東北大学の研究者と同大学の卒業生とが意気投合して作ったというアジュールエナジー
AZUL触媒: 高機能レアメタルフリー触媒
レアメタルを含まず一般的な化学プロセスで合成可能なAZUL触媒は、レアメタル触媒同等レベルの触媒活性を持ちます。触媒分子の設計/合成技術・電極形成プロセス技術を用いて、次世代エネルギーデバイスを開発する顧客ニーズに沿った形態でAZUL触媒を提供します。
読売新聞が特集記事掲載
「レアメタル不要の新触媒」でエネルギーに革新を…次世代電池の開発目指すアジュールエナジー
https://www.yomiuri.co.jp/local/michinoku/20260216-GYT8T00108/
小泉公平
産業の発展に欠かせないレアメタル(希少金属)の争奪戦が世界で展開されている。そこで今回は、レアメタル不要の新触媒による燃料電池など次世代電池の開発を目指す「アジュールエナジー(AZUL Energy、本社・仙台市)」を取り上げる。実現すれば、エネルギーが抱える課題解決につながる。新触媒の可能性と事業の展望を伊藤晃寿社長に聞いた。
高価な希少金属
まず燃料電池について説明したい。水素と酸素の化学反応で電気を生成し、排ガスを出さないクリーンな次世代エネルギーと期待されており、燃料電池車(FCV)や家庭用電源(エネファーム)、非常用電源などに活用されている。
しかし、あまり普及していない。その要因のひとつとされているのが、触媒として使うレアメタルの白金が希少で高価なことだ。白金の年間産出量は世界で約200トンにとどまり、産出国の90%が南アフリカとロシアだ。地政学的なリスクに加え、投機対象にもなっているため、高価になる。現状の200トンでは、1台あたり20グラムの白金が必要なFCVは、年間約1000万台しか作れない。
青色顔料が世界を変える
この現状を打破しようと、世界中の研究者が白金に代わる触媒はないかと探している。それをいち早く、しかも実現可能性のある素材を発見したのが、東北大学材料科学高等研究所の藪浩教授らの研究グループだった。
藪研究室では新幹線の塗装やインクジェットなどに使う青色顔料の研究に取り組んでおり、その過程で白金と同等の触媒機能を発揮する顔料を発見した。この顔料に炭素を混ぜることで、新触媒ができるという。採掘や精錬などの工程が必要な白金に比べて製造過程は単純で、コストは10分の1以下に抑えられるうえ、大量生産も可能だ。二酸化炭素の排出量も、白金の製造に比べると100分の1以下で、環境にも優しいという。

この新触媒を事業化できないか――。藪教授から相談を受けた伊藤社長が2019年に設立したのが、アジュールエナジーだ。東北大工学部出身で、大学院の修士課程で燃料電池の研究をしていた伊藤社長は、就職した富士フイルムで長年にわたり、別のテーマについて藪教授と共同研究をしていた縁があった。
「世界を変える可能性を感じ、心が揺さぶられた。自分がこの事業を手がけたいと思った」と当時を振り返る伊藤社長は、新触媒を「アジュール触媒」と名付けた。アジュールとは、フランス語で「青」の意味だ。
安価なアジュール触媒を使えば企業の研究開発が進む。同社は国内外の電池メーカーなど数十社と実装に向けた有効性の検証を終え、製品化の一歩手前まできているそうだ。
空気電池の開発も
アジュールエナジーは、燃料電池の仲間で、リチウム電池の次世代電池と言われる「空気電池」の開発にも取り組んでいる。空気中から取り出した酸素と、亜鉛などの金属が反応すると電気が発生する仕組みで、エネルギー密度が高く容量の大きい電池と言われている。発火のリスクが伴うリチウムイオン電池と違い、安全性が高いのも利点という。
今後、AI(人工知能)に特化したデータ処理を行う「AIセンター」の建設ラッシュが見込まれている。同センターは大量に電気を使うため、充電ができる空気電池の「二次電池化」が実現すれば、市場は拡大する可能性が高い。空気電池の性能を上げるためには触媒が必要で、安価なアジュール触媒の需要も高まる。
一方、同社はアジュール触媒を使った安価で大容量の亜鉛空気電池「フェリオン」を開発した。工事現場の照明や獣害対策用の電源として活用できるよう近く発売する予定という。

2025年8月に開催された「スタートアップワールドカップ2025東北予選」で優勝したアジュールエナジー。200社を超える企業が参加した予選では革新性と事業性が評価された(アジュールエナジー提供)
目指すは低炭素社会の実現
同社はさらに、出力の高い鉛電池と大容量の空気電池を組み合わせた「ハイブリッド空気電池システム」も開発した。災害時に通信機器や照明などに電気を供給することを想定しており、改良を重ねて普及させたいと考えている。
伊藤社長は「レアメタルに頼ることなく、アジュール触媒を搭載したエネルギーデバイス(機器)を世界中に普及させることで、低炭素社会の実現に貢献したい」と語った。
アジュール触媒誕生経緯(同社のHPより)
生体中の反応から着想を得た触媒設計
赤血球による酸素運搬
呼吸によって取り込まれた酸素は、血中に含まれる赤血球が運搬することで体全体に酸素を届けます。その時、赤血球にあるヘモグロビンというたんぱく質の中にあるヘム構造が重要な役割を持ちます。
ヘム構造の中心にある鉄原子の働きによって酸素の吸脱着を起こすことで、酸素の取り込みと放出を行っているのです。
このヘム構造の働きに注目し、酸素を効率的に還元する機能を持つ分子を設計することで、AZUL触媒は誕生しました。



炭素担体上への単分子吸着構造
※(電池で電極機能を持つ黒鉛が層状構造を持つことを利用)
AZUL触媒は、ヘムと類似の構造を持つAZUL色素が炭素担体表面に単層状に多数吸着した構造を持っています。この構造によって、ヘムでいうところの鉄原子のような触媒活性をもつ中心金属を、互いに邪魔することなく高密度に存在させることが可能となりました。
代表的なAZUL分子であるアザフタロシアニン(AZaphthalocyanine)が単分子層(Unimolecular Layers)構造を持っているため、その頭文字をとりAZUL触媒と命名しました。AZULとはスペイン語で「青」を表し、AZUL触媒の溶液も美しい青色を呈します。
Q: 空気亜鉛電池の原理は?
Gemini の回答
空気亜鉛電池(Air-zinc battery)は、名前に「空気」とある通り、空気中の酸素を正極の反応物質として使うという、非常にユニークな仕組みを持っています。
一般的な電池は、ケースの中に正極と負極の両方の材料を詰め込みますが、空気亜鉛電池は正極材(酸素)を外から取り入れるため、その分、負極の材料(亜鉛)をたくさん詰め込めるのが特徴です。
電池の構造と反応の仕組み
空気亜鉛電池の基本的な構成は、**「空気極(正極)」「亜鉛(負極)」「電解液(水酸化カリウムなど)」**の3つです。
1. 負極(亜鉛)での反応
電池を使う(放電する)とき、負極の亜鉛が電解液と反応して電子を放出します。
Zn + 2OH=> ZnO + H2O + 2e
2. 正極(空気極)での反応
負極から流れてきた電子が、空気中から取り込まれた酸素と反応します。ここで触媒が重要な役割を果たします。
1/2 O2 + H2O + 2e=> 2OHー
3. 全体の反応
まとめると、亜鉛が空気中の酸素と結びついて「酸化亜鉛」になるエネルギーを電気として取り出していることになります。
Zn + 1/2 O2 =>ZnO
主な特徴と注意点
- 高エネルギー密度: 正極材を電池内に持つ必要がないため、同じサイズの他の電池に比べて非常に長持ちします。
- 電圧が一定: 放電の終盤まで電圧が下がりにくい性質があります。
- シールを剥がして開始: 未使用時は空気穴がシールで塞がれています。このシールを剥がして酸素が入り込むことで、初めて発電が始まります。
- 環境に左右される: 二酸化炭素や湿度に弱く、乾燥しすぎたり湿気が多すぎたりすると寿命が短くなることがあります。
主な用途
現在、最も普及しているのは補聴器用のボタン電池です。小型でありながら大容量が必要なデバイスに最適だからです。最近では、次世代の電気自動車用バッテリーや蓄電池としても研究が進められています。
Q: 充電するには?
Gemini の回答
結論から言うと、現在一般的に市販されている空気亜鉛電池(補聴器用など)は**「一次電池」であり、充電することはできません。**
無理に充電しようとすると、液漏れや膨張、破裂の危険があるため、使い切ったら交換するのが基本です。
しかし、技術的に「充電できる空気亜鉛電池(二次電池)」の研究は非常に活発に行われています。なぜ充電が難しいのか、そして最新の研究はどうなっているのかを解説します。
なぜ普通の空気亜鉛電池は充電できないのか?
充電(二次電池化)には、放電時と逆の化学反応をスムーズに起こす必要がありますが、主に以下の3つの技術的ハードルがあります。
- 樹枝状結晶(デンドライト)の発生: 充電時に亜鉛が負極に戻る際、きれいな平らな面ではなく、トゲのような結晶(デンドライト)が成長してしまいます。これがセパレーターを突き破るとショートの原因になります。
- 空気極の劣化: 放電時には酸素を取り込み、充電時には酸素を放出しますが、この激しい反応に耐えられる高性能で安価な触媒を作るのが非常に困難です。
- 電解液の変質: 空気中の二酸化炭素と電解液が反応して固形物(炭酸塩)ができ、目詰まりを起こして反応を邪魔してしまいます。
「充電」を実現する2つのアプローチ
現在、これらを解決するために以下の2つのパターンで開発が進んでいます。
1. 電気的充電(一般的な二次電池)
リチウムイオン電池のように、コンセントから電気を流して再利用するタイプ。デンドライトを防ぐ特殊な添加剤や、酸素の出入りをスムーズにする新素材の電極が開発されています。
2. メカニカル充電(燃料電池に近い方式)
「電気を流す」のではなく、**「使い切った亜鉛(酸化亜鉛)を物理的に取り出し、新しい亜鉛に入れ替える」**という手法です。
- ガソリン車で燃料を給油するように、亜鉛のカセットやスラリー(泥状の材料)を交換することで、瞬時にフルチャージ状態にできます。
将来の展望
もし安価で安全な「充電式空気亜鉛電池」が実用化されれば、リチウムイオン電池よりも軽く、圧倒的に大容量なバッテリーになります。
Q: 正極の電気を取り出す方法は?空気ではとりだせない。
Gemini の回答
鋭いご指摘です!「空気(気体)」そのものに電線を繋いでも電気は流れませんよね。
空気亜鉛電池の正極において、実際に電気(電子)の受け渡しを行っているのは、空気そのものではなく**「空気極(カーボン電極)」**という特殊な構造体です。
空気はあくまで「反応材料」であり、電気を取り出す「窓口」は固体の電極が担っています。
電気を取り出す「空気極」の仕組み
空気極は、主に以下の3つの要素が混ざり合った薄いシート状の構造をしています。
- 多孔質カーボン(炭素の粉)
- 役割: 電気を導く「導体」です。表面に無数の小さな穴が開いており、空気(酸素)が入り込みやすくなっています。
- 触媒(マンガン酸化物など)
- 役割: 酸素と電解液が反応して電子を受け取る化学反応をスピードアップさせます。
- 撥水層(テフロンなど)
- 役割: 外から空気は通しますが、中の電解液(液体)が漏れ出さないようにブロックします。
反応の現場:三相界面(さんそうかいめん)
電気が生まれるのは、空気極の中の非常にミクロな場所です。以下の3つが同時に接するポイントを**「三相界面」**と呼びます。
- 気相: 取り込んだ「酸素」
- 液相: 中に入っている「電解液」
- 固相: 電子を運ぶ「カーボンと触媒」
ここで酸素が電子を受け取り、水酸化物イオン($OH^-$)に変化します。このとき、カーボン電極が電子を吸い上げることで、外部回路に電気が流れる仕組みです。
つまり、どうやって繋がっている?
- 負極: 亜鉛そのものに端子が接触しています。
- 正極: 空気が通る穴の内側に、このカーボン製の空気極シートが裏打ちされています。このシートに金属のメッシュやケースが接触しており、そこから電気を取り出しています。
例えるなら: 暖炉(電池)で火を燃やすとき、空気(酸素)は必要ですが、熱を取り出すのは暖炉の鉄枠(電極)ですよね。空気亜鉛電池も、酸素は「燃料」として取り込み、電気は「カーボン電極」から回収しているのです。

