ご挨拶

~新しい風を吹かせる~

 2020(令和2)年5月に開催された定時社員総会後の理事会におきまして,公益社団法人日本鋳造工学会の2020・2021(令和2・3)年度の会長という大役を拝命いたしました.日本鋳造工学会は1932(昭和7)年に設立され,今年創立88周年を迎えた伝統のある学会です.これまで学会の発展に尽力された諸先輩方に改めて感謝申し上げますとともに,その歴史と責任の重さを受け止め,微力ながら鋳造工学ならびに業界の発展に尽くして参ります.

 まず,今般の新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになった方々に謹んで哀悼の意を表するとともに,感染された方々やそのご家族,不安のなかにおられる方々に対して,心からお見舞いを申しあげます.現在,わが国を含む世界は,新型コロナウイルス感染症の拡大という難局に直面しており,新型コロナウイルスの感染防止・拡大抑制のためにも,顧客,従業員やその家族の健康・安全の確保を図り,業務継続体制を構築・維持することが喫緊の課題であり,学会としても迅速,適切,柔軟に対応して参ります.

 新型コロナウイルス感染症の感染者が確認された国・地域は214となり未曾有のパンデミックとなっています.感染者数拡⼤と医療体制危機が深刻となる中,ほとんどの国・地域において感染地域の封鎖や外出禁⽌(ロックダウン),出⼊国の制限等の措置が強化されています.このため通常の経済活動は⼀時的に著しく制限がされ,⼈々の消費や⽣産活動に深刻な影響を与えており,パンデミックにより「世界経済が同時に凍りつく」という状況が現実に起きています.

 すでに⾃動⾞業界では,国内および海外の⽣産⼯場において⾃動⾞⽣産の調整または縮⼩の動きが出ており,4~6月期の鉄鋼需要でリーマン・ショック以来の2000万トン割れが見込まれる鉄鋼業界では高炉休止による減産が本格化しています.特殊鋼も需要減への対応が進んでおり,市場規模の小さい非鉄・アルミ業界でも海外拠点の操業や業界再編に影響が出ています.リーマン・ショック時,鋳造業界は,大幅な経済の落ち込みにより,前年比で約40%減という大幅な生産量と生産額のダウンに至り,約10年たった現在でも,生産量はリーマン・ショック前の80%までしか回復していない状況です.感染拡大の影響が広く実体経済へと波及するなかで,日本のものづくりを支える基幹産業として,取引先や社会をしっかりと支え続けていくことが責務であり,全力を向けてこの危機的状況に取り組むことが,日本鋳造工学会の社会的使命と考えています.

 日本鋳造工学会では,学会の活性化を図るために,2009(平成21)年に第1期長期ビジョンを策定し活動をすすめ,2014(平成26)年には第2期長期ビジョンを策定し,それに基づいて活動してきました.具体的には,鋳造に携わる仲間を増やすことを狙いに,鋳造の魅力を今まで以上に多くの若い方々に伝える活動を推進してきており,正会員数3000名,維持会員数400社の目標を掲げ,2020年3月現在の状況では,正会員数:2674名,維持会員数:409社となり,正会員数の目標値は未達ながら,維持会員数は達成しました.第2期長期ビジョンから5年が経過し,学会を取り巻く環境も変化してきています.そこで,第2期の長期ビジョンをブラッシュアップし,第3期長期ビジョンを策定することで,学会を活性化し,さらなる発展を目指します.

 具体的には,第一に,素形材関連の基礎研究を推進し,分野横断・産学連携の促進を行います。さらに環境の変化に対応した新しい技術としてAI & IoT部会を新設,金属積層技術などの研究部会も設置し,部門間の連携も強化致します

 第二に,産学官連携や大学横断研究プロジェクトを立ち上げ,技術伝承と若手人材の育成を推進します.

 第三に,グローバル活動として,国際会議への計画的な参加を行い,特にアジア地域の関連学協会との連携を強化します.2021年には,室蘭でSPCI-XIIを開催します.さらに,学会の主要行事として全国講演大会,技術講習会のさらなる活性化,学会の大きな柱の一つである鋳造工学誌への投稿環境の充実により掲載記事の質・量の拡大を図り,ホームページを通して広く非会員にも情報発信を行っていきたいと考えています.

 全国約3000人の会員自らが発信できる学会へと力をつけていくとともに,単会でも時代に適応した大会やイベントを企画できること,地域の個性を伝え交流と研鑽の場を築けることを提案するチャンスです.これまで様々な事業に挑戦されてきた先輩方から襷を受け継ぎ,私達の挑戦を示す機会です.多くの方へ感動の嵐を提供し,そして私達自身が士気を鼓舞する時を創り上げます.「人口減少」の課題を抱えた日本は,これまでに例のない時代も迎えています.

 日本鋳造工学会として,この課題に左右されない地域力・経済力を持つために,新たな道を創る時だと考えます.鋳造業界は,基盤産業として,時代ごとにイノベーションを遂げ,道を築いてきたDNAがあります.

 今,新時代へのイノベーションを起こすのは私達,鋳造業界です.時代が移り変わっても,人が集まる学会となるためのアイデアや想いをどんどん口に出し,体現していきましょう.

そうです.今,【新しい風を吹かせる】時なのです.

Then, you can be THE WIND OF CHANGE !!

皆さんは,変化の風になれるのです.変化を受け入れる・もたらすことは,なかなか難しいと考えがちです.しかし,皆さんはすでにその変化を受け入れて生活をしております.昨年の消費税増税に伴うキャッシュレス決済の導入推進において,急速に電子マネーなどの利用が増加しております.また,今回の新型コロナウイルス感染症拡大による社会活動の停滞において,出張による企業訪問に代わりweb会議の活用・普及など,皆さんは知らずに新しい価値(=風)を享受しております.

日本鋳造工学会に吹かせる新しい風とはつまり,これまで有した学会としての魅力や資源を活かし,サービスや経済が循環するしくみづくりに挑戦し,各支部の気を作って行くことが急務と考えます.鋳造というニアネットシェイプの利点を最大限に生かし,自動車はもとより航空,宇宙,原子力など,日本の産業を支える基盤として,またグローバル成長の次へのステージへむけて,AIやIoT技術,制御・測定技術の研究・開発から生み出される様々なITなどを活用し,イノベーションの創出を目指します.活気を創るモデルを築くことで,学会として日本全体,そして海外へと展開が臨めます.事業の企画・実践・検証・バージョンアップを繰り返す過程を通じて,委員会を中心に新規事業を立ち上げ,遂行していくことを掲げていきます.

最後に,最優先の社会課題として,新型コロナウイルス感染症の拡大という難局への対応に万全を期し,日本ものづくりの基礎を担う素形材産業に係る学会としては,このような局面から,オールジャパンでの産学官連携を促進し,普遍的な役割を強く意識しつつ,テクノロジーの活用にも取り組み,利便性の高い次世代のサービスを届けることで,日本経済の持続的な成長と社会課題解決に対して,最大限の貢献を果たしていくことが,最大のテーマだと考えています.今般,会長という責を引き受けることとなり,わが国の素形材産業の重要な一端を担う存在として,関係各位の声に耳を傾け,ご支援とご協力を仰ぎつつ,意思を持って取り組んで参ります.

 

公益社団法人 日本鋳造工学会
会長  清水 一道