「アルミニウム合金ダイカストで,ゲート断面積やオーバーフロー断面積の厚みと幅で理想的な比率はあるのでしょうか? 

まず,湯口ゲートについて考えます.湯口ゲートの形状に要求されるのは,充填時のゲート速度を適正にするための断面積を設定することと,充填完了後になる べく長い圧力伝播時間を確保することです.

断面積を小さくすればゲート速度を速くできますが,凝固完了が早いために圧力伝播時間が短くなります.つまり, このバランスで断面積を決定することになります.その上で,同じ断面積において,厚さと幅の比率で凝固時間がなるべく長くなる形状を考えると,理想は 「幅=厚さ」ということになります.

これは,充填中のゲート抵抗を最小限にするという観点からも同じ結果が導かれます.しかしながら,ゲート厚さが近傍の 製品肉厚以上になると,ゲート切断,堰折りといった工程で,最脆弱部が製品部になってしまうことから,製品の歪みやクラックなどの問題が生じる可能性が高 まります.

また,そもそも,薄肉が特徴のダイカスト製品に,極端に厚いゲートを設置できる場所を見つけるのは困難でしょう.これらを総合的に考えて,幅と 厚さの比率を決めるのではなく,「設置できる最大の厚さ」を設定し,「必要なゲート断面積を考慮して幅を決定する」,という手順が良いと考えられます.

オーバーフローは,ガスや不純物を含んだ先湯の排出が主目的です.この目的に対しては,必要な体積を確保すれば,厚さと幅の比率は問題にはなりません.し かし,同じ体積のオーバーフローを考えたとき,薄すぎると,投影面積が増えて,充填時の型開き力が増加してしまいます.逆に厚さを大きくとると,金型から 抜けにくくなり,押し出しピンの設置の必要性などの弊害が生じます.

また,薄くて広いオーバーフローは,広範囲の金型温度を少し上昇させ,厚くて狭い場合 は,局部的に大きく上昇させます.こちらも,幅と厚さの比率を定義するのではなく,状況と目的に合った形状を設計する必要があります.