

この装置はφ14より大きい平面を有する試料であれば試料中の多くの元素を同時にしかも迅速に微量成分から高含有成分まで分析できる大きな特徴を持っています。

ところで、スパーク放電発光分光分析法で得られる分析情報は表面から 10μ m程度であるため、表面に汚れ、めっき層、浸炭層、脱炭層などがあると誤った分析値となります。このような場合は表面層を除去する前処理が必要となります。また、分析誤差を招かないために分析試料と合致した標準試料の採用と適正な分析手順が重要です。

当所で組成分析を行っている金属材料として、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼を代表とする高合金鋼、鋳鉄、アルミニウム合金、亜鉛合金などが挙げられます。特に日本工業規格(JIS)に該当する材質のものについては、その多くを網羅しています。

例として、白銑化鋳鉄中のマグネシウムの定量分析について紹介します。7 個の標準試料を用いてマグネシウムの検量線を作成した結果を図3に示します。横軸がマグネシウムの含有量、縦軸が発光スペクトルの強度を表します。発光スペクトルの強度はマグネシウム量と比例にあることがわかります。例えば、ここで分析試料の発光スペクトルの強度が 60 と得られれば、図 3 の直線から読み取って分析試料のマグネシウム量は0.043%であることがわかります。このような操作はほとんど付属のコンピューターによって行われます。

 

 ICP発光分析装置(液体用)

  • 高速測定(定性72元素約3分)
  • 世界最高分解能(0.0045nm)+真空分光器で波長選択性に優れる(160~850nm)
  • 微量~高濃度測定が可能
  • 有機溶媒・ふっ酸・飽和塩水など全ての溶媒の導入が可能

原理

  • プラズマの中に霧状にした液体試料を導入して励起による光及びイオン化されたイオンを測定し無機元素の定性・定量を行います。
  • ICP発光分析装置
     

回折格子(グレーティング)とは

 島津の解説はかなり難解なので、リンクの紹介にとどめます。
 https://www.shimadzu.co.jp/products/opt/guide/gratings_what.html