東北大学  八百川 盾

1. 日時 平成18年6月19日(火)11:00?17:00
2. 会場 秋田大学VBL大セミナー室
3. 発表概要
3.1 FCDの被削性に及ぼすミクロ組織と化学成分の影響
   高周波鋳造株式会社 ○坂本一吉,渋谷慎一郎
(技術部会資料No.73-2)
 球状黒鉛鋳鉄(FCD600)の被削性に及ぼすミクロ組織と化学成分の影響について調査を行った.その結果,FCDの被削性を改善するためには合金添加量を適正にし,低めの硬さを狙う必要があることが明らかとなった.また,ドリルによる穴明け切削にはある程度の硬さが必要であるため,加工条件に応じた材質にする必要がある.また,黒鉛を微細にすればするほど,工具の被削性が良好となることが明らかとなった.

3.2 鋳鉄溶湯からの脱マンガン
    岩手県工業技術センター ○高川貫仁
(技術部会資料No.73-3)
 銑鉄鋳物の鉄原料は,大半が鉄スクラップであり,鋳鉄製品の品質に及ぼす鉄スクラップの品位の影響が大きい.本研究では,酸化鉄添加による鋳鉄溶湯の脱マンガン技術について検討を行った.その結果,脱マンガン反応は酸化鉄を添加するとすぐに生じ,約5分で終了する.また鋳鉄溶湯中に酸化鉄4%添加することによりマンガン含有量は0.34%まで減少した.更に,酸化鉄試薬のかわりに鋼材酸化皮膜も脱マンガン剤として使用できることが明らかとなった.

3.3 秋田県産業技術総合研究センターにおけるマイスター研修事例
    秋田県産業技術総合研究センター ○内田富士夫
(技術部会資料No.73-4)
 秋田県産業技術総合研究センターが県内企業の技術者へ工技センターが所有している先端技術を習得するために実施しているマイスター研修事業について紹介を行った.平成17年度は,「3次元CADによるモデリング技術コース」,「光造形システムを活用した試作開発技術コース」「構造解析を活用した最適設計技術コース」「鋳造CAEを活用した最適設計技術コース」「射出成形CAEを活用した最適設計技術コース」を実施した.参加各社の技術開発への応用例が示された.

3.4 片状黒鉛鋳鉄鋳放し面の溶融アルミニウム合金めっき処理による耐熱性の評価
   山形県工業技術センター ○松木俊朗,菅井和人,槙 寛
岩手大学 堀江 皓
(技術部会資料No.73-5)
 焼却炉や生ゴミ処理機にもちいられるステンレス鋼の代替材料を目指して,耐熱性,耐食性に優れた溶湯アルミニウムメッキ処理の一般鋳鉄鋳放し面への適用の可能性について調査を行った.FC200相当のねずみ鋳鉄を,表面錆び除去後に1073Kのアルミニウム溶湯中へ浸漬することによりアルミニウムメッキを施した.その結果,アルミニウムメッキしたした処理剤は耐酸化性が向上することが明らかとなった.また,メッキ層の剥離を防ぐため,使用前に1073K程度での加熱拡散処理が必要であることが明らかとなった.
 
3.5 カップ法における最適カップ条件
    東北大学大学院工学研究科 ○八百川盾
(技術部会資料No.73-6)
 半凝固法の一種であるカップ法で最適半凝固スラリーを得るためのカップ寸法の設計およびカップへ注湯する際の溶湯温度,注湯時間,注湯高さの条件とスラリーミクロ組織の関連について調査を行った.その結果,最適固相率を得るためのカップ寸法条件を熱量保存の関係から求めることができた.また,初晶の大きさには注湯時間,注湯高さなどの因子が影響することが明らかとなった.

3.6 球状黒鉛鋳鉄用の高Mnスクラップ対応の為の最適鋳込み成分について
    福島製鋼株式会社 ○斎藤弘典
(技術部会資料No.73-7)
 近年,溶解材料として用いているプレス鋼板中のMn濃度が増加傾向にある.球状黒鉛鋳鉄ではMn濃度が高くなると種々の欠陥の原因となると考えられ,Mn濃度は0.4%以下と限界値を設定している.本研究では,将来の高Mn化に備えて,Mn0.55%でも現行品と同等の品質をえるための溶湯成分の確立を目指した.その結果,機械的性質へのMn濃度の影響は小さく,引け巣への影響が無視できないことが明らかとなった.引け巣対策としてC,接種剤添加の有効性が明確となり,成分狙い値を確立できた。