鋳物のひけ巣の部分にデンドライトが観察される理由はなんでしょうか?

一部の金属(SiやBi)を除き純金属や合金は,凝固の際4~6%程度凝固収縮します.よって型鋳造では,体積収縮をまかなうだけの溶湯の補給が

なければ,凝固収縮分がひけ巣となって,鋳物の内部あるいは表面に現れることになります.なお,凝固の仕方によって,ひけ巣は様々な形態を呈します. 

 さて,多くの合金はデンドライト凝固します.デンドライトは,まずジャングルジムのように幹や枝が線成長し,その後枝の間の液体が固体と変化する,すなわち枝が太っていくことによって完全な固体となります.この際,凝固収縮分の体積の溶湯が補給されるならば,元々液体で占められていた空間は完全に固体で充填されますので,凝固後には元のデンドライトの形は観察されなくなります.

 しかし,最終凝固部では残留している溶湯が少なくなり,十分な溶湯補給が困難となり,そこでの凝固収縮分を補充することができなくなります.よって,デンドライトの先端部の枝はそれ以上太ることができず,元の枝状の形態のまま最終凝固部に残ることになります.これが,鋳物のひけ巣の部分にデンドライトが観察される理由です.

(『鋳造工学』92巻8号)