フラン自硬性鋳型の欠点として,元砂の種類により硬化速度,強度に影響を受けやすいことが知られていますが,なぜですか? また,一度再生砂になると,元砂の影響は少なくなることが知られているようですが,なぜですか?

 フラン自硬性鋳型は,1940年代に米国クエーカーオーツ社によって,フランバインダが酸触媒によって常温で硬化する性質が見出され,更に1950年代に米国で尿素変性フランとすることで砂同士の接着力が向上することが見出されました.

 その結果,十分な強度を有する鋳型が作製可能となり,鋳造用に適したプロセスとなりました.そして,現在においても自硬性鋳型の主力プロセスとして鋳鉄鋳物を中心に広く使用されています.

 フラン自硬性鋳型に使用されるバインダと硬化触媒は,

  バインダ ・・・・ 尿素変性フラン
  硬化触媒 ・・・・ 硫酸,燐酸,有機スルホン酸

の構成で成り立ち,砂にバインダと硬化触媒を混錬して型込めし,常温で一定時間放後,抜型となります.ここで,触媒である硫酸,燐酸及び有機スルホン酸は強酸であることがポイントです.中性付近の尿素変性フランバインダを強酸領域とすることで,バインダ内のフルフリルアルコールが活性化され化学反応により三次元架橋構造の硬化物へと変化し,砂同士を接着させます.

 しかしながら,砂にアルカリ性物質(例:ナトリウムやカリウム,カルシウムの化合物)が含まれていると硬化触媒が酸性領域へ移行させる能力を減殺させてしまいます.

 アルカリ性物質は,地殻上に一般的に存在する物質であり,砂によっては一定量含有してしまう砂もあり,アルカリ物質を含む砂は,硬化速度や鋳型強度発現を低下させてしまう結果となってしまいます.

 しかし,一度鋳型造型した場合には,砂が酸性領域となっており,硬化触媒が効果的にバインダを酸性領域に導くことができ,元砂の影響が現れなくなります.

(『鋳造工学』93巻6号掲載)