電気誘導炉で溶かされた湯は原材料の成分に近いですが,キュポラの場合はC,P,Sなどが増えるのはなぜですか?

一般的に「誘導炉」には低周波,高周波という分け方と,るつぼ型,溝(チャンネル)型という分類があります.どちらにしても,容器の中に材料を入れて加熱 (厳密にはジュール熱,自己発熱)するもので,コップの中に水と塩を入れて温めるようなもので,砂糖を入れない限り甘くはなりません.

一方,キュポラは,簡単にいえば筒の中に材料とコークスを入れて風を送り,コークスを燃やしながら材料を加熱溶解します.溶けた材料はコークスの間を通過 しながら底にたまっていきます.高温で炭素と触れるので,鉄は加炭され,同時にコークス中の硫黄,燐なども入ってきます.溶鉱炉から出る銑鉄と似たような ものです.また,送風によって,燃えやすい(酸化しやすい)シリコンや亜鉛などは蒸発したり,スラグになって排出されたりして低下します.その程度は,温 度,炉形,送風量,コークス比など様々な要因によって変化します.

 以上はごく一般的なことで,実際には炉の耐火物や雰囲気,スラグとの反応などで,るつぼ炉でも配合量からの計算と成分が異なることがあります.ま た誘導炉でもキュポラに似た構造のものがあり,このような炉では加炭されます.素形材センター発行の『鋳鉄の生産技術』*などをご覧ください.

*『新版 鋳鉄の生産技術』
発行:財団法人素形材センター
判型:A5判 625頁
価格:5250円(税込)
平成24年10月発行