日本は江戸時代は、世界有数の金銀銅産出国だったという。

その精錬法を調べてみた。Geminiによる調査を以下紹介する。
現代は、日本は都市鉱山からの鉄やレアアースの回収(都市鉱山)が重要な意義を持つようになった。
このための知識は、鋳造技術者にとっても参考に。

住友グループの業の祖とされる**蘇我理右衛門(そがりうえもん)**が、京都で銅細工・精錬業を営む「泉屋(いずみや)」を創業したのが始まりです。

  • 技術のブレイクスルー: 1591年(天正19年)頃、理右衛門は堺の商人から、明(中国)の技術をベースとした**「南蛮吹き(なんばんぶき)」**を伝授されました。

  • 灰吹き法の応用: 前述の通り、南蛮吹きとは「銅から銀を抽出する」技術で**「灰吹き法」**を使って純銀を取り出します。

  • 「銅銀分離」の革命: それまで日本の銅に含まれる銀は、分離できずにそのまま「不純物」として銅の中に眠っていました。住友の祖がこの技術を確立したことで、銅を売りつつ、おまけで銀も手に入るという莫大な利益を生むビジネスモデルが完成したのです。

記載の内容は、現場技術の参考になる事がたくさんありますよ。

Gemini: 金銀銅の精錬で分別する製造法を解説して

灰吹き法や日本の銀重視の分別や、銅器に必要な銅の分離技術、江戸時代と現代とそれぞれに。

Gemini の回答

金、銀、銅は自然界で混ざり合って産出されることが多く、これらを純度高く分ける技術は、日本の経済史や工業史において極めて重要な役割を果たしてきました。江戸時代の伝統技術から現代のハイテク精錬まで、その進化を紐別いて解説します。


1. 江戸時代の精錬技術:分別の要「灰吹き法」と「南蛮吹き」

江戸時代初期、日本は世界有数の銀・銅産出国でした。当時は、まず「金銀が混ざった銅(粗銅)」を作り、そこから貴金属を抽出するプロセスが主流でした。

灰吹き法(はいふきほう)

金銀を含む鉛を加熱し、貴金属だけを取り出す技術です。

  • 原理: 貴金属(金・銀)は融点が高く酸化しにくいが、鉛は327度と融点が極めて低いのに金銀を溶かし込む。そして鉛が高温の空気中では酸化しやすく、酸化すると金銀を溶解できなくなり金銀が晶出してくることを利用します。

  • 工程: 金銀を溶かし込んだ327度前後と低温の溶融鉛を「灰(骨灰など)」の上で熱し、空気を吹き込みます。溶融鉛は酸化して酸化鉛(リサージ融点888°)となりその温度以上に過熱すると融解して灰に吸収されますが、金属鉛がなくなって晶出した金銀は酸化せず美しい粒として残ります。

  • 灰吹き法や現代の精錬において、鉛は「運び屋(キャリアー)」の役割を担っています。

    金・銀・銅と鉛の関係と、そのリサイクル事情


    1. 金・銀・銅と鉛の「親和性」

    鉛は他の金属を自分の中に溶かし込む能力が非常に高く、金銀銅鉛が「融点降下」で劇的に低温で溶融することを利用。


    各金属の単体での融点

    一酸化鉛 PbO888高温で酸化した一酸化鉛の融点は金銀銅より少し低い

    金属名 元素記号 融点(℃) 特徴
    Au 1,064 非常に安定。酸化しない。
    Ag 962 金属中で最高の熱・電気伝導率。
    Cu 1,085 この4つの中で最も融点が高い。
    Pb 327 融点が圧倒的に低い
    鉛ー銀 Pb-Ag 304 銀は、低温で溶けた鉛には溶け込む(融点降下)
    鉛-金 Pb-Au 215 金は、低温で溶けた鉛には溶け込む(融点降下)
    鉛ー銅 Pb-Cu 900-1000以上 銅は、低温で溶けた鉛には溶けにくい
    一酸化鉛 PbO 888 鉛は酸化すると融点上昇するが金銀銅より低い
    • 金・銀と鉛(大の仲良し): 金や銀は、溶けた鉛の中に溶け込み(融点降下)「貴鉛(きえん)」と呼びます。

    • 銅と鉛(適度な距離感): 銅も鉛に溶けますが、金や銀ほどではありません。伝統的な手法(南蛮吹きなど)では、あえて銅と鉛を混ぜて熱し、ゆっくり冷やすことで「金銀を含んだ鉛」だけを分離させる技術もありました。

    • 酸化のしやすさ(決定的な違い): ここが分離の肝です。

      • 鉛: 低温で溶けると金銀を溶かしいれる。空気中で加熱すると酸化して「酸化鉛」になり、金属ではなくなる
          溶解した鉛に溶けていた金や銀は、鉛が酸化し金属鉛でなくなるので晶出し固体の金や銀に戻る。

      • 金・銀: 加熱しても酸化せず、再び晶出し金銀に戻る。

  • この「溶け合いやすさ」と「酸化しやすさの差」を利用し、鉛を使って金銀を抽出できる。


    2. 鉛リサイクル

    鉛は、昔も今もリサイクルされます。

    伝統的な方法(灰吹き法の場合)

    灰の中に染み込んだ「酸化鉛(リサージ)」を鉛に戻す

    1. 還元: 酸化鉛が染み込んだ灰を、炭と一緒に再び炉に入れて強熱します。

    2. 復活: 炭(炭素)が酸化鉛から酸素を奪い(還元反応)、再び「金属の鉛」に戻る。

    3. 再利用: 復活した鉛を、また次の精錬の「運び屋」として使います。

南蛮吹き(なんばんぶき)

「銅」から「銀」を効率よく引き出す日本独自の発展形です。

  • 背景: 当時の日本の銅には銀が混ざっていましたが、これを分けるのが困難でした。

灰吹き法において「灰」が果たした役割は、単なる土台ではなく、**「酸化鉛を選択的に吸収するフィルター(スポンジ)」**という極めて重要な化学的・物理的役割がありました。

化学成分と物理的性質の観点から解説します。


1. 化学的な役割:酸化鉛(PbO)との親和性

灰吹き法で使われる灰(主に骨灰や植物の灰)の主成分は、リン酸カルシウム Ca3(PO4)2 や 炭酸カルシウム CaCO3 です。

  • 酸化鉛の融点: 鉛が空気中の酸素と結びついてできる「酸化鉛(リサージ)」は、約 888°C で液体になります。

  • 浸透作用: 液体になった酸化鉛は、金や銀とは混ざり合わず、灰の粒子との化学的な親和性が高いため、灰の隙間にどんどん染み込んでいきます。

  • 貴金属の残留: 一方、金や銀は酸化されず、液体の金属状態(表面張力が高い状態)を維持します。これらは灰に染み込むことができないため、灰の表面に「貴金属のボタン」として取り残されます。


2. なぜ「骨灰(こっぱい)」が最高だったのか?

江戸時代、最も優れた灰とされたのは、獣の骨を焼いて作った**「骨灰」**でした。

  • 多孔質構造: 骨灰は微細な穴がたくさん開いており、液体になった酸化鉛を吸い込むキャパシティが非常に大きい。

  • 耐火性: 1,000°C 近い高温でも灰自体が溶けてガラス化(スラグ化)しにくいため、最後まで酸化鉛を吸い込み続ける。

  • 反応性: 木の灰(成分:カリウム、ナトリウム等)を混ぜることもありましたが、これらは酸化鉛と反応してガラス状になりやすく、吸い込みを阻害することがあったため、骨灰が主役でした。


3. 分別の物理:表面張力の魔法

灰吹き法の成功は、**「液体金属の表面張力」**の違いにも支えられています。

物質 灰への挙動 理由
酸化鉛 (PbO) 吸い込まれる 灰になじみやすい。
金 (Au)・銀 (Ag) 玉になって残る 金属結合による強い表面張力を持ち、灰の微細な隙間に入ることができない。

一酸化鉛(リサージ)の融点は、正確には 888°C です。
灰吹き法において、この「約890°C」という温度には非常に重要な意味があります。

灰吹き法と融点の関係

灰吹き法を成功させるには、炉の温度を鉛の融点よりも高く、かつ金銀銅の融点よりは低い絶妙なラインに保つ必要があります。

なぜ 888°C が重要なのか?

鉛が酸化して一酸化鉛(リサージ)になったとき、温度が 888C を下回っていると、酸化鉛が固体になってしまいます。

固体になると灰に染み込んでいかないため、金の表面を膜のように覆ってしまい、精錬が止まってしまいます。そのため、職人は常にこれ以上の温度をキープし、酸化鉛を**液体(溶融状態)**にして灰に吸わせる必要があったのです。

鉛のリサイクル
  金銀回収後の一酸化鉛は、たたら製鉄同様に「炭と混ぜて高温で加熱燃焼雰囲気で、炭Cで還元し元の鉛(融点327°の溶融鉛)」にして取り出します。

 

3. 現代の精錬技術:電気と化学の力

現代では、江戸時代の熱化学的な手法に代わり、**「電気分解(電解精錬)」**が主役です。

現代の金銀抽出分離方法

手法 特徴 主な用途
シアン化法 金がシアン化物(青化ソーダなど)の水溶液に溶け出す性質を利用。溶け出した金を含む液に活性炭を入れ、金を選択的に吸着させ活性炭から金を回収し、電気分解などで金属状態に戻す。低コストで大量処理が可能、毒物管理必要。 金鉱山での初期抽出
電解精錬 金銀銅の電界電位差利用し、銅や鉛の電界精錬の副産物スラリー(沈殿物)として回収 工業的な資源回収
王水法

金を王水に溶かし、塩化金酸にし、還元剤(塩化第一鉄など)を加えることで、金だけを粉末状にして沈殿。非常に高い純度が得られる

宝飾品や投資用地金の仕上げ

最近では、スマートフォンの基板など(都市鉱山)から金を回収する際にも、これらを組み合わせた技術が使われています。

銅の電解精錬と「陽極泥」

現代の金・銀・銅の分別は、実は「銅を精製するついで」に行われます。

産出物 分離・回収方法
純銅 粗銅を陽極(+)、純銅板を陰極(ー)にして硫酸銅水溶液中で電気分解。陰極に還元された純粋な銅が析出します。
金・銀 電気分解中、陽極の租銅は電位差により電気分解で酸化され銅イオンとなり溶解します。
混ざっていた金や銀はその電位差では溶けずそのまま下に沈殿
します。これを**陽極泥(アノード・スライム)**と呼びます。
金 (Au)+1.52 V
銀 (Ag)+0.80 V
銅 (Cu)+0.34 V
上記の電気化学的な電位差による溶解差を利用した分離法です。

貴金属の回収

沈殿した「陽極泥」には、金、銀のほかにプラチナやパラジウム、セレンなどの希少金属が凝縮されています。これらをさらに化学処理(湿式精錬)にかけることで、最終的に99.99%以上の純度で金や銀を個別に回収します。


江戸と現代の比較まとめ

  • 江戸時代: 鉛を「溶媒」として使い、酸化反応の差(火の力)で銀を抽出。金は塩と焼いて分離。

  • 現代: 電気の力を使い、銅を溶かし出す過程で金・銀を「ゴミ(沈殿物)」として一度集めてから、後で化学的に回収。

江戸時代の「南蛮吹き」で確立された**「銅の中から不要なものを除き、付加価値を高める」**という考え方は、現代の都市鉱山(リサイクル)技術にも通ずる日本の伝統的なお家芸と言えます。