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地球の成り立ちから、現在の地球までの幾多の変遷を知る事で、さまざまな鉱物や気象・鉱山・資源の成り立ちや、地震の原因を含めて理解できるようになる。

地球内部660kmの境界形成は “ガーネット” が支配 「地球のマントルは均質」 15年の研究が解き明かした「連動反応」のメカニズム

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2724206?display=1

地球内部660kmの境界形成は "ガーネット" が支配 「地球のマントルは均質」 15年の研究が解き明かした「連動反応」のメカニズム|TBS NEWS DIG

RSK山陽放送

国内小林章子

地球の深さ660km付近には、地震波の速度が急変する「660km不連続面」と呼ばれる境界が存在します。

この境界は上部マントルと下部マントルを分ける重要な境界であり、沈み込むプレートや地球深部から上昇する物質が停滞するなど、地球内部の構造や進化を理解するうえで欠かせない場所とされています。

しかし、なぜこの境界がこれほど複雑な凹凸構造を持つのか。

その謎に、岡山大学惑星物質研究所の石井貴之准教授と学習院大学の糀谷浩教授、赤荻正樹名誉教授らの共同研究チームが、ついに明確な答えを提示しました。

長年の「謎」だった660 km不連続面の凹凸

近年の地震観測によって、660km不連続面は地域によって大きく上下にゆがんでいることが明らかになっています。

たとえば、トンガやマリアナのようなプレートの沈み込み帯の下では深く陥没し、ハワイやアイスランドのようなホットスポットの下では浅く持ち上がる場所と深く陥没している場所が混在するという、特徴的な構造が確認されています。

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従来、この境界はマントルの主要鉱物であるリングウッダイト※が高圧で分解する反応(ポストスピネル転移)によって形成されると考えられてきました。

しかし、この反応だけでは、観測されるような大きな深さの変化や地域差を十分に説明することができませんでした。

※リングウッダイト:地球のマントル遷移層(深さ約525〜660 km)に多く存在すると考えられている高圧相の鉱物。

ガーネットに着目した「超精密比較実験」

研究チームが新たに注目したのは、マントルでリングウッダイトに次いで多く存在する鉱物、ガーネッです。

研究チームは、地球内部の極限環境を人工的に再現できる「川井型マルチアンビル高圧発生装置」を活用し、独自に開発した高温高圧下での超精密比較実験を実施しました。

この装置は、外側に配置された複数の硬いアンビル(押し金具)が中心の試料を三次元的に均等に押し込むことで、地球内部の数万〜数十万気圧に相当する圧力をつくり出します。

さらに高圧力セル内部に設置した電気炉で加熱することで、660 km不連続面周辺の温度である1600℃を超える高温条件も同時に実現できます。岡山大学惑星物質研究所は、この装置を用いた研究において世界でも屈指の技術力を有しています。

実験では、リングウッダイトとガーネットが共存するという、より現実的な条件を設定しました。これまでの研究では両者の反応は独立したものとして扱われてきましたが、今回の実験によってその前提が覆されました。

発見された「連動反応」という新メカニズム

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実験の結果、明らかになったのは、ガーネットとリングウッダイトの高圧相転移※密接に結びついた「連動反応」として進行しているという事実です。

具体的には、まずガーネットが高圧下で下部マントルの主要鉱物であるブリッジマナイトへと変化する(ポストガーネット転移)。

その際に生じる化学成分の変化が、リングウッダイトの分解反応を誘発するというメカニズムが確認されました。

つまり、660 km不連続面の形成を「支配」しているのは、従来考えられていたリングウッダイトの単独の分解ではなく、ガーネットの相転移が引き金となって起こる連動した反応だったのです。

ここでいう「高圧相転移」とは、結晶を構成する原子が圧力・温度の変化によって全く異なる配列へと変化する現象を指します。

地球を構成する主要な鉱物は、地球深部の深さに相当する圧力でさまざまな相転移を起こし、より高密度の鉱物(高圧鉱物)へと変化します。

※高圧相転移:結晶を構成する原子は規則正しく配列していますが、圧力・温度が変化すると、全く違った配列に変化することがある。これを相転移と言う。地球を構成する主要な鉱物は、地球深部の深さに相当する圧力で様々な相転移を起こし、より高密度の鉱物(高圧鉱物)になる。

あらゆる地域の凹凸構造を「一貫して」説明できる

今回の成果のもう一つの重要な点は、これまで謎とされてきた地域ごとの凹凸構造を統一的に説明できることです。

今回得られた結果とこれまで蓄積されてきたデータを組み合わせることで、660 km不連続面の凹凸は、地域ごとの温度差によってガーネットの振る舞いが変化することで説明できることが判明しました。

冷たい沈み込み帯、温かいホットプリューム、平均的なマントル温度のいずれの条件においても、観測される660 km不連続面の凹凸を一貫して再現できることが示されたのです。

これは、従来の単純な化学組成モデルでは説明が困難だった観測結果を統一的に理解できることを意味し、660km不連続面の成因に関する理解の大きな前進となります。

「均質なパイロライト」としての地球マントル

さらに、この研究成果は地球マントルの組成論にも重要な示唆を与えています。

今回発見されたガーネットとリングウッダイトの連動反応は、マントルが「パイロライト※と呼ばれる均質な組成を持つ場合にのみ起こります。

パイロライトとは、地球マントルの化学組成を示す代表的なモデル岩石であり、オリビン、輝石、ガーネットなどの割合をもとにしたモデルで、地球内部の物質循環やマントル対流を理解するための基準として広く使われています。

複数の岩石の「寄せ集め」で構成されたマントルでは、この連動反応は起こりません。つまり、今回の成果は地球のマントルが「さまざまな岩石の寄せ集め」ではなく、均質なパイロライト組成で構成されている可能性が高いことを強く支持するものでもあります。

※パイロライト(pyrolite):地球のマントルがどのような化学組成をしているかを示す「代表的な モデル岩石」。地球の内部は直接見ることができないため、地震波の伝わり方や火山噴出物の化学組成、隕石の成分など、さまざまな情報を組み合わせて推定されている。その結果、マントルは特定の岩石が混ざり合った複雑な寄せ集めなのか、パイロライトと呼ばれる“平均的で均質な組成”を持つのか、議論が続いている。 パイロライトは、上部マントルに多く含まれる鉱物(オリビン、輝石、ガーネットなど)の割合をもとにしたモデルで、地球内部の物質循環やマントル対流を理解するための基準として広く使われている。今回の研究で明らかになったガーネットとリングウッダイトの連動反応は、このパイロライト組成のマントルで起こるが、複数の岩石の寄せ集めで構成された岩石では起こらない。 この違いが、地球の内部が“均質なパイロライト”である可能性を強く支持している。

地球科学の基盤を前進させる社会的意義

660 km不連続面の仕組みが明らかになったことで、地震や火山活動を生み出す地球内部の物質や熱の流れを、これまでより正確に理解できるようになります。

またマントルの組成や地球の進化モデルの見直しにもつながり、地球科学全体の基盤を大きく前進させる成果といえます。

研究を主導した石井准教授は、今回の成果についてこう述べています。

「地球深部の研究は、地球がどのように生まれ、どのように現在の姿になったのか、そして地震や火山活動がどのように起きるのかを理解するための学問です。

その視点から今回の成果を説明すると、地球の深いところに広がるマントル(地下約2900 kmまで)が、『パイロライト』と呼ばれるほぼ同じ成分の岩石でできていることが明らかになりました。

これまでは、沈み込んだプレート由来のさまざまな岩石が混ざっている可能性も指摘されており、議論が続いていました。

マントルが均質だとわかったことで、地震の揺れ方から地下の構造を読み解く際に、より正確な判断ができるようになります。

材料の情報がそろっているため、地域的な地震波の伝わり方の違いを『温度』や『そこにある材料』の違いとして理解しやすくなるからです。

また、私が研究している660kmの境界がどのように生まれるのかといった、地球内部の構造や進化の姿も、これまでよりはっきり描けるようになります。
このような知見は、将来的に地震や火山活動の成因を考える上でも、重要な基礎知識となります」

15年間の成果

「今回の成果は、学生時代から抱いていた疑問に15年間取り組んできた研究の集大成です。長い年月をかけて積み上げてきたものが形になり、大きな達成感があります。

この間に、地球深部科学は大きく発展し、当時はその重要性を過小評価していた疑問が今では重要なテーマとして注目されるようになりました。

科学は常に前進し、積み重ね、挑戦し続けるほど新しい景色が見えてくる、それが研究の醍醐味だと感じています。

学生や若い研究者の皆さんには、ぜひ”自分の疑問”を大切にしてほしいです。小さな疑問でも向き合い続ければ、世界の見方を変える発見につながることがあります。

15年という長い年月をかけて向き合い続けた小さな疑問が、地球内部の謎を解き明かす世界的な発見へと結実しました。科学の積み重ねが持つ力を、今回の研究は改めて示しています」

この研究成果は2025年5月25日、英国の地球科学雑誌「Nature Communications」に掲載されました。

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