凝固シミュレーションで最適な鋳造方案(早く,静かになど)を提案できても,溶湯の物性から考えると引け巣は無くならないと考えますが,如何でしょうか?

 溶融金属が液相から固相に相変態するとき,ビスマスなど一部の金属を除いて,5%程度の体積収縮が起こります.凝固時に発生しますので凝固収縮と呼んでいます.実は,液相状態でも,固相状態でも,凝固収縮ほどではありませんが温度変化によって金属は伸縮しています.これら収縮分を補うことができなければ空隙ができ,内引け巣,外引け巣,面引けができることになります.体積収縮すること自体は材料物性ですので避けることはできませんが,製品部に巣をつくらない,巣を製品の外側,例えば,湯道,湯口,あるいは押湯にもっていくことは可能です.これが鋳造方案における引け巣対策の基本的な考え方になります.指向性凝固は,その一例になるかと思います.

(『鋳造工学』89巻11号掲載)