鋳造の工場には、大量の電気を力や熱源として使う機器と、電波や情報として使う機器があります。
IoTやITで、工場の情報を伝えるときは、有線の電線・光通信・電磁波のWifiを利用し、無線通信では電波(電磁波)が使われ、テレビでは地上波も衛星放送も電波を利用。
電気を力や熱源として利用する場合は、電気は電線で伝わります。
しかし、鉄や金属を溶解する電気炉では、炉体にまかれたコイルを流れる交流電力が磁界を介して誘導起電力を発生させ、炉内の材料内に発生する誘導電流が材料を溶かしてくれます。
ただ、不思議なことにコイルの外側の金属(磁束を拡散させないための鉄板(継鉄))も溶かしてしまいそうですが、そうしたことは起こりません。
図は、神戸製鋼の銅溶解炉の解説図 https://www.kobelco.co.jp/advanced-materials/technical/copper/1174591_17318.html
から部分引用したもの。通電コイルが炉体を巻いており、その内側に冷却水が流れるコイルがあり、通電コイルの外側には磁束を閉じ込める分厚い継鉄があり、炉内側に耐火物がライニングされ、その中に溶かす材料が投入され、電磁誘導で発生した電流で溶解します。
電気回路では、電線を電圧が伝わる速さは光の速度で秒速30万キロメートル!だそうです。物質中を電気が流れるときは、電子の移動を邪魔するものが多いので電流は遅くなります。電気が流れやすい銅線や鉄などの金属での電圧が伝わる速度がそんなに速いとは驚きです。
小学校の理科で学ぶ電気は電池と直流で、電球を点灯させるもの、抵抗がその代表ですが、中学や高校では交流と電磁誘導や磁界から電流が受ける力も学びます。
交流では、発熱する抵抗に加えて、コイルやコンデンサーがでてきます。
不思議なことに、交流ではコイルの電線には電気が流れるのに発熱しないし、コンデンサーは絶縁されている2枚の板なのに交流電流が流れる。
それを理解するためには、右手の法則が登場し、中学までの数学などでは理解不能な現象だと、理科が嫌われる原因にも(私の場合)。
大学に入り、複素数やベクトル演算や空間の面積分・線積分を学ぶと、その形式的な利用で電磁気の現象がスパッと簡潔に表現できてしまうのだと。
電磁波:磁界と電界の位相と進む方向
ファラデーが発見した「磁界の変化が電流を作る」の関係を整理して電界と磁界の4つの方程式(マックスウェル方程式)に整理したマックスウェルは、その数学的帰結として、電界と磁界が波を作り、計算された速度はそのころ計測されていた光速とほぼ等しいことから、光は電磁波だと予言し、後にその予言が正しいことが実証されました。
時間と共に変化する電界と磁界は、相互に相手を作りあい、電磁波を作る。
電磁波は電界と磁界が、同相で互いに直角の横波(進行方向成分を持たない)で、磁界と電界に直角な方向に光の速度で伝播する。
エネルギークラブのHP http://www.aomori-energyclub.com/club/club-12.html から引用紹介
交流電気回路:コイル編 電流は電圧より遅れる
コイルでは、コイル内を流れる電流と電流が作る磁界は同相で、磁界の時間変化が作る誘導起電力は磁界・電流とは位相が90度( -d(sin)/dt → - cos )遅れ、そのために電圧と電流は仕事をせず(氷の上を滑るスケートでは重力の方向と移動する方向が90度で重力は運動に影響しない・直角の場合はベクトルの内積でゼロになる)電力を消耗しない。誘導起電力によって、コイルの両端には交流の電源電圧が発生する。
マックスウェル方程式・ファラデーの法則 rot E = ー dB/dt
磁束の変化で誘導され発生する電圧は磁束の変化を妨げる方向に発生する。電流が磁界と磁束を同相で造るので、電流をsintとするとその時間微分のマイナスの-cos=sin(tーπ/2)が誘導電圧になる。
公益社団法人日本電気技術者協会のインダクタンス物語 から部分引用で、ご紹介。図中の イ や ロ の右側の矢印をクリックすると、電流変化に対応する誘導起電力が現れます。
https://jeea.or.jp/course/contents/01145/
(1) 自己インダクタンスに流す電流によってどんな起電力が誘導されるが調べてみよう。
第3図に示すL[H]のコイルにおいて、グラフに示す電流i1、i2を流すと、誘導起電力eは正方向を図のように電流と同じ方向(a端子からb端子へ向かう方向)に選べば、eはどんなグラフになるだろうか。
第3図 Lにはどんな起電力が誘導されるか?
① 図中の再生ボタンイを押して、電流i1によって起電力(e1)がどのように誘導されるか観察してみよう。観察が終了したら戻りボタンハを押して初期状態に戻す。
② 今度は電流i2について、再生ボタンロを押して、①と同様な観察をする。
観察の結果、起電力は第4図のように誘導されたことが確認できる。
第4図 実験①②の誘導起電力波形
コイルに流れる電流が増え続けている間は、電流増加を妨げる方向の起電力がマイナス電圧として発生します。
反対に、電流が減少し続けてる間は、減少させない方向の起電力が発生します。
交流の場合の解説図を下記に引用でご紹介
高校物理をあきらめる前に 交流とコイル https://www.yukimura-physics.com/entry/elemag34
交流電気回路:コンデンサー 電流は電圧より先行
コンデンサーは、絶縁体で電気を通さないけれど、中に電気が溜まったり減ったりすることで前後の回路には電流が流れます。交流回路は、抵抗・コイル・コンデンサーを組み合わせて作られています。特に、通信では高い周波数の電波を扱う交流回路なので、多く使われスマホには500個、パソコン1000個、電気自動車では5000個も使われてると。
最近の状況は、こちら(TDKの積層セラミックス・チップ使うマイクロコンデンサ解説記事)。
コンデンサーの原理的解説を 日本電気技術者協会 コンデンサ物語 (2) https://juken-philo.com/kouryu-condenser/ から引用でご紹介。
コンデンサーの電源に電圧が発生すると、その電圧は光速で伝わり、電流が流れて電荷が溜まりコンデンサに電圧が発生します。
コンデンサー部分では、両端電圧と 溜まった電荷qには、 q=Cv の関係があります。
また 流れる電流 I と 電荷q には、 I=dq/dt の関係があります(電荷の時間変化が電流だ)。
この2つの関係が電源電圧とコンデンサに流れる電流の関係式となります。
解説では、電源電圧が正弦波 sinωt だと 流れる電流は その時間微分で cosωt = sin(ωt+π/2) で位相が90度進むことを説明しています。
コンデンサーの前後の電線は抵抗がゼロなので電圧がちょっとでもかかると大量の電流が流れることを頭に入れて説明を読んでください。
以下引用始め
第1図(a)のように、静電容量C のコンデンサに電圧v が印加されている時、v が(b)図のように時間と共に変化しているとすれば、時刻t1において、時間がt1からt2になるまでの間に、電圧がv1からv2に変化します。
したがって、図のように、t2−t1= Δt、v2−v1=Δv、とすれば、この間における電極の電荷変化Δq は、
Δq=Cv2−Cv1=C(v2−v1)=CΔv
となるので、この間に流れる電流iは、その正方向を(a)図に示すように、印加電圧と同方向に選ぶと、次式となります。
(1)
したがって、瞬時の電流について考えれば、
(2)
となります。この結果、
コンデンサに流れる電流は、一般的に(2)式をもとに計算すればよいことになります。
第2図(a)のように、正弦波交流電圧が加えられている場合の電流iは、(2)式を使って、
(3)
注: (4)
となります。
したがって、(b)図のiに示すように、コンデンサでは、印加されている正弦波交流電圧より90°位相の進んだ正弦波電流が流れます。
第3図において、C に流れる電流の意味をジックリ理解しておきましょう。
同図において、区間Bは時間に対して電圧が増加している状態、区間Aは逆に減少している状態なので、電流は、区間Bでは正方向(第2図(a)の矢印方向)に、区間Aでは矢印と反対の方向に流れます。
電圧と電流との量的な関係は、(3)式の㈭から 、の関係にあるので、電流の実効値をIとすれば、
(5)
または、 (6)
の関係にあります。
したがって、電流の大きさを決める要素は、で、これを容量リアクタンスXCと呼んでいます。
引用終わり
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勉強したい場合は、いくらでもネットで教えてもらえます。
電線や金属など、電気の導体ってすごいですね。
さらに半導体になると、ある時は電気を流し、ある時は電気を絶縁し、それを組み合わせると電流のスイッチとして交流を直流に、直流から交流を作り出す働きをする。
銅線に交流電源をつなぐと、外には電気は流れ出ないけど、空気中に電波(電磁波)を発信できるようになる。