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全固体電池 酸化物系の逆襲

ついにデンドライトを制圧か、金属リチウム負極で数千回にメド

第2部:次世代負極技術

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00148/00003/

  • 野澤 哲生

    日経クロステック/日経エレクトロニクス編集委員

金属リチウム(Li)などを使う高容量密度の負極に技術革新が相次いでいる。40年以上も課題だったデンドライト(針状突起)問題を克服できる見通しがついてきた。金属Li負極の被覆として銀を使うなどの対処法が有効だ。これまでコストが高いことが課題だったが、より安価な材料でもデンドライトを抑制できる可能性も見えてきた。

 全固体電池を含む次世代2次電池で負極技術のブレークスルーが相次いでいる。苦節40年の金属リチウム(Li)負極のデンドライト問題も解決の見通しが出てきた。安い材料で充放電サイクルが数千回を超える成果も得られている。

 全固体電池であれ、他のどんな次世代電池技術であれ、エネルギー密度を現時点のLiイオン2次電池(LIB)を大きく超えて高めていくには事実上大きく2つの選択肢しかない。負極として、(1)高純度のシリコン(Si)系負極を用いるか、(2)金属LiやLi合金を用いるか、である(図1注1)

図1 高容量負極に多くの課題

2次電池のエネルギー密度を大幅に高めるには、負極活物質にシリコン(Si)または その化合物を用いるか、金属リチウム(Li)またはLi合金を用いるしか事実上選択肢 がない。特に、重量エネルギー密度を500Wh/kg以上にするには金属Li負極のほ ぼ一択となるが、使える電解質は少ない(出所:日経クロステック)

注1)既存のLIBは正極については限界近くまで高容量化してきた。ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)の組成比が90:5:5のNCM955などだ。次世代正極として「Li過剰系」といった選択肢はあるものの、不安定さを解決できておらず、しかもそれでエネルギー密度が現時点の2倍になるかといえば答えは否である。それができる可能性があるのは、正極を「空気」にしたLi空気電池だが、2次電池としての実用化はかなり先になりそうだ。

 これまで、負極にはLIBの実用化からずっとグラファイトが使われてきた。最近はSiを加えることで高容量化しつつあるが、高純度Siや金属Liを負極に使えば、計算上は電池のエネルギー密度を現状の2倍以上にできる。

40年も苦闘

 計算上といったのは、この2つには深刻な技術的課題が幾つもあるからだ。高純度Si負極では、充放電で体積が約4倍も変わる点、金属Li負極では金属Liの高い反応性で水分や電解質の多くが分解されてしまう点や、Liが針状に析出して正極に向かって成長するデンドライト(針状突起)と呼ばれる現象が起こることなどだ。そして40年近く、多くの研究者や技術者がそれらの課題に挑戦し、そして挫折してきた。

 ただ、最近になっていくつかの試みでその課題を解決できる見通しが出てきた。まず、高純度Si負極電池で脚光を浴びているのが米Amprius Technologies(アンプリウス・テクノロジーズ)だ。

以下有料記事のため省略

 

Geminiの解説

Geminiへ: 最近になっていくつかの試みでその課題を解決できる見通しが出てきた。まず、高純度Si負極電池で脚光を浴びているのが米Amprius Technologies(アンプリウス・テクノロジーズ)だ。Liデンドライト防止技術について解説して

Gemini Ans:

米Amprius Technologies(アンプリウス・テクノロジーズ)社に代表される「高純度シリコン(Si)負極電池」は、次世代リチウムイオン電池の本命として世界的な注目を集めています。

ご質問の「Li(リチウム)デンドライト防止技術」について、Amprius社が採用している独自の「シリコンナノワイヤ(Silicon Nanowire)構造」がどのようにデンドライトの発生を抑え、同時にシリコン特有の膨張問題を解決しているのか、そのメカニズムと周辺技術を解説します。

1. なぜシリコン負極でデンドライトが問題になるのか?

本来、「デンドライト(樹枝状結晶)」は、リチウム金属を直接負極に使用する「リチウム金属電池」で最も深刻化する問題です。充電時にリチウムイオンが平滑に電着せず、局所的に針状に成長してセパレータを突き破り、致命的な内部短絡(ショート)や発火を引き起こします。

従来のグラファイト(黒鉛)負極からシリコン負極へ移行する際、シリコンはグラファイトの約10倍という圧倒的な理論容量を持つ反面、充電時に約300%〜400%という激しい体積膨張を起こします。

この膨張・収縮が繰り返されると、以下のメカニズムでデンドライト発生の引き金となります。

  1. 電極の微粉化と崩壊: 膨張のストレスでシリコン粒子が割れ、集電体から孤立する。
  2. SEI(固体電解質界面)被膜の破壊: 膨張によって表面の保護膜(SEI)が何度も破れ、新しいシリコン面が露出して電解液と過剰に反応する。
  3. 電流の局所集中(不均一化): 電極構造の崩壊やSEIのムラにより、電流が一部に集中する。その結果、リチウムイオンの拡散が追いつかなくなり、シリコンの内部に入りきれなかったリチウムが表面に「リチウム金属」として析出し、デンドライトへと成長してしまう。

2. Amprius社のデンドライト防止・克服メカニズム

Amprius社は、シリコンを「粒子」ではなく、集電体基板から直接垂直に生やす「100%シリコンナノワイヤ(Si-Nanowire™)」という微細な3次元構造にすることで、この課題を根本から解決しました。

① 応力を逃がす「ナノワイヤ間の隙間(ポロシティ)」

ナノワイヤ同士の間には、ミクロ・マクロレベルの適切な空隙(隙間)が設計されています。シリコンが充電時に横方向に膨張しても、この隙間がクッションとなって吸収するため、電極全体が破壊されることがありません。これにより電極の構造が強固に維持され、電流集中を招く「ひび割れ」を防ぎます。

② 直線的でフラットなリチウム拡散パス(低屈曲度)

従来の炭素粒子やシリコン粒子をバインダー(接着剤)で固めた電極では、リチウムイオンは曲がりくねった隙間を通る必要がありました(高屈曲度)。 一方、アンプリウスのナノワイヤは集電体に対して垂直かつ直線的な経路を作るため、リチウムイオンが非常にスムーズに移動できます。この優れた拡散性により、高速充電(6分で80%充電など)を行ってもリチウムイオンが表面に滞留せず、デンドライトの核となる「リチウム金属の析出」そのものを強力に抑制します。

③ 表面コーティング(弾性コア・シェル構造)によるSEIの安定化

アンプリウスの技術(特に最新の「SiCore」プラットフォームなど)では、シリコンナノ構造の表面に特殊な導電性・弾性を持つ保護層をコーティングしています。 これにより、シリコンが収縮しても表面のSEI被膜が破れにくくなり、電解液の継続的な分解反応をシャットアウトします。均一で安定したSEIが維持されるため、局所的な電場集中が起こらず、デンドライトの成長を未然に防ぎます。

3. その他の補完的なデンドライト防止技術

Amprius社のような電極側のナノ構造制御に加え、業界全体では以下のような化学的・材料工学的なアプローチが組み合わされてデンドライト対策が施されています。

  • 高濃度電解液(HCE / LHCE)の採用 電解液中のリチウム塩濃度を高める(または特殊な貧溶媒で希釈する)ことで、リチウムイオンの周囲の溶媒配位構造を変え、負極表面にフッ化リチウム(LiF)などを多く含んだ非常に強固で均一なSEIを形成させます。これが物理的な障壁となり、デンドライトの突起成長を抑え込みます。
  • 自己修復型静電シールド(SHES効果) 電解液中に微量のセシウム(Cs⁺)やルビジウム(Rb⁺)などの添加剤を加える技術です。充電時、わずかに突き出たデンドライトの先端(電場が集中する場所)にこれらのイオンが一時的に集まり、正の静電シールドを形成します。すると、後から来るリチウムイオン(Li⁺)は反発されて突起を避け、周囲の平らな凹部に優先的に電着するため、結果として表面が平滑に維持されます。

まとめ

Amprius社の高純度Si負極電池がデンドライトを防止できている最大の理由は、「ナノワイヤ構造によってシリコンの体積変化を完全にコントロールし、リチウムイオンの超高速な出入りを可能にした点」にあります。電極が壊れず、イオンの流れが滞らないため、デンドライトが成長する隙を与えないという極めて合理的なアプローチです。