レアアースが地球に偏在し、中国が大部分を生産していて、過去も政治的主張に利用し輸出規制を行った。今また、米中貿易摩擦などの緊張激化で、再燃したようだ。鋳造でもレアアースを接種材などに利用している。レアアースを使わない鋳造法の開発が必要なようだ。
中国レアアース輸出規制、世界の自動車会社が悲鳴 生産停止懸念
Jarrett Renshaw, Ernest Scheyder
2025年6月4日
https://jp.reuters.com/markets/commodities/ZONEF4Z4YVI3PGUNQ6QRSSSEME-2025-06-03/
3日 ロイター] – ドイツ自動車工業会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長は3日、中国によるレアアース(希土類)合金・化合物・磁石の輸出規制について「この状況がすぐに変わらなければ、生産の遅れや停止も否定できなくなる」と懸念を示した。
中国のレアアース輸出規制を巡っては、米自動車業界も生産停止のリスクを警告しているほか、先週にはインドの電気自動車(EV)メーカーも同様の事態を訴えており、世界中の自動車メーカーから悲鳴が聞こえてきている。
中国は4月、レアアース磁石など一部の重要鉱物類の輸出停止を決定。世界各地の自動車や航空宇宙、半導体、防衛といった産業が構築しているサプライチェーン(供給網)の中枢を揺るがした。
こうした動きは、レアアースやレアアース磁石の供給で優越的な地位を占める中国が、トランプ米大統領から仕掛けられた貿易戦争への対抗措置として輸出規制を利用しようとしている構図を浮き彫りにしている。
トランプ氏と中国の習近平国家主席は今週、重要鉱物の供給を巡る問題などで電話会談する見通しだ。
レアアース磁石は自動車やドローンからロボット、ミサイルまでさまざまな製品の組み立てに必須の素材だ。しかし、中国の規制システムの下で輸出許可申請が処理される間、中国の多くの港湾で出荷が止まったままとなっている。
中国国営メディアは先週、同国政府が欧州の半導体企業を対象にレアアース輸出規制の緩和を検討していると報じた。また、中国外務省は同規制を巡り関係各国との協力を深める方針を示した。
ただ、輸出業者が不明瞭な輸出許可制度への対応に苦慮する中、中国からのレアアース磁石の輸出は4月に半減した。
関係筋によると、世界のサプライチェーンが停止する恐れがある中、インド、日本、欧州の外交官や自動車メーカー、その他企業幹部はレアアース磁石の輸出承認加速を求めて中国当局との会談を緊急に要請している。日本の企業代表団は6月上旬に北京で商務省関係者と協議する見通しで、大規模な自動車産業を持つ欧州諸国の外交官もここ数週間、中国当局との「緊急」会合を要請しているという。また、インドは自動車業界幹部による訪問を2、3週間内に計画している。
スズキ、中国レアアース輸出規制で「スイフト」生産停止=関係者
ロイター
2025年6月5日
https://jp.reuters.com/markets/commodities/HG7AN6LKGVOJTIFU7PZISQZHYU-2025-06-05/
スズキ、中国レアアース輸出規制で「スイフト」生産停止=関係者
6月5日、中国によるレアアース(希土類)の輸出規制の影響で、スズキが5月下旬から小型車「スイフト」の国内生産を停止していることが分かった。写真はフランスのパリで2018年10月撮影(2025年 ロイター/Benoit Tessier)
[東京 5日 ロイター] – 中国によるレアアース(希土類)の輸出規制の影響で、スズキ(7269.T), opens new tabが5月下旬から小型車「スイフト」の国内生産を停止していることが分かった。関係者2人が明らかにした。
スズキは5月26─30日、6月2─6日に相良工場(静岡県牧之原市)でスイフト(スイフトスポーツを除く)の生産を停止すると発表していたが、理由は公表していなかった。5日付の同社発表によると、生産停止は12日まで継続し、13日に一部稼働を再開、16日に全面再開する計画。
中国のレアアース輸出規制で日本の自動車メーカーの生産に影響が出ていることが明らかになったのは初めて。欧州では一部の自動車部品メーカーが操業を停止した もっと見る 。
スズキ広報は「スイフトの生産が部品供給不足で止まっているのは事実だが、理由については発表していない」とした。
中国は4月、レアアース磁石など一部の重要鉱物類の輸出停止を決定した。
中国は、どこでレアアースを生産してる?
宮崎正弘のメルマガに関連情報があったので引用でご紹介
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和七年(2025年)6月7日(土曜日)弐
通巻第8815号
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米中激突は「レアアース戦争」の様相
さすがのトランプも妥協点を模索へ
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1980年代の『戦略物資』はレアメタル争奪。とくにコバルト、チタン、タングステンなどの鉱区をめぐって米ソの争奪戦が展開され、舞台はアフリカの南ア、コンゴなどだった。
レアメタルは超硬質を要求する高速切断、最先端軍用品や機械などに用いられた。
筆者が『もうひとつの資源戦争』(講談社)を書いたのは1982年、日本政府は、重い腰を上げて戦略備蓄を創めた。
石油の180日備蓄と並んでレアメタル備蓄が途についた。
クリントン政権からIT革命が始まった。ときの日本の政府は「イットってなんだ?」という迷言を吐いた政治家が首相だった。
ITによる通信革命が勃興し、インターネット、スマホ、AI通信の時代を迎えるとレアメタルからレアアース(希土類)の争奪戦への変貌を遂げる。
産出国は中国。内蒙古省と江西省がレアース埋蔵地であり、とくに内蒙古省パオトウ(包頭)が、そのメッカとなった。
パオトウを取材したのは十五年ほど前だった。
北京からフフホトへ飛び、列車でパオトウまで、車窓の風景は、砂漠と森林地帯の辺境だった。ところがパオトウへついてみると、高層ビルが林立し、なかでも最高層ビルは「希土類大飯店」(レアアースホテル)だった。
ホテルは閑散としていたが、おりからレアアースのシンポジウムが開催されており、受付で資料を呉れた。
なんの警戒心もなく、「日本から取材に来たのか」と歓迎され、輸出ブームが来ると言って中国はドル稼ぎの目玉に位置づけていた。
フェイズが変わった。
AI、スマホ、ロボットなどの半導体にレアアースは必需品となった。極めつけがEVとなって産業地図が激しく塗り変わるとともにレアアースは、中国の国家安全保障の戦略物資となった。
中国は七つのレアアースに輸出規制をかけた。具体的には「ライセンス」方式で、この遣り方はアメリカをモデルにしている。
とくにジスプロジウム、テルビウムはEV、戦闘機に遣われる磁石の生産に不可欠のレアアースである。イットリウムは医療用レーザーなど、カドリニウムは原子力発電設備や医療機器、施設などに不可欠のものだ。
▲米中首脳電話会談の議題はレアアースだった
トランプ米大統領と習近平国家主席が長時間の電話会談を行ったことで、中国が貿易戦争に向けて効果的かつ的確にレアアースを武器化していることが明確となった。米中首脳電話会談の議題の殆どがレアアースだったのだ。
中国政府は米国をモデルに輸出ライセンスを制度化し、とくにEV(電気自動車)のモーターから誘導ミサイルの飛行制御システムに至るまで、アメリカ並びに日本、韓国を含む西側同盟国のアキレス腱をついた。中国はEVモーターの重要な部品である希土類磁石をほぼ独占している。
中国がレアースを武器とした嚆矢は2010年に日本への希土類の輸出を一時的に禁止したことだった。
2022年、米国は、その技術が中国の軍事力を強化する可能性があるとの懸念から、中国への先進的な半導体や集積回路の輸出を全面的に制限した。しかし、中国は抜け道を利用し、台湾からエンジニアを大量にスカウトし、第三国の迂回輸出などで対応したため、米国の政策は失敗した
トランプは反撃に出た。中国の原子力発電所に原子力機器のライセンスを停止した。すると中国は、米自動車メーカー上位3社の希土類元素の供給業者に対し、暫定的な輸出許可を与えた。米中のレアアース戦争は、これからが本番である。