残留Mgが低いFCD溶湯を丸棒試験片(例えば、直径φ15,30mm)に鋳込んだとき、球状化率が高い部分と低い部分が図1のように何層ものリング状に分布するのは何故でしょうか?

image002 図1

 

 丸棒試験片にリング状に破面の色が何層も見える現象は,その丸棒試験片を得る条件が関係し,例えば注湯温度や解枠後の冷却条件(基地組織への影響)がばらつくことも一因です.FCDのパーライトとフェライトが混在する組織を前提として考えてみると,破面の外径から白→黒→白(φ15mm)→黒(φ30mm)の破面色を示すのは,白と黒の破面(組織)粗さが異なっていると考えられます.フェライトが多い延性破面では,破面の凹凸が大きくなり,光の反射や屈折が多くなることから黒く見えます.逆にパーライトが多く破面の凹凸が小さいところは,光が反射するので白く見えます.

破面の色は基地組織(パーライト率等)以外に黒鉛球状化率とも関係があり,経験上丸棒破面の平均球状化率が25~50%程度と低い試料(残留Mg量0.020mass%程度)に,このようなリング状破面が現れます.一般的に冷却速度が大きいところは凝固速度も大きくなり1),そのため冷却速度が大きい外周部は,黒鉛粒数が多く,球状化率もよくなります.一方,丸棒径が細いφ15mmでは中心部に堤らの過冷却説2)に類似する過冷球状黒鉛が晶出されやすいため,球状状率も高くなると考えられます.以下の文献も参考にしてください.

1)中江:鋳物,67(1995)284  

2)堤,松川:鋳物,51(1971)342

(『鋳造工学』88巻1号掲載)