日経Mobility記事 重希土類フリーのEVローター、体積半分に ニッパツなど

部品・素材 

ニッパツと大同特殊鋼は電気自動車(EV)用駆動モーターのローター(回転子)を共同開発した。重希土類を使わない高機能磁石をローターの外周に固定する方式により、同社従来品に比べ同程度の出力で体積を半分にできた。

 

大同特殊鋼・ニッパツ発表記事

https://www.daido.co.jp/info/2026/260707_techno.html

電動車駆動用モーターのニーズ多様化に貢献する次世代モーター向けローターをニッパツと共同開発
〜熱間加工磁石の形状自由度で新しい価値を共創〜

大同特殊鋼株式会社(本社:名古屋市、代表取締役社長:清水哲也)は、重希土類フリー熱間加工磁石の特長を生かし、ニッパツ(日本発条株式会社 本社:横浜市、代表取締役社長:上村和久)と共同で、電動車*1の駆動用モーターにおける「高出力化」と「リサイクル性向上」を実現する次世代モーター向けローターを開発しました(図 1、2)。

本開発では、一般的に用いられる焼結磁石では実現困難な、当社の重希土類フリー熱間加工磁石ならではの形状および磁化方向制御の自由度に加え、磁石を使用形状に近い形で成形できる独自技術を生かすことで、従来構造では難しかったローター設計の自由度を拡張しています。今後、2026年5月頃よりプロモーションを開始し、早期の実用化をめざします。

本開発品は、2026年5月27日から29日までパシフィコ横浜ならびに2026年6月17日から19日までAichi Sky Expoで開催される「人とくるまのテクノロジー展 2026」のニッパツのブースで初めて展示します。

 

図 1.SPM ローター(カットモデル)
(画像提供:ニッパツ)

図 2.ばね固定 IPM ローター
(画像提供:ニッパツ)

図 3.熱間加工磁石(ネットシェイプ磁石)

 

図 4.熱間加工磁石(溝加工付与磁石)

 

 

Geminiさん、この記事、構造図で解説して。  

ニッパツ(日本発条)と大同特殊鋼による共同開発のポイントは、「磁石の配置場所の変更(IPMからSPMへ)」「重希土類フリー(ネオジム磁石の改良)」の2点にあります。

この技術革新の凄さと構造の違いを、図を交えてわかりやすく解説します。

モーター内部の構造比較(従来型 vs 新開発)

電気自動車(EV)用モーターは、外側の固定された部品(ステーター)と、内側で回転する部品(ローター)で構成されています。今回の開発は、このローター(回転子)の構造を劇的に変えたものです。

参考:モーター構造図  下の図の左側が今回の新開発(SPM)に近い構造、右側が従来の主流(IPM)の構造です。

モーターの構造比較(左:表面磁石型 / 右:埋込磁石型). 出典: Nbaem
現物写真例掲載ページ

https://nbaem.com/products/magnetic-motor-assembly/

構造図から見る3つのブレイクスルー

1. 磁石の位置:中から「外周(表面)」へ

  • 従来(右図:IPM / 埋込磁石型): ローター(Rotor)の鉄心の「内部」に磁石(Permanent magnet)を埋め込んでいました。高速回転時の遠心力で磁石が飛び出さない利点がありますが、磁力が鉄心を通ることで少し弱まり、効率を高めるにはローター自体を大きくする必要がありました。
  • 新開発(左図:SPM / 表面磁石型): ローターの「外周(表面)」に磁石を直接貼り付ける方式です。磁石と外側のステーター(Stator)が直接向き合うため、磁力を100%効率よく活かせます。これが「同程度の出力で体積を半分にできた」最大の理由です。

2. ニッパツの技術:高速回転でも剥がれないカバー

表面に磁石を貼る(SPM)方式は効率が良い反面、「EVのような超高速回転(毎分1万回転以上)になると、遠心力で磁石が吹き飛んでしまう」という致命的な弱点があり、これまではEVに採用できませんでした。 ニッパツは、ばね製造などで培った高強度な金属製カバー(維持リング)で磁石の外周をギチギチに締め付ける技術を開発し、この問題をクリアしました。

3. 大同特殊鋼の技術:重希土類フリー磁石

通常、モーターが高温になると磁石は磁力を失ってしまいます(熱減磁)。これを防ぐために従来は「ジスプロシウム(Dy)」や「テルビウム(Tb)」といった希少な重希土類(ヘビー・レアアース)を添加していました。しかし、これらは中国一国への依存度が高く、調達リスクがあります。 大同特殊鋼は、独自の製造技術(熱間塑性加工技術)を用いて、重希土類を一切使わなくても高温に耐えられる高機能なネオジム磁石(熱間加工磁石)を開発し、これを供給しています。

まとめ:何がそんなに凄いの?

項目 従来のEV用ローター(IPM型)
Internal Permanent Magnet
新開発のローター(SPM型)
Surface Permanent Magnet
磁石の配置 ローターの内部に埋め込み ローターの外周(表面)に固定
磁石の素材 重希土類(中国依存リスクあり) 重希土類フリー(調達が安定)
サイズ(体積) 標準 従来の半分(50%削減)

磁石を外側に持ってきたことで無駄なくパワーを取り出せるようになり、モーターそのものを劇的に小型・軽量化(体積半分)できるようになりました。車体が軽くなればEVの航続距離が伸び、スペースにも余裕が生まれるため、次世代EVの競争力を一気に高める画期的な共同開発です。

この「SPM方式」がこれまでEVで実用化しにくかった理由をより詳しく知りたいですか?

電線はどこに?交流モーター?それとも直流モーター?、回転力はどうして生まれるの?

ニッパツと大同特殊鋼の構造図を見ていくと、「あれ?磁石はあるけど電線(コイル)はどこにあるの?」という疑問が湧きますよね。

まさにそこが、このモーターが回る核心部分です。電線の位置、モーターの種類、そして回転力が生まれる仕組みを、専門的な視点を交えつつわかりやすく紐解いていきましょう。

1. 電線(コイル)はどこにある?

結論から言うと、電線は「外側の固定されている側(ステーター)」にびっしりと巻き付けられています。

先ほどの構造図をもう一度思い浮かべてみてください。

  • 内側の回る部分(ローター): 磁石だけが配置されています(今回の開発品は表面に磁石があります)。
  • 外側の固定部分(ステーター): ギザギザした鉄心(ティース)があり、そこに銅線(電線)が何重にも巻かれてコイルになっています。

回る中心部には電線を繋がず、外側から電気を流す構造にすることで、断線や摩耗のリスクを無くしています。

2. 交流モーター?それとも直流モーター?

EVの駆動モーターに使われているのは、「交流モーター」です。 専門的には永久磁石同期モーター(PMSM: Permanent Magnet Synchronous Motor)と呼ばれます。

バッテリー(直流)から出た電気を、インバータという変換器を使って「3相交流(U相・V相・W相)」という、タイミングが少しずつズレた3波の交流電流に変えて外側のコイルに流しています。

3. 回転力はどうして生まれるの?(フレミングではなく、磁石の引き合い)

「電線と磁石で回転力が生まれる」と聞くと、学校で習った「フレミングの左手の法則(電磁力)」を思い浮かべるかもしれません。しかし、この永久磁石同期モーターの回転力の主役は、もっと直感的な「磁石同士が引き合い、反発する力(吸引力と反発力)」です。

回転が生まれるプロセスは、以下のステップで行われています。

① 外側に「回転する磁界」を作る

外側のコイル(3相交流)に、タイミングをずらしながら順番に電流を流すと、外側の鉄心が「N極 → S極 → N極…」と、まるで磁石がぐるぐる回っているかのような状態(回転磁界)になります。実際に金属が回っているのではなく、電気的に磁極の位置を移動させているのです。

② 内側の磁石がそれを追いかける

すると、内側(ローター)にある強力な永久磁石が、外側の動く磁極に反応します。

  • 外側の「N極」が移動すると、内側の「S極」が引き寄せられて追いかけます。
  • 外側の「S極」が近づくと、内側の「S極」が反発して押し出されます。

F∝B⋅H

外側の磁界の回転スピード(同期速度)に完全に同期して、内側のローターが強烈な力で引きずられるように回り続けます。

💡 今回の新開発(SPM)が強い理由

従来の「埋込磁石型(IPM)」は、磁石が鉄の奥深くに隠れていたため、外側の回転磁界との間に距離があり、磁力のロスがありました。

今回の「表面磁石型(SPM)」は、強力な重希土類フリー磁石が最表面にむき出し(カバーはありますが)になっています。そのため、外側の回転磁界と内側の磁石が最短距離でダイレクトに引き合うことができ、**「同じ電流(電線に流す電気)でも、より強いトルク(回転力)」**を生み出せるため、体積を半分にまで絞ることができたのです。