鋳造現場にたずさわっていなく,素人です.ADC12の表面外観不良改善方法について教えて下さい.内部にフクレがあることにより,次工程のショットブラストで叩かれて,表面が割れ剥離が発生します.表面がしっかり凝固していないことで発生しているように思えます.離型材を絞るなど行ってきましたが,効果がでていません.

 ショットブラスト後に発生するダイカストの「はがれ」や「めくれ」の現象と思われます.正常なダイカストの表面層は,微細なα-Alで構成される100~200μm程度のチル層と呼ばれる層が形成されますが,二重乗り(水平方向の湯境)や溶質元素の浸み出しなどによる不健全な層が形成されると,「はがれ」や「めくれ」の発生原因となります.また,金型の過熱によって焼付きなどが発生すると内部に鋳巣の発生と表面層の粗化が起こることがあります.まずは,現物を充分に観察して,発生原因を特定する必要があります.

 内部にフクレがあることにより,次工程のショットで叩かれて,表面が割れ剥離が発生ということを考えると金型が過熱し,焼付きが発生していることが考えられます.

 焼付きが発生する箇所は,金型温度が高いためダイカスト表面部の組織は粗大化し,共晶のSiが粒状化するとともに,場合によっては増圧によってダイカスト内部の共晶融液が表面部に押し出されることがあります.このような不健全な表面層が形成されると,ショットブラストによって「はがれ」,「めくれ」,「ささくれ」などが発生する可能性があります.また,金型の過熱部分には,ダイカスト中に含まれているガスが膨張し膨れを生じている場合もあり,表面の薄肉の部分がショットブラストによって「はがれ」,「めくれ」,「ささくれ」などが発生する可能性があります.したがって,表面層断面のミクロ組織を詳細に観察してください.上記のような組織が観察されるとすれば,金型の過熱による焼き付きが原因と考えられます.対策ですが,金型の過熱部(ホットスポット)の冷却の強化(外冷の追加,内例の追加),お客さんとの交渉が必要ですが,製品形状の適正化(肉盗み,鋳抜きピン)などが考えられます.もし,組織観察で焼付きの現象か見られない場合は,二重乗りや湯境などの湯流れに起因する欠陥対策を検討する必要があります.

 

(『鋳造工学』94巻7号掲載)