鋳造は、金属溶解に大電力を利用する。電力の安価・大量・安定調達は産業維持に必須です。
電力に関する、新しい情報がありましたのでご紹介。

日本人 宮坂 力(桐蔭横浜大学 大学院工学研究科 教授)が発見した、塗膜型太陽光発電フィルム「ペロブスカイト」、日本政府も500億円超える開発費を投じていると。

ペロブスカイト太陽電池 (Perovskite solar cell)とは

A next-generation solar cell that uses perovskite, which is a material with a crystal structure.

「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造の材料を用いた次世代太陽電池のことです。

そのほとんどがシリコン系である既存の太陽電池は壊れにくく、高変換効率である一方で、材料や製造コストが比較的高いというデメリットがありました。さらに、シリコン系太陽電池は厚くて曲げることができず、設置場所が制限されるので、特に国土が狭い日本では、立地制約の克服が課題となっていました。

そこで、フレキシブルかつ軽量であり、シリコン系太陽電池では困難な場所にも設置が可能な「ペロブスカイト太陽電池」に期待が寄せられています。既存の太陽電池と同じ高い変換効率を達成しつつ、低価格を実現できます。一方で、耐久性の低さ、大面積化が困難であるといった課題が残っています。

下記は、その紹介サイトです。https://www.jst.go.jp/seika/bt107-108.html

有機と無機のハイブリッドで高変換効率を生み出す

ペロブスカイト型太陽電池の開発2017年度更新

画像

宮坂 力(桐蔭横浜大学 大学院工学研究科 教授)
ALCA
実用技術化プロジェクト課題 自律分散型次世代スマートコミュニティ
「有機無機ハイブリッド高効率太陽電池の開発」研究代表者(H25-28)

世界から注目されるペロブスカイト太陽電池

太陽の光エネルギーを直接電気に変換する太陽電池。その種類は、原料として使われる半導体によって様々だが、現在量産されている太陽電池の多くは、「シリコン系太陽電池」と「化合物系太陽電池」と呼ばれるタイプのものだ。これらの太陽電池は壊れにくく、高変換効率(高いものでは25%を達成)である一方で、材料や製造コストが比較的高いというデメリットがあった。さらに、シリコン系太陽電池ではシリコンが厚く、曲げることができないことが設置場所を制限していた。

そこで次世代の新規太陽電池材料として期待を寄せられているのが、「ペロブスカイト太陽電池」だ。ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いた新しいタイプの太陽電池であり、「シリコン系太陽電池」や「化合物系太陽電池」にも匹敵する高い変換効率を達成している。ペロブスカイト膜は、塗布(スピンコート)技術で容易に作製できるため、既存の太陽電池よりも低価格になる。さらに、フレキシブルで軽量な太陽電池が実現でき、シリコン系太陽電池では困難なところにも設置することが可能になる。このような特徴を有する太陽電池で、シリコン系太陽電池と同程度の変換効率を有するものは無かった。ペロブスカイト太陽電池の登場によって、理想的な太陽電池が実現可能になった。このことから、ペロブスカイト太陽電池は、世界で最も注目されており、太陽電池に関する世界中の論文の大半がペロブスカイト太陽電池に関するものになっている。

2009年にこの画期的な太陽電池を最初に提案したのが宮坂力教授で、世界的な注目を集めた。2013年からは、JSTの先端的低炭素化技術開発(ALCA)が取り組む「太陽電池および太陽エネルギー利用システム」に参画し、現在では実用技術化プロジェクトのなかで、有機無機ハイブリッド高効率太陽電池の研究開発を世界レベルでリードしている。

図1

ペロブスカイト構造

図2

宮坂教授が太陽光吸収に用いるNH3CH3PbI3という化学式で表されるペロブスカイト結晶は、濃い褐色であり、可視光の利用率が高い。宮坂教授はこの材料を、世界で最初に太陽電池に応用した。

ペロブスカイト太陽電池を作るには、薄膜の形成と塗布プロセスが必要になる。まず原料を含む溶液を、金属酸化物(チタニアやアルミナ)の膜上に塗布してペロブスカイト結晶薄膜を形成する。この薄膜は波長800nmまでの可視光を吸収できる性能を持つ。その上層に、プラスの電気(正孔)が集まる有機の正孔輸送材料を接合して薄膜セルを作る。ペロブスカイト太陽電池の作製が容易であることから各所で研究が開始され、変換効率が急速に向上した。

宮坂教授らは、これまでのALCAの研究で、材料や結晶構造、プロセスを最適化することで、ペロブスカイト太陽電池として最高クラスの変換効率(21.6%)と1.15V以上の高い電圧出力を実現している。

低温の塗布プロセス

低温の塗布プロセス

フレキシブルで高信頼性かつ高変換効率の太陽電池を低コストで実現する。

低温製膜で作製するペロブスカイト太陽電池の積層構造

低温の塗布プロセス

曲げられるフィルムタイプの太陽電池の実用化に向けて

ペロブスカイト型構造の太陽電池には、他にも大きな特長がある。製造するときの温度を、シリコン系に比べて低くできる点だ。これはプラスチックを痛めない範囲に収めることができ、プラスチックフィルムタイプの太陽電池の製造を可能にする。

シリコン系太陽電池は薄くすると太陽光のエネルギーが吸収できなくなるため、変換効率が大きく低下する。しかし、ペロブスカイト太陽電池であれば、太陽光の吸収係数が大きいため、高い変換効率を維持したフィルムタイプ太陽電池の実現が可能である。

変換効率をさらに高めて、実用に耐えられる耐久性も備えられれば、加工しやすい透明フィルムの太陽電池を開発できる。屋外用や屋内用、携帯用など、広い用途の民生用産業材料が誕生するはずだ。宮坂教授らがこのフレキシブル太陽電池を100回以上曲げる試験を実施したところ、その性能が安定していたことも確かめている。

ペロブスカイト太陽電池、効率21.6%の特性

低温の塗布プロセス
低温の塗布プロセス

プラスチックフィルムで作る高効率ペロブスカイト太陽電池。100回以上の曲げ試験でも性能は安定したままだった。

変換効率30%以上の太陽電池とPbフリー化を目指す

ペロブスカイト太陽電池と別種の太陽電池とを組み合わせたタンデム構成にすることで、従来のシリコン系太陽電池(変換効率は25%以下)を大幅に上回る変換効率30%以上の太陽電池を作ることにも挑む。また、30年以上の使用に耐える高信頼性化も視野に入れる。そして同時に、人体へ悪影響のある鉛を使わないPbフリーペロブスカイト太陽電池の開発も目指している。これらによって、あらゆる場所に設置でき、少ない面積で大きな電力が得られる理想的な太陽電池が実現し、CO2低減に貢献できる。