共晶時のチル(共晶セメンタイト)とパーライトを構成するセメンタイトは同じものなのですか?

同じと思って良いと思います.

図は,鉄セメンタイト系状態図を模式的に表した物です.オーステナイトが冷却されていくと,フェライトとセメンタイトの2相に変化します.この時は,すべて固体なので,炭素原子も拡散しにくい状態になっており,細かい層状の組織が得られます.これがパーライトです.

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チルの場合は,液体から2種類の固体に変化します.重量で炭素が 4.3%入った溶湯が冷却されると,オーステナイトとセメンタイトが出現します.この共晶組織をレデブライトと呼びます.温度も高く炭素が拡散しやすい状 態なので,セメンタイトが大きく出現し,脆い材料となってしまいます.

材料特性に与える影響は大きく異なりますが,状態図上では,共晶 変態で現れるセメンタイトも共析変態で現れるセメンタイトも温度が違うだけで,同じエリアに含まれています.すなわち,同じ物と言って構いません.ただ し,オーステナイトと平衡するセメンタイトとフェライトと平衡するセメンタイトの組成が若干異なることなど指定されていますので,完全に同じとまでは言え ないようです.

セメンタイトについて詳しく知りたい方は,下記の文献等をご参考に.

梅本,土谷:鉄と鋼,vol.68,(2002) 117