研究室レベルでの実験において,鉄系材料を合金化する際に,どのような工夫がありますか? 溶けにくい高融点金属を効率よく溶かす工夫等を知りたいです. なお,黒鉛のように浮上しやすいものは,半紙やアルミホイールに包んで,鋳型底部にセットして溶かすと聞いたことがあります.

鉄系材料を合金化するために添加する元素はFeと比較して融点が高いものが多く,純金属のまま溶湯内に添加すると,酸化性の強い金属は表面に生成する酸化物相により溶解の進行が妨げられ,溶け残りが発生して目標組成に達しないことが起こります.それを防ぐためには,それらの金属元素と鉄を合金化した融点の低いフェロアロイを用いると効率的に合金化させることができます.市販されているフェロアロイは合金元素を数十%含有していますが,もっと異なった割合ものが欲しい場合,あるいは相当高温でないと解けない金属の場合には,予め中間合金を研究室で溶製しておいて,それを原材料として再溶解することも行っています.

金属材料を溶製する場合,まず,銑鉄及び軟鋼を含む鋼材を一緒に溶解し,十分温度が上昇してから合金原材料を添加しますが,一度に多く添加して溶湯温度が低下し過ぎないように,順次添加します.この場合,添加合金のサイズが溶湯量に対して大きき過ぎないような注意が必要です.また,金属あるいは合金の添加は,十分過熱した溶湯中に速やかに浸漬・撹拌して合金が表面に浮かばないように,酸化を防ぎながら溶解させる必要があります.高融点でかつ比重の高いものは坩堝の底に沈み溶けてしまわずに残る場合があるので,十分な撹拌が必要です.

黒鉛添加によるC量の調整は燃えるので難しく,できるだけ高炭素の銑鉄やフェロアロイの使用をお勧めします.それでも成分調整ができない場合は加炭材に頼るしかありません.

日常の溶解時における各添加元素の歩留まりを統計的に把握しておけば,目標組成に近い合金材料が得られるでしょう.

(『鋳造工学』94巻2号掲載)