中国からのREが入手困難になり昨年末は騒ぎが大きくなりました.今年に入り一段落ついたようですが,鋳鉄用黒鉛球状化材におけるREの役割について改めて教えて下さい.

REとは

REはRARE EARTH の略.希土類 と訳されています.
希土類元素は,周期表3(A)族であるスカンジウム(Sc),イットリウム(Y)およびランタノイド15元素を合わせた17元素です.ランタノイドにはLa,Ceなどがあります.

REが鋳鉄の黒鉛球状化材に使われた経緯

現在アルカリ土類金属のMg,Caなどが入った球状化材を使った黒鉛球状化処理が一般的に普及しています.球状黒鉛鋳鉄が開発された当初,鋳鉄中のS(硫 黄)やO(酸素)と親和力が強い元素としてMg,Caが単独で使われていましたが,鋳鉄の片状黒鉛の形状とは異なる黒鉛形状を呈した白銑から熱処理で作る 可鍛鋳鉄(今ではあまりなじみがなくなりました)に比べて熱処理時間が短く,延性に優れている点で工業化技術が急速に進み,球状化処理用の合金の開発に伴 う鋳放し球状黒鉛鋳鉄が使途を広めていきました.
REを含むミッシュメタルは鉄鋼では強力な脱酸効果があるということで使用されていました.一方,純Mgを使ったコンバーター法でも球状化処理に併用されていました.なお,REと言ってもCeが全体の約50%,Laは約30%またほかの元素も約20%含まれています.

Mg合金におけるREの役割

通常使われている球状化処理材には45%SiをベースにMg3%から7%,RE1%から2%,Ca2%,Al0.5から1%などが含まれています.
まずメインのMgによって脱酸,脱硫されます.その結果Mgと酸素や硫黄との化合物が黒鉛の核となると言われています.Mg自体は鉄にほとんど溶け込みま せんので蒸発し,時間とともに効果が斬減 (フェーディング)すると言われています.Ca,Alはどちらかというと必然的に含有している元素で意図的な添加によるものではありません.Caは1%か ら2%含まれていますが,Mgの酸化物や硫化物に比して沸点が高いため,反応の激しさを抑えることができます.一方多くなるとノロが増えます.
Alは脱酸材として広く知られていますが上記同様1%から2%含まれ,低めに抑えたものはノロが発生しにくくなります. さてREは酸素,硫黄との反応性(親和力)が高く,添加によって鋳鉄溶湯の脱酸,脱硫が行われます.Mgのフェーディングをカバーして球状化不良を抑制します.また,今般スクラップ材料に含まれている球状化阻害作用を持つ元素を中和する作用もあるとも言われています.

REの役割としては

球状黒鉛鋳鉄を製造するには球状化材にREが含まれたものを使った方が簡易で安定した品質が得られると言えるでしょう.ところが,これは肉厚が30mm以 下の小物中物製品を対象にした話です.大物の200kg,500kg,1トン,10トンの製品になるとREが逆にチャンキー黒鉛の原因になる場合もあり, 鋳造品の肉厚による凝固速度の相違の問題になります.これに関しては別途解説をしていきます.