永瀬重一さん(40歳)永瀬留十郎工場社長
第83巻(2011)第8号
期せず若くして社長就任.
“仕事は面白くなければならない”
をポリシーに
社員の思いを大切にして,
いい仕事をしていきたい.
<プロフィール>
- 氏 名: 永瀬重一さん(40歳)永瀬留十郎工場社長
- 出身地: 埼玉県
- 略 歴: 1993年東京大学工学部卒業,4月小松製作所入社,96年永瀬留十郎工場入社,2010年11月社長就任.現在に至る
Q 社長に就任されて半年くらい経ちましたが,意識や生活の変化などはありますか.
A 昨年,先代社長の父が亡くなったのをきっかけに社長に就任することになったのですが,こんなに早く継ぐとは思っていなかったので,実は自覚に乏しいという状態なんです.名刺には社長と書いてありますが,やっていることはそれほど大きく変わったわけではないので,具体的に社長業はなにかというと,まだまだわかっていないというのが正直なところです.しかし,対外的な付き合いは増えました.社長になった以上,何かを決断するのが私で,また私の発言は「社長の発言」ですから,周りからもそういう目で見られます.だからこれまで以上に言動には気をつけなければいけないという意識は持っています.幸い,社内にはベテランの経験者がいますので,頼りながらなんとかやっています.
Q 子供の頃からいずれは会社を継ぐという気持ちがあったのでしょうか.
A 実は父からは継いでほしいと言われたことはなく,何でも好きなことをやっていいよと言われていました.家ではそれほど仕事の話もせず,趣味や政治の話などが多かったんです.私自身も,他の職業もいいなと思ったこともありましたが,やはり漠然といずれは継ごうという気持ちは持っていましたね.大学に進学するときには継ぐことを決めて進学先を選びました.といっても大学は機械科でロボットの研究をしていたので今の仕事とはちょっとずれるのですが,その後の就職は工場の現場に近いところを選びました.父も,口では好きなことをやっていいとは言っていても,継いでほしいという気持ちはあったのでしょう.継ぐことを決めたことを報告したときは喜んでくれました.
Q 第6代目の社長ということで,歴史のある会社だということがわかります.お仕事の内容もだいぶ変化があるのだと思いますが.
A 会社の創業が明治4年で,私が生まれた年がちょうど100周年だったんです.だから会社の創業年数は数えやすいんですよ.今年私が40歳なので,創業140周年ですね.仕事内容は,創業当事は鍋とか釜とか,そういうものを作っていたと聞いています.あとは暖炉とか鉄道用の部品とか…….そこからいろいろと仕事の範囲を広げていって,今は半導体製造装置とか,液晶製造装置とか,半導体関係の部品を主に扱っています.
もともと永瀬家は,幕府の川口宿鋳物師だったという歴史があります.免状のようなものがあり(右写真),これをもらって仕事をしていたんですね.今,ここには安政と天保時代の2つが残っています.そもそも永瀬という姓自体,鋳物をやっている人に幕府から与えられた姓で,だから親戚じゃなくても鋳物をやっていればみな永瀬になってしまうということがあったそうです.
Q 歴史と努力に裏付けられた技術力には定評があって,埼玉県鋳造技術コンクールで8年連続県知事賞を受賞されていますね.
A 父が亡くなって,ちょうど私が訃報を書いているときに「今年もだよ」という知らせが入りましたので,父に8年目の受賞を知らせることができず残念でした.でも8年連続という実績は結構なプレッシャーで,当然「今年は?」という話になりますよね.今年はもういいです,勘弁してくださいって思っているんですけれど(笑).
今年は敢えてほとんど未経験者にやってもらうことにしました.こちらも指導はしないで結果を見て考えようということにして.私が全部言ってしまうと育ちませんからね.
Q お仕事をしていて楽しいこと,またこれから取り組みたいことはどんなことでしょうか.
A 私の会社には,他社では不良が出てうまくいかず,困っている仕事が持ち込まれることがしばしばあります.それをうまくまとめることができたときは,とてもやりがいを感じます.またそこで信頼関係が生まれて,こちらのお願いで図面の変更などを受け入れてもらえたりするようになるのもとてもありがたいことだと思っています.
仕事って,面白くなければならないと思うのです.「やらされている」という気持ちがあると仕事は面白くありません.今,あちこちで品質管理ということが言われていますが,その点うちの会社はちょっと弱いのかなというところがあり,そこに取り組みたいと思っていますが,品質管理をきちんとして,その結果不良が減ったら面白いのだということを社員にうまくわかってもらうことが大切だと思っています.日々やっていることは面倒くさい仕事にしか思えなくても,たとえば見学に来られるお客さんが「こんなもの作れるんですか!」と驚かれるのを見ると,誇らしい気持ちになって皆の励みになります.そういう社員の思いを大切にして,また周りの人に助けてもらいながら,これからがんばっていきたいと思っています.
<コラム> 永瀬さんに5つの質問!
Q1 趣味は?
Q2 特技は?
Q3 永瀬さんにとって鋳物とは?
Q4 こころがけていることは?
Q5 今,いちばんほしいものは? |
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