(アルミニウム合金)ダイカストが一般に溶接や熱処理が困難な理由をわかりやすく教えてください(近年行われている対策方法も含めて)
一般的にアルミニウム合金ダイカストは,高速・高圧で金型に溶湯を射出するため,ダイカスト中に空気を多く巻き込んでいます.その量は20-100ml/100gAlとも言われております.そのため,T4・T6・T7など溶体化処理を伴う熱処理を通常のダイカストに行うと内部の空気が膨張し,膨れブリスターが発生します.同様に部分的に溶解させる溶接は内部の空気が急激に蒸発するため,酸化防止のシールドガスを破り大気を吸収したり,溶接部に多くのブローホールの発生原因になったりします.一般的に熱処理可能なアルミニウム合金鋳物中のガス量は3ml/100gAl以下,溶接可能なガス量は1ml/100gAl以下と言われています.
溶接や熱処理可能にするためには,巻き込まれるガス量を減らすことばかりでなく溶湯中に含まれるガス量すなわち水素量も減らすことが重要です.使用する溶湯の脱ガスをすること,そして巻き込みガスの少ないダイカスト工法を選ぶことです.巻き込みガスの少ない工法では,PF法,低速充填法,高真空ダイカスト法などを選び,ガスの巻き込みが少なくなる方案にすることが大事です.
(『鋳造工学』89巻2号掲載)