海外の高級車では,アルミボディ部品が使われているとよく聞きます.どんな工法でどんな材料が使われていますか?

オールアルミニウム合金のボディ構造を持つ乗用車を世界で初めて量産したのは,ドイツのアウディ社で,1994年に発売されたAudi A8です.このボディ構造は,アルミニウム合金の板材や押出材の部品をアルミニウム合金鋳物やダイカストの継手を用いてつなぐ構造でした.その後,アルミニウム合金ダイカスト部品が大型化してきて,日本のメーカーも含めていろいろな会社が採用し始めました.最近では,ボディ構造がマルチマテリアルとなってきましたが,ダイカスト部品が適用されています.

ボディに適用される部品には,適度な耐力と伸びが必要になります.また,元々鋼板で作られている部品ですから,薄肉であることが要求されます.このような要求特性を満足するため,Al-10%Si-0.3%Mg合金を代表とする合金を高真空ダイカスト法を用いて鋳造し,熱処理することにより機械的性質を調整して適用しています.この材料と工法の組み合わせは,サスペンションメンバーなどの部品にも適用されています.近年,製造コストを低減するため,熱処理をしない材料の開発が進められ,Al-Mg-Si系の材料が適用されてきています.今後,このような新しい材料が数多く出てくることが期待されます.

(『鋳造工学』91巻7号掲載)