東北大学  八百川 盾
1. 日時 平成19年1月31日(火)13:00?17:00
2. 会場 福島コラッセ
3. 発表概要

3.1 マグボール生産化に向けた歩留り向上
福島製鋼(株)結城雅道,○鵜澤宏一
(技術部会資料No.74-2)
 傾斜冷却板法は,固液共存状態のスラリーを生成するセミソリッド法の一つであり,射出成形用マグネシウムビレットなどの製造プロセスとして注目されている.傾斜冷却板法の実状はラボレベルにおける検討までとなっており,安全性,省エネルギー化による環境的観点からも工業レベルでの実用化が切望されている.そこで,傾斜冷却板法の工業化を図る為,金型離型剤,鋳造方法等を変更することによる歩留り向上を目的とした.
 結果,スラリー生成に寄与する傾斜冷却板の諸条件を変更する事により,目標とする最小結晶粒径60μmを達成した.一方,金型離型剤においては,従来の酸化マグネシウムを水溶性離型剤に変更する事により鋳造棒表面の凹凸発生が緩和され,抜型後の表面が平滑で金属光沢のある鋳造棒を製造できた.鋳造棒表面の凹凸が減少し外観加工代が低減される事により,歩留りは酸化マグネシウムの87.50%から水溶性離型剤の93.75%へ6.25%向上した.また,傾斜金型に鋳造することにより内部欠陥が減少した.これにより微細球状結晶を有するマグネシウム鋳造棒を高歩留りで製造する事が可能となった.

3.2 生型造型機におけるFCD直押湯方案
(株)榎本鋳工所 ○榎本康利
(技術部会資料No.74-3)
 コスト面及び生産性の改善を狙い,従来フラン型で製造してきたFCDの小ロット品を生型にシフトした事例を報告した.対象は,重量が15kg程度で5~30/ロットの製品である.従来の鋳造方案では,フラン型は直押湯,生型はサイド押湯を標準としていたが,直押湯方案では冷却中に堰が自然に折れるため仕上げ工数が少ない.そこで,今回の製品は生型直押湯とした.また,生型では押湯に高発熱のスリーブを用いると良いが,コスト面では課題があることも報告された.

3.3 鉄合金の介在物による組織制御
   福島県ハイテクプラザ 光井 啓
(技術部会資料No.74-4)
 鋼中に存在する硫化物は,一般に延性,靭性,耐食性といった鋼の性質を害するため有害物質としてできるだけ排除する努力がなされてきた.しかし最近ではむしろ,フェライト組織の微細化や快削鋼への応用など組織制御に有効利用しようという試みが行われている.鋼中に生成した硫化物が鋼の性質にどのように影響するかを考える際に着目すべき点として介在物のサイズ,量,分散・形態および組成・相安定性が挙げられる.そのため鋼中の非金属介在物の形態制御に関する研究は古くから行われ,その生成過程,形態変化は状態図と関連付けて議論がなされている.組織制御や材料開発行う際の指針としてしばしば状態図が利用されるが,4元系以上の多元系合金である実用材料を2元系や3元系実験状態図から推定することは極めて困難である.それに対して,熱力学的解析により相平衡を計算し,実験値の不足を補充しながら多元系合金の状態図を効率よく作成する「計算状態図」の利用が急速に進展してきた.しかし鉄鋼材料において炭窒化物とともに重要となる硫化物に関する熱力学的解析はFe-Mn-S系を除いてほとんどなされていないのが現状である.そこで,鉄鋼の熱力学データベースの構築を目的として,Fe-Cr-Mn-Ni-Ti-C-S系の熱力学的解析を行った.さらに硫化物を利用した材質制御の例としてFe-Cr合金およびインバー合金中のチタン硫化物(TiS),チタン炭硫化物(Ti4C2S2)を取上げ,それらの生成挙動を調査し熱力学的考察を行うとともに鋼中硫化物を利用した材質制御の可能性を検討した.

3.4 福島の鋳物研究会活動
   福島県鋳造技術研究会 ○大里盛吉
(技術部会資料No.74-5)
 1968年7月に発足し今年で40年目を迎えた「福島の鋳物」研究会(福鋳会)の紹介があった.まず発足当時の様子,初期の活動内容,20周年式典などの研究会の歴史が報告された.次に,現在福鋳会で運営しているウェブサイトの紹介があった.ウェブサイトには県内の史料収集などがまとめられている.また内容も頻繁に更新されている.
 
3.5 片状黒鉛鋳鉄におけるチル組織の電磁非破壊評価
    東北大学流体科学研究所 ○内一哲也,松川淳,阿部利彦,高木敏行
岩手県工業技術センター 池浩之,高川貫仁
北海道大学 堀川紀孝
(技術部会資料No.74-6)
 鋳鉄のチル組織は機械的性質や切削性に影響を及ぼすため,その評価が重要である.現在,チル組織の有無や量の評価には破面の目視,顕微鏡観察,硬さ試験が行われているが,これらの方法では製品の切断・圧痕などのため全数検査はできない.本講演ではチル,フェライト,パーライト組織および黒鉛の各組織含有量や硬さと鋳鉄の電磁気特性との関係性を調査した.また,交流磁化法に基づく計測を行い,チル組織含有量を評価した.

3.6 金型用亜鉛合金の機械的性質に及ぼすCu,Ti添加の影響
    岩手大学大学院工学研究科 ○平塚貞人,堀江皓,小綿利憲
(技術部会資料No.74-7)
 金型用亜鉛合金であるZAS合金(Zn-Al-Cu合金)は鋳鉄に比べて低融点で鋳造ができる.現在では,試作自動車部品用プレス金型として使用されていが,高張力鋼のような高強度の材料をプレスするための金型の開発が求められている.ZAS合金(含有Cu量4mass%:以下mass省略)に対してCu量を6%,8%,10%に増加させた試料についてCu量と引張強さの関係を調べた.図1に示すように,熱処理有の試料,熱処理無の試料どちらもCu量が増加すると引張強さが増加した.また,熱処理有の試料は熱処理無の試料に比べて引張強さが大きいことが明らかになった.さらにCu量とブリネル硬さの関係について調べた結果,熱処理有の試料,熱処理無の試料どちらもCu量が増加するとブリネル硬さが増加した.また,熱処理有の試料は熱処理無の試料に比べてブリネル硬さは大きいことがわかった.引張強さとブリネル硬さがCu量の増加に伴い増加するのは,ε相が増加することが関連すると考えられる。