従来、銑鉄鋳物は割れやすく強度が弱いとされてきましたが、球状黒鉛鋳鉄ではそのような弱点が解消し、高い強度と鋳造性と多くの特徴があり、重量物を運搬する道路のマンホール蓋や高圧がかかる油圧機器部品などにも採用されています。
ここでは、日之出水道機器のHPからその特性を引用でご紹介します。
球状黒鉛鋳鉄の特性
https://hinodesuido.co.jp/Technology/fcd.html
球状黒鉛鋳鉄(FCD)は、引張り強さ・伸びなどが優れ、片状黒鉛鋳鉄(FC)よりも数倍の強度を持ち、靭性(粘り強さ)が優れていることから、自動車部品や産業機械などに数多く採用されています。
強度/延性/じん性
鋳鉄に対する一般的なイメージは「脆くて割れやすい」というものだと思いますが、これは昔から鉄瓶(びん)などの家庭用品や色々な器具類に使用されてきた、薄肉の白鋳鉄や片状黒鉛鋳鉄(FC)に対するイメージが強いからだと思います。
球状黒鉛鋳鉄(FCD)は、十分な強度、延性、じん性を有しており、大きな負荷がかかる部材にも十分耐えられる材料です。
FCDとFCの荷重・変位曲線
振動減衰能
球状黒鉛鋳鉄(FCD)は、伝わってきた振動が黒鉛の境界で摩擦運動を起こし、熱エネルギーに転化し消失するため、鋳鋼と比較し、振動・騒音を低減する特性があります。
FCDと鋳鋼の振動減衰能の比較
鋳造性
球状黒鉛鋳鉄(FCD)は、鋳鋼と比較し凝固収縮が少ないため、引け巣や割れなどの内部欠陥を抑制することができます。
これは、黒鉛が晶出する時に一旦膨張するので、結果的に体積の収縮が少なくなるためです。
FCDと鋳鋼の温度変化に伴う体積の変化
切削性
球状黒鉛鋳鉄(FCD)は、黒鉛が潤滑剤の働きをする事で、刃物の滑りを良くします。さらに、黒鉛がチップブレーカーとして働き、切りくずが細かく破砕されるため、被切削抵抗値が小さくなります。そのため鋳鋼と比較すると、切削工具の寿命が長くなり加工コストが安価になります。
FCDと鋳鋼の切削性の比較
耐候性
球状黒鉛鋳鉄(FCD)は、安定した腐食生成物層を生成し表面を保護するため、一般構造用圧延鋼材(SS400)に比べて大気中の耐候性に優れています。
FCDとSS400の耐候性の比較
耐摩耗性
球状黒鉛鋳鉄(FCD)は、黒鉛の潤滑効果により、摺動部品との摩擦抵抗が減り、鋳鋼と比較し、凝着摩耗が低減します。
FCDと鋳鋼の摩耗性の比較
JIS規格
球状黒鉛鋳鉄(FCD)は、JISに規定されており、用途に応じて使い分けができます。
当社開発材 ヒノダクタイル鋳鉄
ヒノダクタイル鋳鉄球状黒鉛鋳鉄(FCD)は一般に、強度を高めると延性(伸び)が低下しますが、当社開発材ヒノダクタイル鋳鉄(HDシリーズ・HDSシリーズ)は化学成分の調整、熱処理等により、JIS規格材と比較して優れた強度・延性バランスを有しています。構造物の要求性能(軽量化、耐疲労特性、靭性など)に応じて、最適な材料を提供できます。
HDシリーズ、HDSシリーズとJIS規格材の比較