銑鉄や銅合金などの溶解に高温が必要な材料の鋳造では、主型や崩壊性が必要な中子には砂が用いられます。

鋳物砂には、耐熱性・型に込めることができるための流動性、比重7程度の溶湯の流れに耐える強度、大量の溶湯が鋳型空間に入る際に、空間中のエアや、砂の添加剤から発生する大量の分解ガスや燃焼で発生するガスが抜けることができる通気性、鋳物が冷却した後には鋳物との分離性など矛盾する多くの特性が必要です。

そのため、古来鋳物産業が発達した地域では、鋳物砂が産出することも条件の一つでした。

そのような鋳物砂の国内外の産地を概観し紹介する、日本鋳造工学会の資料をご紹介します。

 

日本,中国,インドなどの生砂の違いは何でしょうか?

生砂に求められる条件は,適切な化学組成及び物理的性質を有し,かつ砂粒は適度な粒度分布を有し,粒形は丸形に近いものです.

 日本で使用されている生砂は,国産が半分弱でその他はオーストラリアやベトナムからの輸入です.国産砂のSiO2の含有量は産地により異なっています.国産砂は粒形がやや角張っている傾向にあるのに対して輸入砂は丸味を帯びているものが多いのが特徴です.

中国で得られる国産砂は,産地によって特性が大きく異なります.内モンゴル産は形状が丸味を帯びているがSiO2の含有量が低いのに対して,福建省産は角張っている傾向にあるがSiO2の含有量は高いです.両砂とも粗い砂が多く含まれていることから焼付きが発生し易いです.

 インドで得られる国産砂は,角張っていて粒度分布がシャープになる傾向にありますが,SiO2の含有量は非常に高いです.なお,粘土分の少ない細かい砂が得難いといわれています.

 韓国では,国産が少なくベトナムやオーストラリア等から輸入した鋳物砂を使用しており,大きな問題がないといわれています.

 なお,中国やインドでも造型機の高度化に伴い,国産砂では問題発生が多いことから,海外からの輸入が増加しています.

 

日本の鋳物砂産地

島根県大田市西20Km弱の温泉津(ゆのつ)鉱山。 島根県のトウチュウの国内産の珪砂は、現在、この温泉津鉱山で主に採掘されています。 ここの珪砂は、質・量ともに全国でもトップクラス。

島根県江津市(ごうつ) (ツチヨシ産業・瓢屋) 1933年、四国高松において、鋳物用山砂採取を生業として創業。江津工場は、島根県特産の温泉津硅砂・浅利硅砂を扱うなど、独自性を打ち出し、お客様には必要不可欠な存在となっています。ここで製造される乾燥硅砂は、自動車のエンジンや各種産業の鋳造物の生成素材やゴルフ場のグリーン用、バンカー用の砂などその高い品質で喜ばれています。
 ※太田市から西へ江津市さらに浜田市。

知多半島の鋳物砂 https://core.ac.uk/download/pdf/268280344.pdf
 美浜町に本社を置く株式会社トウチュウは、鋳物用砂販売、鋳造品加工を経営する企業である。トウチュウと知多半島の関わりは鋳物に使う原料にある。創業者森田美喬氏が所有する美浜町富士須賀の山で、鋳物に適した砂が 1932 年に見つかったことから会社が始まっている。この砂は、主として木曽川から流入する砂が伊勢湾の潮流で磨かれて粒度が揃ったもので、北西の強風で吹き上げられて知多半島に堆積する。森田氏はこの砂を野間砂と名づけ、名古屋、さらには東京の鋳物工場を訪ね歩き、日本車輛の恒松主任、日本鋳物協会の諏訪専務理事との劇的な出会いをきっかけに、鋳物砂の販売に成功した。
 しかし、戦後復興のなかで砂資源が不足し始め、トウチュウは野間砂の枯渇を見通して、原料産地を島根県やオーストラリア、インドネシアへとシフトした。このため、当社における原料調達地域は、今や知多半島ではなくなっている。

掛津 (山川産業) 事業所は、鳴き砂で有名な琴引浜がある京都府京丹後市に位置し、1966( 昭和41)年に創業を開始しました。良質な掛津鉱山のけい砂を原料に、山川産業の独自技術で加工を施し、様々な分野に優れた製品を供給しています。

山形県大石田町 (北日本産業株式会社)東北硅砂は、山形県大石田町に産する天然硅砂です(製造元:東北硅砂株式会社)。この硅砂鉱山は、山形県を南北に走る鉄道「奥羽本線 大石田駅」の西北約10kmに位置する次年子(じねんご)地区にあります。
 地層は新第三紀層鮮新世で、鮭川層といわれている蛙目(がいろめ)硅砂鉱床です。[硅砂知識] 現在採掘をしている鉱区は、埋蔵量推定約850万トン、露天階段掘法によるもので、粗鉱生産量は年間約12万トンにもなります。この原鉱を水洗分離採取した中間製品は、ガラス用硅砂として出荷されます。
 また、中間製品を乾燥しフルイ分けした製品は、鋳物、建材用の硅砂として、県内はもとより北海道、東北、関東、東海の各地方へ出荷されます。

川口市  埼玉県川口市は、江戸時代以前より鋳物産業が根付いてきた町。荒川の砂や粘土が型に適していたことなどから、一大産地となりました。