三菱重工業広島製作所には、以前は鋳鍛課があり、主として鋳鋼による大物鋳物を製造していたということです。
重工業用の各種機械設備を製作していました。現在でも多くの事業を継続していますが、一部は合弁で行われるようになりました。
現在は、広島製作所HPによると下記の事業を行っているということです。以下引用で一部をご紹介します
主要製品
- コンプレッサ・タービン
ターボ機械の中でも特に大型のコンプレッサ・タービンを当社では生産しており、具体的には、化学プラント、ガスプラント、あるいは製鉄所などで製品の生成に必要な空気、ガスを圧縮するコンプレッサやそれらを駆動する蒸気タービンなどで、それらは世界各国のエネルギー産業、石油化学産業の分野で活躍しています。
ロータ(回転体)は、大きいものでは直径2m、重量10トンを超えるものもあり、そのロータを高速、かつ安定して運転させる為の設計・生産技術は、世界でもトップ・クラスを誇っています。
- 製鉄機械
三菱日立製鉄機械株式会社と独シーメンス VAI社の製鉄プラント事業を統合した新会社、Primetals Technologiesが誕生、図にあるような各種の製鉄機械を製造。
- ゴム・タイヤ機械
- H-IIBロケット用タンクドーム
- 食品包装機械
- 航空機
以上 引用終わり
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現在は、鋳造部門は三菱重工全体で神戸造船所 二見工場に集約されて、それまでは各製作所にあった鋳造部門は廃止されています。
以前、広島製作所で鋳物に取り組んだ技術者の思い出をお聞きすることができましたので、以下ご紹介します。
堤忠義様より下記寄稿いただきました。
今から60数年前の昭和35年、当時三菱造船株式会社広島製作所(現在三菱重工業広島製作所)に入社し、それから約50年間在籍し鉄鋳物の世界に身を置いた古代人です。
その頃は神武とか岩戸景気とかに湧き、池田総理の所得倍増計画とやらで、それはもう希望に満ち溢れた世相でした。
広島製作所も造船・製鉄・セメント・化学プラント等々のいわゆる重厚長大の基幹産業の一翼を担い、日本と広島の経済発展に大きな貢献をしていました。
従業員数も多分8000人位いたと思います。
各種産業機械に使用する鋳物(主として鋳鋼)部品作り一筋に注力してきました。
その時々に強く印象に残っている仕事を挙げると、鋳造設備能力を数倍超える鋳物を分割鋳造し、特殊溶接工法で一体化する工法で製鉄圧延機のロールハウジング(wt250)を製作した。この工法は船のラダー、セメントキルンのタイヤなど大型鋳物の自社製作に貢献した。他にも製鉄薄板用ロールフランジと軸を一体鋳造して、それを型鍛造する(セミ鍛造)特許等々その時々楽しく遊んだ事を思い出します。
鋳造作業の機械化の考案も楽しみの一つで吹き付け造形機の開発、特許。大型押し湯切断機の自動化等々も行いました。
鋳造の現場を離れてからは、全国の中小企業(鋳造)の新工場建設計画を支援するコンサル事業を任され、いろいろ苦労も多かったが、日本中の活力ある中小企業の経営者達と、楽しんで仕事を進めることができた。特に、鋳造は溶解に高いエネルギーを投入するため職場の暑熱環境問題があり、三菱重工が特許を持っていた工場建屋構造の自動的換気システムが強みで、全国に新工場建設のお手伝いができました。
三菱重工退職後は、そうしてできたばかりの工場の操業を行う仕事につくことができて、伸び盛りの若い人たちと共に鋳造の仕事ができました。
こうして、鋳物人として仕事を終えることができたのは、望外の幸せでした。
上司・同僚・協力いただいた多くの皆様には、深く感謝したい。
※製鉄用熱間の分塊圧延機とは、加熱炉で1200度ほどに加熱した30トンもある鉄のインゴットを所定の厚みに圧延するもの。1mを超える大径の圧延ロールを圧下する巨大なフレーム(=ロールハウジング)は数百トンもある枠型構造物(下図参照)で、大きな力や衝撃力がかかるため、鋳鋼で製造していました。
熱間圧延機の写真例(JFEより引用) 板の進行方向に左右2つの巨大なロールハウジングを持つ圧延機が並び、圧延ロールの軸受けを圧下して、少しずつ板を薄く押し伸ばします。
三菱重工広島製作所は、広島市の海沿いの広大な埋め立て地にあり、旧広島空港に隣接しています。