現場的にBa-Ca-Si系二次(注湯流用)接種剤を多めに使用すると,チャンキー黒鉛が生じやすくなるのは何故でしょうか? また,同一鋳物部位においてチャンキー黒鉛が出やすくなるとその部位には引けが小さくなる傾向があるが,それはなぜでしょうか?

ご質問の内容には,鋳物のサイズ,化学組成など具体性が無いので一概に言えませんが,チャンキー黒鉛と言ってよいかどうか分かりません.Ba-Ca-Si系接種剤は、その化学組成からするとFe70Siに比べて溶湯に融け込みづらいものです。更に「多めに使用」しているのでその傾向は助長されます。したがってこの黒鉛は、接種剤が完全に融け込めずに,溶湯中に高Si(高CE)域が出来、その部分に発生した黒鉛とも考えられます.右図に注湯流接種剤の融け込み不良で生じた顕微鏡組織(FCD400相当の15kg程度の鋳物の加工面)を示しました。取鍋接種用接種剤に比べて注湯流接種には、融け込み、添加量など多くの注意点が必要です.取鍋接種で効果のある接種剤が,注湯流接種でも良いとは限りません.

次に、同じ鋳物部品で、チャンキー黒鉛が発生したものの引けが小さくなっているとのことなのですね。これらの関係についての文献は見つかりませんが、接種剤添加量を増やしているのでSi分と黒鉛粒増加により凝固形態が変化したためと考えられます.球状化処理や接種などの炉前での溶湯処理でSi分が増えるとチャンキー黒鉛が発生しやすくなり、内引け巣は,鋳型壁の移動が無ければ晶出黒鉛の量が多くなると小さくなる傾向があります。さらに,鋳造条件(肉厚,化学成分,鋳型など),溶解材料,溶解方法,溶湯処理などによっても発生状況が変わります.

「鋳造工学」第76巻2月号(2004)掲載の「球状黒鉛鋳鉄の異常黒鉛とその対策」を参考にしてください.日本鋳造工学会ホームページ:https://www.jstage.jst.go.jp、巻,号,「チャンキー黒鉛」で文献検索できます.(『鋳造工学』第88巻第3号掲載)

図3                              図3