東北大学工学研究科 及川 勝成
1. 日時 平成19年7月19日(木)13:00~
2. 会場 岩手県商工会連合会?2F会議室
3. 発表概要
3.1 粒子法による伝熱?凝固解析手法の検討
東北大学工学研究科 平田直哉 安斎浩一
現在,様々な工業プロセスにおいてコンピュータ・シミュレーションは 重要な役割を果たしている.鋳造分野では流動・伝熱・凝固・変形と いった多くの現象がコンピュータ・シミュレーションによって解析されているが,これらは複雑に相互作用をしているので同時に連成解析 をするのは極めて困難である.そのため,引け巣などの欠陥は新山定 数などを用いて間接的に見積もられるのが主であった.一方で近年, ラグランジュ系数値解析手法である粒子法が提案された.粒子法によれば,流動・凝固・変形解析など多くの現象を同時に連成解析することができ,引けなどの欠陥も直接解析することができると考えられる. 本研究では粒子法による連成解析の第一歩として,凝固解析を試みた. ラプラシアンの計算モデルについて,3種類の計算手法を比較検討した結果,粒子法の勾配モデル及び発散モデルを組み合わせたものを用いることで,差分法と同等の精度が得られることが確認された.
3.2 いわて鋳造研究会における鋳鉄材質評価について
岩手大学工学部附属鋳造技術研究センター 菊池一貴
「いわて鋳造研究会」は、平成15年に水沢地区鋳物企業の技術強化と、新技術、新商品の研究開発が可能な企業体質への改善を図ることを目的に設立された。
この研究会事業の一つとして始めた鋳鉄材質評価方法は、各企業の溶解技術の向上を目的とし、機械的性質、組織観察及び分析値を用い、総合的に材質特性の評価を行うものである。評価の方法として、JIS規格を満足する事を最低条件とし、理論引張強さと実際の引張強さから求める引張強さの成熟度、理論硬さと実際の硬さから求める比較硬さ(FCDは硬さの成熟度)の3つを評価して、材質評価をA、B、Cの3つに分類した。得られた材質評価基準より、その要因を組織及び分析値から検討を行った。
3.3 アルミニウム合金溶湯の清浄度調査
岩手県工業技術センター 材料技術部 岩清水康二
岩手県内のアルミニウム合金鋳造企業を対象にアルミニウム溶湯の清浄度の調査とその評価基準の策定を試みた.調査の方法はKモールド法,減圧凝固法,溶湯清浄度評価装置による濾過試験を行った.また,国内先端企業においても同様の調査を行い,県内企業との比較をした.
その結果,溶湯の清浄度を確認できた.また,岩手県内企業は先端企業に比べ,KモールドによるK値が高く,介在物サイズが大きいことが分かった.今後,アルミニウム溶湯の清浄度の評価基準を策定するには,清浄度に及ぼす溶湯処理条件や溶解条件の影響,機械的性質に及ぼす影響等を検討していく必要がある.
3.4高マンガン鋼スクラップをリサイクルした球状黒鉛鋳鉄の材質特性
岩手大学 小綿利憲
希土類元素(RE)を添加した高Mn球状黒鉛鋳鉄を作製し,自動車車体用高Mn鋼スクラップからMnを除去せずに,高強度な球状黒鉛鋳鉄が製造可能であるか検討し,リサイクルの可能性について検討を行った.
本実験にて得られた高Mn球状黒鉛鋳鉄鋳は,Mn含有量0.9mass%で引張強さ550MPaを超え伸びは15%程度であった.JIS規格のFCD500の伸びは7%以上となっており十分満足する値が得られた.また,Mn含有量1.2mass%以上で引張強さが700MPaを超え,伸びも2%以上でJIS規格のFCD700を満足した.
このように,JIS規格を満足することができ,高Mn鋼スクラップからMnを除去せずにそのまま球状黒鉛鋳鉄を作製できることがわかった.しかし,伸びを必要とする球状黒鉛鋳鉄では,高Mn鋼スクラップに含まれている微量不純物元素,特にりん(P)やクロム(Cr)が伸びの低下に起因することを考慮する必要がある事を報告した.