レアアースの供給不安へ、日本も対策を進めている。日本企業も調達を進めている。記事があったので引用してご紹介。レアアースは、種類が多くその調達は単純ではない。

日経記事:2026年5月17日

 

住友鉱山がレアアース2割増産、双日は新鉱山 脱中国へ東南アに供給網

日本企業が中国に依存しないレアアース(希土類)調達網の構築へ東南アジアに照準を合わせる。住友金属鉱山はフィリピン産原料を使って燃料電池に使うレアアースを2割増産する。双日もオーストラリア資源大手とベトナムやマレーシアなどで新鉱山を開発する。

日本企業によるレアアースの脱中国サプライチェーン(供給網)はこれまで豪州が軸だった。さらなる代替先として東南アジアにも供給網を広げる。より安定的な調達基盤を確立して日本の製造業の競争力を守る。

燃料電池向け材料の需要倍増

住友金属鉱山は燃料電池に使うレアアースの一つであるスカンジウムを2026年度中に2割増産する。出資するフィリピンの鉱山で産出した鉱石由来の原料を播磨事業所(兵庫県播磨町)で製品に仕上げる。同事業所で人員体制を増強する。

スカンジウムを燃料電池に使うことで作動時の温度を下げ、耐久性を高められる。急拡大する人工知能(AI)データセンター向けの電力供給源として燃料電池が注目され、スカンジウムの世界需要は25年に倍増した。

世界のスカンジウム供給量の8割は中国が占め、日本製は1割だ。他にロシアやカナダも生産している。日本でスカンジウムを大規模に供給できるのは住友金属鉱山だけだ。中国依存を回避したい欧米企業の需要開拓も狙い、さらなる増産も視野に入れている。

中国が世界の7割を生産

レアアースを巡っては埋蔵量が豊富な鉱床が中国に集中しており、世界生産の約7割を占める。日本を含む各国はこれまで需要の大部分を中国からの輸入に頼ってきた。そうした経緯もあって中国政府はレアアースを他国への経済的な威圧に利用している。米中関係が悪化した25年4月にはスカンジウムを含む7種類のレアアースの輸出規制を開始した。

さらに中国は26年1月、デュアルユース(軍民両用)規制に基づく対日輸出の規制強化も公表した。レアアースの一つで高性能磁石などに使うジスプロシウムなどの重要鉱物も対象となったもよう。日本にとって中国に依存しない調達基盤の構築が急務となっている。

豪州などでレアアース鉱山の開発が進むがまだ中国に依存する状況は変わらない。そこで注目されているのが東南アジアだ。未開発の有望レアアース鉱床が多数、あるとされる。米国政府も25年10月、タイやマレーシアとの間でレアアースなど重要鉱物の供給網に関する覚書に署名した。

エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の担当者は東南アジアについて「レアアースサプライチェーンの存在や輸送面、ポテンシャル(埋蔵量)、政府開発援助(ODA)をはじめとした長年の日本との関係性などもあり有望だ」とみる。

双日は豪ライナスと新鉱山開発へ

双日は豪資源大手ライナスとベトナムやマレーシアなどでレアアース鉱山を新規開発する。双日がJOGMECと共同で設立した「日豪レアアース」を通じて3月に合意した。今後、鉱山開発に向けた地質調査を共同で進める。

レアアースの製錬でもライナスが持つマレーシアの拠点を活用する。足元で生産能力の拡張に向けた工事を進めており、27年に完了する見込みだ。

双日は11年からJOGMECと複数回にわたってライナスに出資してきた。高性能磁石に使うネオジムなどの豪州産レアアース輸入を進めており、足元では輸入品目も拡大している。今後ライナスは別の鉱山の拡張も検討する。

(茂野新太、佐藤優衣)

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日産、EVでレアアースの使用量9割減 中国からの調達リスク抑制

レアアースの使用量を大幅に抑えた「新型リーフ」

日産自動車は部品メーカーと連携し、中国への依存度が高いレアアース(希土類)を大幅に減らす技術を開発した。電気自動車(EV)の新型リーフに搭載したモーターで、使用量を過去のモデルに比べ9割減らした。

中国はレアアースの輸出規制を経済的な威圧行為に利用している。レアアースに頼らない代替技術の確立が、自動車をはじめとする製造業の競争力を左右する。

削減したのはレアアースのうち、特に中国依存度が高い「重希土類」。EVモーターには耐熱性を高めるため、重希土類のジスプロシウムやテルビウムを添加している。重希土類は中国に生産が集中しており、他のレアアースよりも調達網の分散が難しい。

中略

中国政府はレアアースを経済的威圧に使っている。スズキは25年5月に国内で生産する小型車の生産を停止した。中国政府が米国による相互関税への報復措置の一環でレアアースの輸出を規制したことが影響した。

さらに26年2月には三菱重工航空エンジンなど20の企業・団体を輸出規制の対象リストに加え、軍民両用(デュアルユース)品の輸出を禁止した。レアアースを含む重要鉱物が対象に入ったとみられる。

レアアースはEVや省エネ家電、スマートフォンの部品などで幅広く使われている。中国政府の動向が日本企業の活動に大きく影響する今の状況から脱するには、レアアースを極力使わない代替技術の確立が経済安全保障上、重要になる。

日本勢が強いスマートフォン部品でもレアアース使用量の削減へ取り組みが進む。ミネベアミツミはスマホカメラのピント調節や手ぶれ補正などの役割を担う「アクチュエーター」と呼ばれる部品で重希土類フリーを実現した。

米相互関税への報復でレアアース調達が難しくなることを見越し、重希土類を一切使わなくても性能を維持できる製品の開発を加速した。部品の加工精度を高めることで、この難題を解決した。

25年秋以降、販売するスマホ向けのアクチュエーターは全て重希土類を使用しない製品に切り替えた。顧客企業からの受注増に対応し、数十億円を投じフィリピンに新たな生産ラインを設ける。

米ゼネラル・モーターズ(GM)がトランプ米政権が進めるレアアースなどの重要鉱物の備蓄計画に参加するなど、レアアース対策は世界に広がる。日本政府が主導し、南鳥島沖で試験掘削も進むが、産業利用にはまだ時間がかかる。当面は官民で代替技術の確立を進めることが重要となる。