球状黒鉛鋳鉄の回転曲げ疲労試験と軸荷重疲労試験の試験結果に差がみられました.その理由について教えてください.

回転曲げ疲労試験とは,一定の曲げモーメントを作用させた丸棒を回転させ,試験片平行部の表面に繰返し応力を負荷させる疲労試験です.また,軸荷重疲労試験とは,試験部の断面上のどの点においても単軸の引張圧縮状態になる様に繰返し負荷をかける疲労試験のことです.

さて,球状黒鉛鋳鉄の疲労試験を行うと,回転曲げ疲労試験に比べて軸荷重疲労試験の疲労限度は低下します.これは主として荷重方式の違いによる危険体積の変化が影響しています.危険体積とは,試験片中の繰り返し最大荷重,最小荷重が負荷される部分のことです.疲労き裂は危険体積中に存在する最大の欠陥から発生すると言われております.この場合,球状黒鉛鋳鉄の破壊起点となる欠陥は,引け巣や集合黒鉛,球状化されてない黒鉛が知られております.試験片平行部を有した試験片を用いた場合,回転曲げ疲労試験における危険体積は,平行部の表面近傍であるのに対して,軸荷重疲労試験では平行部全体が危険体積となります.この影響は破壊起点の箇所にも現れます.回転曲げ疲労試験では破壊起点は試験片表面もしくは近傍に存在するのに対し,軸荷重疲労試験は表面および表面近傍だけでなく平行部内部の欠陥も破壊起点となることがあります.

すなわち,軸荷重疲労試験における危険体積は,回転曲げ疲労試験に比べて大きくなるため,結果として大きな欠陥が破壊起点となる可能性が高くなります.そのため,疲労限度に差が生じたと言えます.しかし,基地組織の違いにより疲労限度に差が生じる場合と生じない場合があります.一般に基地組織が軟らかい(例えばフェライト地など)場合,試験法の違いによる影響が現れにくく,硬くて靱性に乏しい(例えばパーライト地など)場合は,存在する欠陥寸法が小さくても,試験法の違いにより疲労限度に差が生じます.